「ガザ・モノローグ2010」その14

14.サミ・エル・ジャジャウィさん 1994年生まれ アッタファ

一日の中で一番嫌いな時間は、お昼の12時だ。試験が始まるといつも、また戦争が始まるんじゃないかって感じる。試験問題になんか一つも答えられなくなるし、いろんな考えが頭の中に浮かんできて嫌になる。僕は普通なのかな、それともおかしい?

みんなは、ガザの海がどんな痛みも洗い流してくれるって言うけど、僕の痛みは海よりも大きい。最後に海に行った時、僕は友達と一緒に泳いで遊んで、楽しかった。でもだからこそ、もう二度と海に行けやしない。

タラティーニ通りはガソリンスタンドの近くにある。ガソリンは貴重で、高価で、1リットル買うのも大変なことだった。戦争が起きていて、みんな何かを買うのを怖がっていた。お父さんが僕にガソリンを買いに行かせた。それを買った後、僕は近くに住むザキという友達の家に行った。もう10日以上もザキと会えてなくて寂しかったんだ。

お父さんがガソリンを早く持って帰ってこいって言ってたから、僕は彼の家に着いたあとも急いでいた。ノックも無しに彼の家にお邪魔したよ。ザキのお母さんは僕を実の息子のように迎えてくれたし、僕もそう振る舞った。お母さんとザキに挨拶をして、ハグとキスをして、彼の兄弟にもよろしく言ってその場をさっと後にしたんだ。

20メートルくらい歩いたところだったかな……。戦闘機の凄まじい音がして、ミサイルが友達の家の上に堕ちてくる音が聞こえてきた。叫び声が上がって、その家が爆撃された。僕は信じられなかった!友達の家を振り返ったら、燃える家の中から煙が吐き出されている。こんな光景は見たことがなかった。

僕は走って自分の家に帰った。家に着いたらお父さんが、友達は死んだと言った。いいや、死んでない……みんなはザキが死んだって言い始めたけど、信じることができなかった。僕がお葬式にも病院にもお墓にも行かなかったのは、それが理由だ。ザキは死んじゃいない。

僕は毎晩彼に話しかける……正確には彼が写った写真に。悔しい。ザキは僕の家に会いにきてくれなかったし、僕も彼に会いに家まで行かなかった。僕は、彼が死んでないと確信してるし、いつかまた会えるって思ってる。だから寂しいよって、彼を責めるんだ。

僕にはロシアに住んでる別の友達がいる。その子はロシアでの自由と安全を教えてくれた。僕はいま生きてなんかいない。海に飛び込んで、潜って、泳いで、そうしてロシアに着いたら、そこで生きた自分を見つけるんだ。

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