おすすめの10曲 ♯12


 今回はサウス・ロンドンをテーマに、Spotifyのプレイリストを作りました。作ろうと思ったきっかけは、ここ最近サウス・ロンドンがトレンドになっているけれど、それも下火になんじゃないかという声を聞いてしまったことです 苦笑。サウス・ロンドンがダブステップを生みだしてから定期的に追いかけている僕としては、下火も何もないんじゃないかと思っています。ダブステップ以降も、ロード・ラップやそこから派生したUKドリルなど、イギリスのポップ・カルチャーに足跡を残すジャンルの中心地でありつづけているからです。ここ数年はジャズ、ハウス、テクノ、R&B、ベース、ロックなんかも面白いですね。そうした状況を無視して、下火云々と言われても説得力ないよなあと思う次第です。

 というわけで、現在のサウス・ロンドンの一端がわかる10曲を選びました。そこそこ活動歴があるアーティストもいれば、アルバムを出したことがない若手もいます。ジャンルは最近の好みがもろに出たせいか、ヒップホップ、グライム、R&Bが中心になりました。なかでも聴いてほしいのはMom Tudieの“Everything You Said”です。彼はTom Mischとも共演済みなので、長年サウス・ロンドンを追っている人たちには知られた存在だけれど、活動のペースはかなりスロウ。2人は同じ年齢ですが、Tom Mischはすでに多くのミックステープやアルバムを残しているのに対し、Mom Tudieはまだ1枚もアルバムを出していない。でも、才能は折り紙つきです。今回選んだ“Everything You Said”にしても、出だしはフューチャー・ベースかと思いきや、曲が進むごとに躍動感あふれるUKガラージのビートに変わっていくおもしろい展開が光ります。この展開のスムースさは文字どおり絶品。

 Wolf Girlも特筆しておきます。フェイスブックのページに「queer noisy」と書いていることからもわかるように、このバンドはクィア・アーティストです。BBZというクィア・アーティストをサポートするコレクティヴが注目されたりと、現在のサウス・ロンドンはセクシュアル・マイノリティーが表現する場としても盛り上がっています。そのなかでもWolf Girlは、音楽方面で精力的に活動する存在です。サウンドはC86を想起させるノイジーなギター・ポップが特徴。今月2枚目のアルバムを出したばかりですし、ぜひこの機会に聴いていただければと思います。

 クッキーシーンの編集を務めていた頃から、ケイト・テンペストといったサウス・ロンドンのアーティストをたびたび取りあげていたおかげか、今年はサウス・ロンドンについて書いたり語ったりすることが多い。たとえばMikikiではサウス・ロンドンに関する対談をしていますし、『PERK』というファッション誌にはサウス・ロンドン特集の記事を寄稿しました。ただ、それ以降はメディアの熱が冷めてしまったというか、散発的に紹介するだけになった印象です。日本の場合、国内のレーベルがリリースしないと取りあげづらいという事情もありますが...。だから下火になりつつあると勘違いする人も出てきちゃうのかなと。でも、それは間違いだよというのは、今回のプレイリストを聴いていただければわかるでしょう。ではでは、以下のリンクからお楽しみください。



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