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香り・匂いが「転送」できると
私たちは「香り」や「におい」をどのように感知、認知しているか。
香りの分子が鼻の穴から内部(鼻腔)に入る
↓
鼻腔の天井(嗅上皮)にある粘液と嗅毛にとらえられる
↓
嗅細胞に至り、ここで電気的信号(インパルス)に変換
↓
嗅神経を通って脳に送られる
↓
情動を司(つかさど)る大脳辺縁系に直接届けられる
↓
大脳皮質へ伝わり、「何のにおい」かを認知する
ざっと大枠だけ並べるとこんな感じの順序。
『視覚』や『聴覚』とは違って、ひとまず直接的に「情動脳」と呼ばれる大脳辺縁系につながって行く、という所が嗅覚の面白いところ。
これは、視覚や聴覚のような
「これは見たことがある」→「危ないヤツだ!」
といった順序ではなく、
『アブナイにおいがする!」→「何のにおいだったんだろう」
と危険回避に優れた順序で、太古の昔から生物が本能的、本来的に持っている原始的な感覚、と言われる所以。
というのは脱線話で、今回話したいのはさっきの
においは体内で一度「電気的信号(インパルス)に置き換わる」
ということ。
今のところ「実現」されつつあると言われる「香りの伝送」技術は、香りのデータを元に香料を機械でブレンドして再現しようとするもの。
それが精一杯のようだ。
そういったブレンドされた香り(物理的なにおいの分子)を使うのではなく、嗅神経で拾われる「電気的信号」で感知できたならば、もっと微妙な香りの違いもふくめて認知できそう。
なんとなれば、その情報の増幅加減では犬並み嗅覚の実現ができたり、認知症の前触れとして、嗅覚の衰えがあるのなら、その衰えを少しでも遅らせられるような「刺激訓練」にもなる可能性もある。
その「電気的インパルス」をどのように解析して、どのように再現するのか、また、それぞれの香りがどんなパターンをもってそのインパルスを構成するのか…
そんな難しいことを全く排除して、非常に漠然と、素人考えだけで「こんなのあったらいいな」と想像するものだが、例えばそれが出来上がるのならばこんな形になるのかな?と。
イメージしたものに近いのが「骨伝導ヘッドホン」。
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耳をふさがず、こめかみあたりに振動部分をあてて、骨伝導(骨の振動で音を感じる)で音楽や音声を認識するというものだが、こんな感じの方法で電気信号を嗅神経に届けられないものかどうか…
これならたとえばブルートゥース接続なんかで、スマホ等でいろんな機能を簡単に操作できそうだ。
これが実現できれば、例えば
「香りの検索」とか
「香りのWiki」みたいなのとか
「居眠り運転防止用、香り刺激発動機」とか
「香り付き風景画」や
「香りも楽しめる映画」なんかも
実現可能になりそう。
もっと言えば、今のメタバース世界で視覚・聴覚・触覚までは再現できているが、5感の残る2つ、味覚と嗅覚もカバーできて、よりリアリティーが増す、そんな風に想像する。
本当、リアルとヴァーチャルの区別がつかなくて、今自分はどこにいるのかわからない、という未来が見えてくるようだ。
香り・匂いが転送できる世界は現実世界で動けない体になってしまったとしてもヴァーチャル世界で走り回り、世界旅行・宇宙旅行ができてしまう世界だ。