100の慰めよりも1つのハグを
事実は小説よりも奇なり。
もう20年近く前のことだが
これはハワイ、マウイ島での実話だ。
友人の結婚式に参列した。
新郎新婦共に日本からご両親と親戚。
新郎のお母さんはご高齢でアルツハイマーで
夜中に徘徊をする、と聞いていた。
連れてくるか来ないか、
随分悩んだけど、
やっぱり最後に幸せなところを見せたいと
連れてきたのだ、といった。
式前日はとてもお元気そうで、
アルツや痴呆には全く見えなかった。
悲劇は式の当日、はじまった。
ご家族は皆、ビーチのホテルに泊まっていた。
準備をしてホテルのロビーで待ち合わせていると
「新郎の母が行方不明」というニュースが飛び込んできた。
「なんで!?」
この時の私は
正義感を振り回し、
誰がちゃんと見てなかったのよ?
大体、なんでそんなにシビアな人を連れてきたの?と
今言ったってしょうがないだろう?という言葉が
口には出さなかったが頭の中を渦巻いていた。
蝶ネクタイをつけた新郎は
オロオロして震えながらも
いろんなところと連絡をとり
右往左往していた。
「今、海に捜索出てるから」
「きっと見つかるよ」
「お母さん、昨夜はしっかりしたらしたのにね」
「誰が一緒の部屋だったの?」
「ホテルの中は探したの?」
「気をしっかり持って」
それぞれが言いづらそうに
だけど必死で皆、
朝の6時にはもう部屋にいなかったという
助かる見込みがないであろうその状況を
なんとか慰めようとしていた。
「ねえ結婚式、このままやるの?」
「牧師さんももう来てるし、
ケータリングだって準備できてるし」
新郎は、自分達のために人が集まってくれてるから
必死でなんとか仕切ろうとしていた。
というか、そうでもしていなければ
辛すぎたに違いない。
そこの空気はピリピリザワザワ
細かく震えていた。
そこへ
新婦の友人の当時の旦那、
ハワイに住んでいるリネイが現れた。
新郎とリネイは面識はあったけど
特に親しい間柄でもなかったが
リネイは新郎のところへ
真っ直ぐに走って行き
新郎をガバッと抱えてハグした。
「I m sorry… I m sorry」
(かわいそうに、気持ちを痛むよ)
それまで気が張っていた新郎は
リネイの胸の中で声を上げて
号泣した。
私は息が止まった。
気の利いた慰めなんて何もない。
それならただ
ハグをする。
もちろん、文化が違うから
そんなことをさらっと出来るのは
西洋文化ならでは、なのだけど、、、
いくつもの
かけられなかった言葉が
全員の胸の辺りでいっぱい詰まって
渦巻いているのを感じていた。
みんな少しづつガマンをしていた。
リネイのハグによって
新郎のその堰き止められたダムが
一気に崩壊した。
私は自分の物事をジャッジする癖を
ハンマーでゴン!と殴られた気がしたと同時に
この1つのハグを見て、
自分も言えなかったことを
一緒に流させてもらった気がしたなぁ。。。
そんなことを思い出した昨今。
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これを書いた私はこんなことをしています
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