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2024年7月17日(水)「醗酵食品・キビヤック」

今日の東京は曇り、午後一時雨。夜には再度雨になる模様。
朝の最低気温は22℃、日中の最高気温は30℃。九州南部は今日梅雨が明けたらしい。関東も明日以降あまり雨も降らないようだし、梅雨前線も随分と北に位置して来てるから、週末に掛けて関東も梅雨明け宣言出そうなカンジですね。
今日からは二十四節気小暑の末項、七十二候の「鷹乃学習(たかすなわちわざをならう)」(鷹の子が飛び方を学ぶ時季)となったようです。鷹はこの時季に巣立ちの準備をするんですね。知らなかった(汗)。さて、

昨日は「開業準備・会社設立について」をお届けしましたが、本日は「醗酵食品・キビヤック」について書いて行きたいと思います(冒頭画像はコチラから拝借しました)。

キビヤック。
コレはアラスカやカナダ、グリーンランドの先住民族であるエスキモーイヌイットカラーリットの方々が愛して止まない伝統的な醗酵食品の一つで、内臓とお肉を抜いたアザラシの袋(?)にアパリアスと言う海鳥を詰め込んで1年以上寝かせたモノです。
自分もスウェーデンのシュールストレミングや韓国のホンオフェ、中国の臭豆腐やら日本のクサヤやらと、好きで色々と臭いモンは食べて来たけれども、コレばかりは現地に行かないと食えない食い物と言うことで、未食なんです。ある意味、アコガレの存在的臭い食べモノなのであります。

この画像はコチラから拝借。

コイツの存在を始めて知ったのは、多分植村直己さんの「極北に駆ける」では無いかと思う。少々長いけれども引用すると、以下の通り。

ターツガの指さすほうを見ると、なるほど腹をぬいあわせたアザラシが一頭ころがっている。皮下脂肪だけを残したアザラシのなかには、黒い羽毛がついたままのアパリアスという小鳥が四百羽ほどつめこまれているのだ。奥さんはかたく凍ったアザラシの腹を裂き、アパリアスをとり出してわたしてくれた。凍ったアパリアスがだんだんにとけていくにしたがって、ブルーチーズのような強烈な臭いが部屋中にひろがっていく。糞の臭いに似ていないこともない。私はゴクリとのどをならした。これがじつにうまいのである。私はアパリアスを両手でつつみ、冷たいのをガマンして臓物がとけてくるのを待つ。手でおさえてやわらかくなったところで、アパリアスの肛門に口をあて、手でしぼり出すようにして中身を吸うのだ。ちょうど冷たいヨーグルトのような味の赤黒い汁が口のなかいっぱいにひろがり、なんともいえないうまさだ。中身が終わると羽毛をむしり、皮や黒く変色している臓物、肉と食べてゆき、最後に頭を歯でくだいて脳ミソを吸う。口のまわりは黒い血でベトベトである。アザラシの皮下脂肪の浸透したアパリアスほど臭いが強く、うまい。私が日本に帰って一番食べたいと思ったのは、鯨の皮でもアザラシの肝臓でもない、このキビアであった。今でも月に一度くらいはこのキビアの夢を見る

更に、植村さんが1984年2月世界で初めてマッキンリー冬季単独登頂成功後に消息を絶った前年9月の日本滞在時に50時間にわたって語った話をベースに書き起こされた「植村直己の冒険学校」の中でも思い入れの深かったキビヤックについては単独の章が設けられているホドで、余程お好きであったコトが偲ばれます(笑)。ココでは原料となるアパリアスの獲り方、アザラシのぬいぐるみ(?)の作り方から、キビヤックの作り方・保存方法、その味わい等について詳細に書かれてます。ココでまた少々長いのですが、その味わいについての植村さんによる詳解を以下。

味はなんといいますか、すごくおいしい食べ物で、エスキモーの食生活の中では最高の一を占める食べ物です。どうしてうまいかというと、だんだん腐りかけてくると、アザラシの皮下脂肪がアパリアスの体のなかに徐々に溶け込んでいくからだと思います。それで独特の臭いと味がつくんですね。夏になってエスキモーの村を流れる川にサケが上がってきますが、その大きなサケをとってわざと頭の部分をウジがわくほど腐らせ、そのアタマの軟骨や肉を食べるのがやはりエスキモーの好物で、これもそうとうな臭いがするんですが、このアザラシの袋で作るキビヤックは、それよりもひときわ強い臭いがします。チーズを腐らせたというか、変な話ですがウンチのもっと強烈な、クサヤよりもう一つどぎついような、その両方をかきまぜてさらに腐らせるというか、ああいう鼻を刺すような感じの臭いがします。水鳥のアパリアスが脂で濡れそぼってそのまま小鳥の形をして凍った、といった形状のキビヤックをアザラシの腹の中からとり出して食べるんですが、解氷して毛を引っぱると意外と簡単にとれます。毛を抜いて丸裸にして食べるんですけど、食べ方は人によってそれぞれ違います。皮をピューッとはいでいって食べると、皮がすごくうまいんですね。皮もうまいんですけど、内臓はもっとうまい。どうやって食べるかというと、両手の指で水鳥の足を持ってグッとひろげ、肛門に口をつけてチューチュー吸いだすわけです。口に入ってくる内臓がチョコレートのようにどろどろになっていて、すごくうまいんです、これが。あと頭をちょっとかじるとトロっとした汁が、これは脳味噌で、ほんのわずかなもんですが、これもうまいです。それからササミというか胸の肉、モモ、そういうのを少しずつ食べ、小骨に肉がちょっとついているんですが、それをしゃぶるような感じで食べます。正直いって、最初は私もこの食べ物には度肝を抜かれました。

植村さん、中々の食レポ家ですね。ホント、美味そう。コレはソソられますよね~(って、小生だけかな?(笑))。
しかしまぁ、あんなに寒い極北の地でも醗酵食品ってのが出来る、と言う点もオドロキですよね。

キビヤックにカブリ付く植村さん(笑)。画像はコチラから拝借。

次に気になったのは、日本に於ける発酵学の大家であらせられる小泉武夫先生。彼のクサいモノ好きも相当なモノでありまして、小泉先生がその開発にも関わった「におい濃度測定検知器」(臭い食べ物の臭さを比較する為の計測に用いる機器:臭さの度合いはアラバスター単位で表記…でも、最近はこの表はあまり活用されてないみたい…)を使って計測された結果が以下でありまして(このグラフの出所はコチラ)、キビヤックは堂々4位入賞(?)となっているんですよね。

この中で未踏破となっているのが、3位のエピキュアーチーズと、4位のコレなんですよ。何れも日本では入手不能と言われてるヤツです。
と言うコトなので、現地に行ってキビヤックを食うのは、ある意味自分の夢でもあるんですよね(って、どんな夢だよ!とのツッコミ、敢えて受け入れます…)。

と言うことで、今回は引用が多かったので長くなりましたが、本日はコレにて。
明日は「未利用魚・ジンケンエビ」についてお届けする予定です。

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