「ガザ・モノローグ2010」その7

7.アナス・アブー・エイターさん 1995年生まれ アッシュシェイキーラドワン

小さい頃から、僕は有名なサッカー選手になりたかった。その夢は叶えられると信じていた……。でも今では、その夢にはたくさんの障壁が立ち塞がっている。子どもが遊べる広場は無くなり、軍に包囲されて、すべてが台無しになった。

もし僕が総理大臣だったら、子どもとスポーツを管轄する省庁をいちばんに重視したい。いたるところ、とくに学校に広場をつくり、生徒たちが警備員に追い出されず、自由に遊べるようにするんだ。クラブの参加費も撤廃して、すべての公園をきれいにしたいと思う。

でも、夢や安全、希望や未来という言葉は全部、どんな夢も叶わない街においては、何の意味も持たない。

僕はゴールキーパーだった。友達のモハメドはいつも僕に「ゴールを奪ってやる」と言ったけど、僕は彼のゴールをいつも止めた。

2009年1月7日、戦争中のある日、僕は家の玄関に座っていた。その日は霧が立ち込めていた。誰かがやってきて、モハメドが殉教したことを伝えた。信じられないことだった。僕はモハメドに会いに行こうとしたけど、この死という考えに対して寒気がした。

モスクに行って、この世でいちばん仲の良かった友達の体がバラバラになり、パレスチナ国旗に包まれているのを見た。僕は泣きに泣いた。何よりも悲しかったのは、彼の体をハグすることも、キスすることもできなくなっていたことだ。だから、僕は彼の体を抱えるしかなかった。みんなで彼をお墓まで運んで、埋葬したあとも、僕はその場に座り続けて愛を伝えた。無性に腹が立ってきたのは、彼が僕をこの世界でひとりぼっちにしたからだ。

僕が去った直後、ひどい空爆がそのお墓を襲った。死神は僕の後をつけて、一人にさせてくれない。でも幸いなことに、僕はまだ生きている。

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