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デスクメッセのリラクックマ14

告  知



 俺は、夢の中で鳴り響く着信音に叩きおこされた。着替えも出来ずに震えながら、ベットインしたんだ。ベタベタした息苦しさを感じつつ、電話に出た。


「おはようございます。私、未来学園附属病院腹部外科病棟の准看護師の海野晴
香です。」
 聞き覚えのある声だった。


 昨日の夕方、病院の前で声をかけてきた女性だ。記憶と一致した瞬間、耳迄真っ赤になった。どうみても、声をかけられた瞬間に逃げだしたとしか思わんやん。俺って最悪にやばいやつやな。



 どう答えてよいか困惑していると、相手の方から、
「あのう。昨日なんかすみませんでした。」
「え?すみませんでしたは、俺の方なのに?」
「え?いえ?」
「大変急なことで申し訳ないですが、今日の午前10時にうちの病院の8階病棟まで来ていただきたいのですが?」
「あっはい。」
俺は、ろくに会話もしないで電話を切ってしまった。


 午前10時前に病院についた。
8階の病棟は、緊張感に包まれていた。ストレッチャーの行き交うガラガラ音、鳴り響くナースコール音、医師や看護師達の緊張感あふれた話し声、ぼんやり暮らしてきた俺にとって、異世界レベルの場違いの空間だった。



 俺は放送で呼び出されて、第一診察室に入った。
 担当医の重盛先生、担当看護師の藤崎美優さん、そして准看護師の海野晴香さんの3人に迎えられて、重々しい雰囲気の中説明を聞いた。



「君のお父さんは、総胆管に石が詰まって、バイ菌が逆流し、全身にまわりかけている。病名としては、胆管炎と敗血症。急なことですが、今日の午後1時からオペを行いますので、同意していただけますか?」
「オペをしたら治るのですか?」
「最善を尽くします。」


 淡々と説明があって、俺は半ば機械的に同意書に署名したんだ。海野晴香は心配そうな眼差しを投げかけてきた。



 父は朦朧とした状態でオペ室に入り、数時間後にオペ中のライトは消えた。
すぐに重盛先生から説明と告知を受けた。
「最善を尽くしましたが、肝不全の状態となり、全身に黄疸が出ています。肝臓の機能が停止しているので、塗る薬も飲む薬もありません。苦しいときの神頼みって言葉がありますので、神仏に祈りを捧げて下さい。」



 最善を尽くした結果、最悪の状態に陥ってしまったのである。
 今日は、昨日みたいに走る気力のかけらもなくなって。肩を落として行くアテもなく、街中を彷徨った。
 俺は、嫌な予感がしたので、無意識にお守りの、コリンをカバンに入れてきたのを思い出したんだ。胸ポケットに入れておこう。

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