6月1日(木) 「醗酵食品・ふぐの子(卵巣)の糠漬け」
今日の豊田は朝方から晴れたり曇ったり。コレから小雨が降る予報です。
最低気温は16℃、最高気温は25℃。
台風2号は沖縄近辺でウロウロ、今週末はコチラも雨模様のようですね。
いや~、時が経つのは速いモノで、今日から6月。このnoteによるブログもお陰様で1ヶ月継続出来ました。こうなりゃ、意地ですね(笑)。ああ、そう言えば鮎の解禁でもありますね。
梅雨の6月を十分に満喫したいモノです(梅雨アナゴ・梅雨イサキ・入梅イワシ・ハモ等、梅雨の水を飲んで美味くなるサカナは多いんですよ)。「梅雨の水を飲んで美味くなる」と言うのは、風が吹けば桶屋が儲かる仕組と同じで、梅雨の長雨→山の栄養が海に流出→その栄養を元に海の動植物性プランクトン増殖→プランクトンを捕食する小魚や小魚を捕食する中・大型が豊富なエサを食べて脂が乗る→美味いサカナが増える、ってな具合です。オモシロいですね。さて、
昨日は「『いただきます』について考える」をお届けしましたが、今日は具体的な醗酵食品についてのご紹介。
一発目は奇跡の醗酵食品とも言われる石川県の「ふぐの子(卵巣)の糠漬け」について。
ご承知の通り、一般的なフグの卵巣にはテトロドトキシンと呼ばれる猛毒(フグ毒)があり、ヒトが経口摂取をした場合、1~2㎎で致死量となる(青酸カリの約1,000倍!)為、食用が禁じられております。フグにも色々な種類があり、各部位によっても毒性の強弱があるワケですが、どの種類のフグであっても卵巣が可食部位とされているフグは皆無です。ソレだけヤバい部位と言うことになるのですが(但し、白子(精巣)については可食であるモノが結構あります)、その卵巣を糠漬けにしたら毒が抜けて食えるようになる、と言うコトを発見した先人達の知恵たるや、ある意味恐ろしいホドの執念じゃあありませんか。ただのフグを食べるだけでも死屍累々、多くのヒト達が命を失って来たワケなのに、その中でも最も危険とも言える部位である卵巣を食べられるようになる迄に試行錯誤した先人達。ある意味、命懸けのヘンタイですね(←尊敬の念を込めて)。
上述のように、フグの卵巣は猛毒である為、通常ならば解体後スグに焼却処分にされるのですが、江戸時代から北前船の寄港地である石川県の美川(みかわ)、金沢の金石(かないわ)、大野に於いては、このふぐの卵巣の製品化が特別に、例外的に許可されています。
具体的な製造方法としては、6月(正に、今!)に暖流と寒流が混じり合い良質なプランクトンが発生する能登半島沖で獲れたゴマフグから卵巣を取り出し、30%の塩で1年間塩漬けにし、その後の水洗い後に(この時点で毒性は1/4程度に低下)、糠と少々の麹(米麹)で木樽(昔から使用する、微生物・菌が多く棲み付いているモノ)に本漬けして約2年間貯蔵・醗酵させるのだそうです。この間、糠漬けしているフグの卵巣に対し、毎日いわしの魚醤(いしる)を足すことで、空気中の悪玉微生物を遠ざけると共にフグの子の旨味を引き出し、且つ醗酵微生物の働きによって毒性が抜けていくらしいのです(2~3年の漬け込みで、ほぼ無毒に)。
オモシロいのは、塩と糠に漬けるコトによってフグの毒性が無毒化されるメカニズムについては科学的に未だに解明されてない、と言うコトです。不思議ですね。
4月のGW前に富山にホタルイカ掬いに行った際(今年は惜しくもボウズ!(泣))、日中は大してヤルこともないので、お隣県である石川の美川港迄行って来ました。
上述の通り、この美川地区はこのフグの子糠漬けの名産地であるワケですが、昔は40軒以上もあった生産者が、後継者問題やら嗜好の変化やらの様々な影響を受けて、今ではたったの5軒に迄減少してしまったのだそうです。この時には、5軒のウチの4軒(荒忠商店・あら与・任孫商店・安新)を訪問、お話を聞かせて戴きました(残る1軒の原清商店は開いてませんでした)。折角の加賀の伝統的な醗酵食文化、末永く繋いで行って欲しいモノです。
とまぁ、奇跡の醗酵食品ではありますが、肝心のお味の方はと言うと、流石に塩っ気は強いものの糠臭いとかしょっぱ過ぎると言うカンジはなく、ややパサつき感はありますが、珍味ですね。珍味の王様とも呼ばれているようです。
当然、酒を呼びます。この美川地区は手取川の河口にあるので、合わせるべき酒は矢張り「手取川」ですかね。
王道は、そのまんまスライスして食べるコトなのでしょうが、レモンや酢・みりんを掛けたり、炙れば香ばしさも増して、尚良し。
料理では、お茶漬け・パスタ・カナッペ・大根の梅肉はさみ・季節野菜の酢物等のレシピもあり、バラエティにも富んでます。
尚、この「ふぐの子の糠漬け」を食べての中毒例は皆無なのだそうです(ご安心下さりませ)。
また、これらのお店では卵巣の糠漬けのみならず、卵巣の粕漬・ふぐ(の身)の糠漬けと粕漬、フグ以外でもサバやイワシのへしこ(糠漬け)等、様々な醗酵食品が売られています。
是非一度、お試し下さい。上述の各店のHPからネットでの調達も可能ですが、現物を買いたいと思われる方は東京ならば築地場外にある能登半島スギヨ築地店で購入可能です。
明日は、同じ糠漬け繋がりなので、「醗酵食品・へしこ」についてお届けしたいと思います。