【15分で解説】DeNAマフィアの狂気 〜なぜDeNAは起業家輩出企業なのか〜
2016年に新卒で入社し、5年間勤めたDeNAを退職しました。
そして、「DeNAマフィア」と称される先輩起業家の背中を追いかけ、僕も起業することにしました。
(マーケティング界隈でマフィアといえば「P&Gマフィア」ですが、起業家界隈では「DeNAマフィア」も徐々に存在感を増してきています...!)
改めて、僕は、ほんと申し訳ないくらい、DeNAに育ててもらいました。
ですが、そんなDeNAの素晴らしいカルチャーは、まだまだ多くの人に知られていないと思っています。これが非常に悔しい。
退職した今、DeNA卒の起業家が活躍している理由を考えてみると、ある種「狂気」のように「ことに向かう」カルチャーにあったのだと振り返っています。
このカルチャーは、DeNAをよく知らない多くのビジネスパーソンにも絶対役に立つはず。
そこでこのnoteでは、僕が在籍5年間で出会ったたくさんの「狂気」を、実体験と共にまとめてました。
※関係各所には事前に内容を確認してもらっていますが、以降は個人の見解で会社の公式意見ではありませんのでご了承ください!
1. 狂気の根底 「DeNA Quality」
DeNAには「DeNA Quality」というバリュー(価値観)があります。
※実はDeNA Qualityはちょうど僕が退職した4/1にリニューアルされたのですが、ここでは在籍時の項目ベースでお話します
①「こと」に向かう
社会人3年目、僕が新規事業検討プロジェクトのリーダーを担当していたときの話。
そのプロジェクトは、やや専門的な知識が必要な領域だったこともあり、自分より相当年上のメンバー(中には50代も)が、当時25歳の僕を支える体制でした。
約半年の検討を経た結果、僕らは2つの事業プランにたどり着きました。
リーダーだった僕は、プランAで行くべきと考えていました。一方で、ベテランのメンバーはプランBを推していました。
何度も何度も議論しましたが、僕の知識・経験不足もあり、プランBで勝てるビジョンがどうしても見えませんでした。そうこうしている間も、執行役員Sさんへの提案の日は近づいてくるばかり。
そして迎えたプレゼン日。
僕が提案した内容は「プランAとBを両方検証する」というものでした。
もちろん「プランBを検証する理由は、◯◯さんが良いと言ってるからです」とは言えなかったので、僕なりに両方検証すべき理由を話しました。
ですが、Sさんに僕の本音は見抜かれてしまいました。
「マサヤ。意思決定が圧倒的に「こと」に向かってなさすぎる。残念だよ。」
この日をもって、プロジェクトの検討は終了。チームは解散。
僕はチームメンバーの顔色を伺い、「曖昧な意思決定」をした結果、チームが解散してしまうというこれ以上ない「本末転倒なジャッジ」をしてしまったのです。
DeNAではよく、「組織は「こと」を成すための集まり」と教えられました。
あの時、リーダーだった僕がすべき意思決定は、「このプロジェクトを成功させるための最高のプラン」を考え抜くことでした。なのに、あろうことか、「チームメンバーに嫌われたくない」という「自分のエゴ」を捨てきれず、「こと」に徹しきれませんでした。
世間的には、DeNAの人は「ロジカルモンスター」とも称され、ちょっと冷たいイメージがあると思うのですが、実態はまったく異なります。
チームメンバーやステークホルダーのためになる「一番のアクション」は、「プロジェクト成功につながる一手」であり、それ以外には何もないのです。
「こと」に徹する意思決定が、慣れない人からは「冷たく」見えることがあるのかもしれません。ですが、人の顔色を伺った意思決定をしても、結果プロジェクトがうまくいかなければ、誰も幸せになれないのです。
DeNAの「ロジカルな意思決定」の裏には、とてつもない大きな愛を感じました。
②全力コミット
僕と年次の近い先輩、Tさんの話です。
Tさんは新卒入社後、1,000万以上DLされている大型ゲームアプリに配属されたのですが、最初は全然結果が出せなかったそう。(自分の作業ミスで何人もの先輩を休日出勤させるような地獄の状況だったとのこと...)
何をやってもうまくいかなかったTさんは、一念発起し、そのゲームをとことん遊び尽くすことにしました。「徹底的にプレイヤーの気持ちになりきる」ためです。
平日も土日も、とにかく自分の時間をすべてゲームのプレイに投じた結果。
なんとTさんは全プレイヤーのランキングで1位にまで上り詰めました。
1位になるほどゲームを遊び尽くして以降、プレイヤーの視点が見え始め、面白いキャラの設定や他の企画も作れるように。その後、Tさんはディレクターを任されるまでになりました。
実は、DeNAの先輩には、こんなエピソードを持つ人がやまほどいます。
みんな「上司に命令されてやった」のではなく、「自分の意志」で、事業のためには当然と思って行動している人ばかりでした。
僕が好きだったのは「雨が降っても自分のせい」という言葉。
どんな予測不能な事態が起きたとしても、他人や環境のせいにせず、自責と考えるスタンスは、プロフェッショナルの鏡だと思いました。
社内では別のキーワードで、「最後の砦意識」とも呼ばれていました。
「自分以外の人がなんとかしてくれるだろう」という意識ではなく、「自分が穴を開けたら会社に穴が開いてしまう」という意識で、仕事と向き合う、ということです。
この狂気的な「当たり前基準の高さ」。
これこそが、「全力コミット」のカルチャーが浸透している証だと思います。
③2ランクアップ
DeNAに中途で入られた多くの人が、「若手の視座の高さに驚いた」と言っていました。
DeNA Qualityにおける「2ランクアップ」とは、文字通り自分の2つ上の視点で物事を考えましょうという考え方です。例えば、自分がいちメンバーだとしたら、一つ上の上長(グループリーダー)のさらに上(部長)の視点になります。
この視点を意識することで、意思決定が「局所的な最適解」になるのを防いでいました。「局所的な最適解」とは、事業全体にマイナス影響が出ても自部門の数値さえ達成すればいい、といった、視座の低い意思決定のことです。
こうした「局所的な最適解」を防ぎ、事業や会社全体を俯瞰した視点で物事を考えられるよう、DeNAでは若手でも全社視点を持てる環境を積極的に用意してくれていました。
その1つが「新卒採用」です。
僕も新卒2年目から新卒採用の面接官をやらせてもらい、「DeNAの代表」として会社を語る機会をたくさんいただきました。面接官を担うことで、自分が所属している事業部やプロジェクトだけでなく、全社の事業やビジネスモデルを理解する必要性を強制的に発生させていたのです。
他には、全社変革のプロジェクトにもアサインしてもらい、当時4年目で経営会議で発言する機会をいただけたのも、めちゃくちゃ良い経験でした。(人生トップ5くらい緊張した)
取締役や執行役員との議論を通じ、「なぜやるべきなのか」「投資に見合うリターンは作れるのか」を徹底的に考え抜く視点をもらえたように思います。
↓僕が起案者として経営会議にて提案した取り組み
これも社内では「球の表面積」というキーワードと共に浸透していました。自分の役割をピラミッドの一部と思うのではなく、球の表面、つまり誰もが会社の頂、代表である、という思想で、全員が働いていました。
(会社説明資料より)
④透明性 / ⑤発言責任
DeNAの最もユニークなカルチャーは、「透明性」と「発言責任」を重んじたコミュニケーションにあります。
僕が新卒2年目の頃。
当時担当していたサービスの存続に関わる重要な会議に参加させてもらうようになったのですが、正直自分のレベルが追いついておらず、なかなか発言すべきことを思いついけませんでした。
また、先輩らの会議を聞いて、「それは違うんじゃないかな...」と思っても、まだ実績のない自分が発言するのは恐れ多い気がして、何も言えない会議が続いていました。
「まだ2年目だし仕方ないよな...」と考えていたのを、どうしてか見透かすのがDeNAの人たち。
ある日、先輩(これも例のSさん)からSlackでこんなメッセージがきました。
「マサヤ、会議に出るなら何か発言しよう。なんか思うことくらいあるでしょ?」
それ以降、自信がないながらも自分の考えを発言するように変えてみたところ、いくつかが採用されるようになり、最終的にはそのプロジェクトのオーナーをすることになりました。
今振り返ると、「発言できるだけの実力がなかった」のではなく、「少しでも価値を出そうとする姿勢が欠けていた」のだと思います。
「会議に参加するからには何か発言する」とゴールを決めれば、事前に資料を読み込んだり、関連する情報を調べたりと、アクションするようになります。
要するに、「実力」の問題ではなく「姿勢」の問題なのです。
DeNAでは「年次や役職関係なく考えを示すこと」だけでなく、「オープンなコミュニケーション」も徹底されていました。
たとえば、マネージャーや事業リーダーが受ける「360°評価」。上長だけでなく、チームメンバーからもフィードバックをもらう取り組みです。
DeNAの360°評価は、なんと匿名ではなく実名。
新卒1年目の若手からもガンガン改善依頼がきます。
実際に、当時社会人5年目の僕が、入社間もない新卒1年目のメンバーからもらったコメントを、特別に許可をもらってきたので掲載します。 ※原文ママです
僕の現状の課題だけでなく、将来困るかも知れないというアドバイスまで。他の会社だと「なんと生意気な!(ムキー!!)」となってもおかしくないような発言も、DeNAではいたって日常茶飯事でした。
ビジネスにおいて、「過剰に気を使った」コミュニケーションや、「おもねり」、「忖度」は正しい意思決定を遠ざけてしまいます。
DeNAではとにかく「透明性」と「発言責任」が徹底されているので、コミュニケーションがめちゃくちゃシンプルでした。
「偉い人だから言っていい」とか、「若手だから言えない」といった気遣いが全く存在せず、「誰が言ったかではなく、何を言ったか」が全社に浸透していました。
2. 狂気のOB / OG 「DeNAマフィア」
ここからはDeNA卒業生の起業家、「DeNAマフィア」の話。
DeNA卒業生の活躍を見ていると、DeNA QualityはDeNA社内だけでなく、卒業してからも有用な「ビジネスOS」だとわかります。
ちょうどBusiness Insiderさんがまとめてくれたこちらの画像に著名な方々が掲載されています。
(参照 : “DeNAマフィア”溜まり場に潜入。起業家続々輩出する“遺伝子”はなぜ生まれる)
中でも、特に僕がリスペクトしている4人のDeNAマフィアを紹介させてください。
アカツキ 塩田元規さん
自分が入社する前に辞められていたので面識はないのですが、アカツキのビジョンオリエンテッドな組織づくり、そして著書『ハートドリブン』で描かれた「リーダーのあり方」はめちゃくちゃ参考にさせてもらってます。
YOUTRUST 岩崎由夏さん
同じくDeNAで面識はなかったのですが、SNSやnoteでよくお見かけする岩崎さん。プロダクトはもちろん、マーケティングもめちゃくちゃ上手だなと思い、勝手にウォッチさせてもらってます。
特にSNSコミュニケーションやユーザーとの共創が本当に素晴らしく、超絶リスペクトしてます。(アプリローンチしてトレンド入りするスタートアップ見たことない...)
あと岩崎さんのnoteもめちゃくちゃ素敵。
Mirrativ 赤川隼一さん
赤川さんはDeNA在籍時から伝説的な人だったのですが、特にすごいなと感じたのは「プロダクト」への異常な熱量。
新卒研修でも講演をされてましたが、めちゃくちゃ中身の濃い、情熱溢れる内容で興奮したのを覚えています。(新卒みんな赤川さんのファンになってた)
そして赤川さんのnoteもめちゃくちゃ勉強になるし、読んでて元気がでます。
食べチョク 秋元里奈さん
あきりなさんも在籍時にお話ししたことはないのですが、ひょんなことから食べチョクTシャツをいただいたことはあります(笑)
(あきりなさんの元チームメンバーが買ってくれた)
徹底的な生産者さんファーストな姿勢、そしてSNSでの丁寧なコミュニケーションは自分たちも見習わなければ、と参考にさせてもらってます。
3. 狂気を込めて、ブランドをつくる
そんな偉大な先輩方の背中を追いかけるかたちで、僕も起業することにしました。
DeNAで鍛えた「マーケティング」を武器に、みなさんに愛されるブランドをつくりたいと思います。
(現在、絶賛準備中...!)
起業のきっかけは、僕の同世代に「ある悩み」を抱え始める人が増えてきたことでした。
この「ある悩み」をどうしても解決したい。
自分の「マーケティング」という武器を使えば解決ができるかもしれない。
そんな想いで、起業することにしました。
ブランドの詳細は、来週ローンチ予定です。
楽しみに待っていてもらえると嬉しいです。
-- 追記 --
そんなこんなで、生まれたのが「ヘアテクト」です。
悩んでいる同世代を見て、僕らに「寄り添える」ブランドが必要だと感じました。あらゆる心理ハードルを下げ、一人でも多くの悩める方の力になりたいと思います。
ぜひサイトだけでも、見てみてください。