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マジョリティ思い込みとマイノリティ思い込み/食とまなびのブログ

思い込み、先入観、固定観念というものは個人的なものではあるが、大多数の人が似たようなものを持っている場合は、それがマーケティングに使えるとも言えます。
例えば、ブランドというのは集団的思い込みですから。
従って、自分の思い込みを発見したときにいつも考えます。
これは私特有の思い込みなのだろうか?多くの人が同じように考えるだろうか?と。

羽田空港の“ひとしなや”に行ってきました。
オープンから1年位経つのでしょうか。出来た当初から異彩を放っていたので、気になってはいました。

その時に感じ、考えたことを時系列で下記していき、思い込みを客観視してみようと思います。

“ひとしなや”は3店舗が並んであり、全体で“ひとしなや”という屋号らしいが、3店舗それぞれにも名前があり出しているメニューが違います。
入口も3箇所に分かれていますが、厨房は奥で繋がっている構造。
真ん中が一番店舗面積が大きくとってある、“あさごはん”という店。ここが恐らくメインダイニングの位置づけでしょう。
向かって右側がラーメン屋さん(店名忘れた)、左側が丼屋さんという構成(店名忘れた)。
3店舗共通のテーマは出汁とのこと。
羽田空港にあり、日本国の玄関口でもある。
訪日外国人も多い。
羽田空港という特殊な立地にあって、出汁をテーマにするということは、もちろん和食ということになるのだろう。(一般的な思い込み)

こういったコンセプチュアルな店舗は嫌いじゃありません。
羽田空港という特殊な立地で店舗をオープンするに当たり、ここの経営者(もしくは店舗開発かな)がどんな考えを持って計画し、最終的に形になったものがどんなものになったのか。そしてオープン後、どう変容していったのか。
そこに思いを馳せ、さらに、自分だったらどうするか?を考えていくのは楽しく、気づき、学びが得られる楽しいひと時です。

(実際に、アンバランスな部分は既に出てきていました。例えば、白粥を入れる茶碗が物凄く安っぽいプラスチックだったりとかですが。恐らくオープン前の目論見とオープン後の現実の中で、現場の判断、動きがアンバランスを生んでいくんですよね。個人的にはこういうところが人間らしくて好きで、興味深いところなんですけどね)

ガラス張りなので外から店内がよく見えます。
・白木を多用しているように見せた内外装(割烹や高単価な和食店に多いという思い込み)
・羽釜などの日本料理の調理道具
・コックコートではない和食特有の白衣
この3セットで私の中で“日本料理に近い、こだわりのある和食店”という固定観念が前面に出てきました。
しかし、この固定観念は調理道具などの知識がないと結びつかないものでしょうから、一般的ではない思い込みですね。
逆に言うと、こういう思い込みをする人をセグメント出来るということにもなります。

さて、次に和食と言われて何を想像するだろうか。
白米、味噌汁、香の物。やっぱりこの3つはほとんどの日本人は思い浮かべるでしょう。(一般的な思い込み)
その次に来るのは、主菜、おかずでしょう。和食のおかずと言われれば、肉より魚でしょうか。(一般的な思い込み)
焼き魚や刺身が来るでしょう。
和食店で客うけを考えれば間違いなく刺身があがってくると思います。(これは飲食業視点の思い込みでしょうか)

真ん中のメインダイニングであろう“あさごはん”のメニューには、御膳が並んでいます。
しかし、和食の御膳形式のメニュー構成なのに、刺身がないのです。
そこに違和感を感じました。
違和感を感じたということは、そこに私の先入観があって、それが実際とズレていたということ。
私の先入観は、御膳を出しているのであれば、刺身が入っていて当然という思い込み。固定観念。
これは私特有の思い込みでしょうか。広く一般的ではないのかもしれないですが、意外と多くの人がそう言われれば、となるのではないだろうか
刺身が無いことに気づくかどうかは別として。

刺身がない理由を考えてみました。
1.クオリティ管理
やはり生ものですので、注意が必要となります。リスクヘッジの意味でも生ものを出すことはやめたのかもしれない。
2.原価(=利益)コントロールのため。
刺身というのは、切ってそのまま提供するわけですから、素材そのもののクオリティが美味しさを作るのは言うまでもありません。(その他の要素ももちろんありますが)
ということは、本当に美味しい刺身を出そうとすると良いものを仕入れなくてはいけなくなる、言い換えると原価が高くなるということです。
お客様に刺身を提供することによる満足度向上と原価高騰を天秤にかけ、提供しないという決断をしたのかもしれない。
3.オペレーション上
場所柄、非常に多くの客数と短い滞在時間をこなしていかなくてはいけません。
そのための段取りからのスピードオペレーション。
そこを考えたときに、作り置き、盛り置きということを考えます。
本当に美味しい刺身を出そうとすれば、切り置きし、盛り置きした時間によってクオリティは大きく変わってきます。もちろん長ければ長いほどクオリティは下がります。
ここもバランスの問題ですが、天秤にかけたときに、そこまでして刺身に必要性を感じなかったのかもしれない。
4.そもそものコンセプト
上記とは角度の違う原因予測ですが。
前述した、“こだわりのある和食店”というものは、私の固定観念でしかありません。もしかしたら、そもそもそこが違うのかもしれないということ。
出汁をテーマにしているということは店のパンフレットに書いてあったので間違いないのですが、“あさごはん”という店名。
もしかすると、伝統的な日本料理というよりは、家庭料理であるということかもしれない。
例えば、オムライス、カレーライス、ラーメン、焼き餃子、ナポリタンなどは伝統的な日本料理ではないが、間違いなく日本独自の料理になる。
“日本料理”と“和食”というものは違う意味(範囲)を持っているということ。(人によっては、これは“和食”と“日本食”という言葉を当てはめている人もいる)
家庭料理がコンセプトだとすれば、お金持ちの家庭をのぞき、刺身は一般的ではないだろう。刺身はちょっとした贅沢というのが一般的ではないか。
また、家庭料理という、伝統的な日本料理というよりも、一般的な和食に近いものがコンセプトだとすれば、他のメニューに肉が多かったりするのも納得できる。

しかし、刺身を出さない理由が4つめのそもそものコンセプトが理由だとした場合、私が感じた印象(日本料理に近いこだわりのある和食店)とコンセプトがズレているということになる。
私の感じた印象が一般的な思い込みだとすれば、多くの顧客がこのズレを感じているということになる。
この違和感が吉と出るか凶と出るか。
まだ分からない。

ダラダラと書いてきましたが、私個人的にはこの“ひとしなや”は面白かったです。
また、完全なる私の個人的感想です。
意図や狙いは全く違うかもしれません。
このお店には、しばらく時間を空けて再訪問してみようと思います。
味もほどほどに美味しかったですしね。

面白かった。

感謝します。

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工藤昌幸
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