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2024年7月30日(火)「醗酵食品・くさや再び」

今日の豊田は晴れ時々曇り。
朝の最低気温は28℃、日中の最高気温は36℃。引き続き暑い日が続いています。ホント、気を付けていないと即熱中症に罹ってしまいそうな気温です。さて、

昨日は「有害鳥獣(ではないけれど)・ツチクジラ」についてお届けしましたが、今日は「醗酵食品・くさや再び」をお届けしたいと思います(冒頭画像はコチラから拝借しました)。

醗酵食品としてのくさやについては約1年前にコチラでお届けしました
が、個人的にはアレではチト掘り下げ方が足らんな、と言う風に思っていましたので、本日はもう少し掘り下げたコトを書いて行きたいと思います。

前にも書きましたが、くさやの発祥の地は伊豆諸島の中の新島(と言うのが一番の有力説)。現在くさや製造をしている伊豆大島にも、八丈島にも新島からくさや液を分けて貰って製造を始めた、と言うコトになっています(もう一つあった主要産地の三宅島では誠に残念乍ら2000年の噴火で壊滅(泣))。過去には三宅以外でも御蔵島小笠原母島(あれ?父島??)等でも製造されていたようですが、多分今はもう作ってないようです。

そもそも、新島のくさやは室町時代から作られ食べられていたと言う説もありますが、大半は江戸時代に出来たと言う説となっているようです(寧ろ、メジャーになって日本橋にあった魚河岸で「くさや」と命名されたのがこの時期だった模様)。元々新島は八丈島と並ぶ流刑の地であり(江戸時代以降)、流罪となった罪人を中心に塩作りが盛んだったようで、当時の江戸(人口約150万人)の胃袋を支えるべく年貢として塩を納めなければならず、江戸幕府からは相当厳しい取り立てを受けていたのだそうです。
また、新島で夏から秋に掛けて沢山獲れるクサヤモロ(アオムロアジ)を塩水に浸けて干物にする風習があったようなのですが、肝心の塩がお手軽には使えないと言うコトで、獲ったクサヤモロを海水に浸けたり、僅かな塩水に浸けて何度も干物を作っているウチに、使っている桶に少しづつ蓄積した魚肉片と塩とが混じり合って微生物が発生・醗酵し、終いには独特の香りと味を持った「くさや液」(或いはくさや汁。当時は「しょっちる」(=塩汁)と呼んでいたようです…秋田の「しょっつる」と似てますね)が出来た、と言うワケなのですね。

この「くさや液」にはくさや独特の香味成分を出すと考えられており、乳酸菌の一種でもあるくさや菌(コリネバクテリウム・クサヤ)がいる他に、別の嫌気性細菌耐塩性酵母などの関与もあると言われているようですが、詳細は未だに良く分かっておらんのだそう(不思議ですねぇ)。
ただ、このくさや汁は古ければ古いホド旨味が出るとされていて、中には200年も300年も浸け続けられて来たモノもあるのだとか。ソレも各お店や家庭によってその製法や味付け、塩分濃度も異なる為、夫々の特徴を持って代々受け継がれていて、嫁入り道具の一つにもなっている、と言うのはオモシロいコトであります。

また、昔の伊豆諸島では医療が未発達であったワケですが、島の人々はケガをしたり病気になったりすると、くさや汁を患部に塗ったり、飲んだりするコトで治してしまっていたとの由。コレはくさや汁の中にビタミン類やアミノ酸などの栄養素が含まれているのみならず、天然の抗生物質(抗菌性物質)も含まれていて悪い菌を増殖させない効果もあるのだとか。スバらしいですね。
このくさや汁を維持する為には、毎日攪拌したり、くさや作り以外の時期にも偶には魚片を入れたりする必要があるようで、言ってみれば糠床と同様に殆ど生き物なんですね(笑)。

クサヤ作りにもある程度の時季と言うのがあるのですが、毎年8月下旬~10月頃までの間、黒潮に乗って主原料となるクサヤモロが新島近海に回遊して来る為、島の漁師は伝統的な刺し網漁でコレを捕獲。鮮度落ちの速い青魚は港に揚げられたその日のウチにおろして、10~20時間程度くさや汁に浸け込まれるのだそう。翌朝に晩夏・初秋の涼しい西風に当て1~2日間天日干しをしてくさやを作り上げるのだとか(真夏の直射日光では魚が煮えたようになってしまって品質が落ちるので、真夏の2ヶ月ホドはお休みとするのだとか)。矢張り昔のやり方通り、天日干しにすると仕上がりに艶と甘さが出て、良いくさやが出来るのだとか(最近の製品は他の干物と同様に天日干しのモノはあまり多くは無いようですが)。

現在の新島では6つの製造者がいて、この5つの製造者が「新島水産加工業協同組合」を作っているのですが、ココの「新島のくさや製造業者の、くさや製造者による、くさやのための組合」と言うキャッチコピーがまたオモシロい。スバリ、ですね(この組合には八丈島の2社も参加しているようですが)。
その6つの製造者と言うのが、池太商店宮藤商店丸五商店菊孫商店吉山商店梅藤水産であり、そのウチの5社が共同使用し、新島のくさや製造の拠点とされているのが、クサヤの加工施設及び物流センターとなっている「くさやの里」なのだそうです(どの1社が参加していないのかは現状不詳)。
いや~、ココ迄知ってしまうと、いつか新島を訪問せざるを得ませんねぇ。上述記載の通り、くさや作りは秋頃が最盛期のようなので、その辺り目指して行って来たいと考えています。
是非、見てみたい。各社各様のモノを食べ比べもしてみたい。出来れば、くさや汁も舐めてみたい(笑)。池太商店では素泊まりのゲストハウスもやっているようなので、是非行ってくさや作りの現場を見せて貰ったり(或いはお手伝いさせて貰ったり)、様々なおハナシをお伺いさせて貰ったりしたいですねぇ。

と言うコトで、くさやについての第二弾はコレにて。
明日は「未利用魚・ミノエビ」についてお届けする予定です。

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