「ガザ・モノローグ2010」その16
16.スハ・アル・モノルークさん 1995年生まれ アッタファ
ガザは日々刻々と変わる。それが僕の夢が毎日変わる理由だ。いつも一歩前進するたびに、100歩下がってる。
戦争がやってきたとき、僕は学校から家に帰るところで、道がわからなくなっていた。急に男の人が目の前に現れて、「君の家はどこだ?」って聞いた。家の場所を教えたら、その人は僕を家まで連れてってくれた。帰ってすぐお父さんに「どうして来てくれなかったの?」って聞いたんだ。
そしたらお母さんが「いつものことでしょう。いい子だから勉強しなさい」って言ったんだよ。だから僕は「テストなんてないよ。戦争が始まったんだから」って言った。
その日の午後、家の近くの国の建物が爆撃された。そしたらお母さんが「いつものことでしょう。私たちはもう慣れてる」って言った。
僕たちは近所を歩いたけど、みんな自分のことで精一杯だった。その爆撃された家の親戚の人たちがすぐにきて100人以上が集まっていた。でもお母さんにとっては、これもいつものことだったみたいだね。
ある日の朝、お父さんはパンを買うために6時間並んだのに、家には1パックのパンしか持って帰ってこなかった。僕たちは半切れしか食べれなかった。それでもお母さんはいつものことって言ってた。
ある日の夕方、お父さんとお母さんが怪我した人をお見舞いに病院に行くって言ったから、僕もそれについて行った。病院にはたくさんの死体があって、それぞれのベッドに4人ずつ折り重なっていた。この時になってやっとお母さんは言ったんだ。「これはいつものことじゃない」って。
戦争は終わらない。むしろ広がっている。僕が怖いのは、自分がそれと一緒に成長していること。新しい戦争が始まるのがいつも怖いんだ。風船がはじけるのも怖い。車が事故を起こしたら僕は20メートルもジャンプすると思う。小さな子が叫んだら、僕も一緒に叫ぶ……。毎晩夜明けが来るまで眠れない。それでも、新しい一日は、過ぎ去っていった日と同じで、なんにも変わらないんだ。