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男性性と女性性
教えるコンテンツだけでなく、講師の在り方は受講生に大きな影響を与える。今回は、『男性性と女性性』という概念を用いて考えてみたい。
『男性性と女性性』とは、身体的な性別ではなく、私たちの中に、どちらの性質も存在すると教わった。ただし、均等ではなく、人によって、または心の状態によって、男性性と女性性のバランスは変わってくる。
具体例として、受講生を目標達成への具体的な行動へと突き動かしたり、時には厳しいフィードバックをするのは『男性性』の性質である。一方で、受講生の気持ちに寄り添ったり、声にならない不安や不満に歩み寄るのは『女性性』の性質。
『男性性』に偏ると、受講生は「全然理解してもらえていない。間違ったことを言うと怒られそうで相談できない。」と心の距離が離れ、結局、講師が力強く関わろうとしても行動は鈍り、結果も出ず、両者が望まない形で退会へと進んでしまう。
『女性性』に偏ると、受講生は「居心地はいいけど、目標に向かって頑張れない。」講師側も「精神的に依存されて困る」といった相談を受けることもある。
男性性と女性性をバランスよく発揮できれば、時には受講生の背中を力強く押して目標達成に導き、不安なときは寄り添い、素晴らしい伴走者になれる。
とはいえ、理屈はわかっても、本当に大切なのは実行すること。講師ひとりの中で、男性性と女性性のバランスを常に保つのは簡単ではない。まず第一に、こちらの思い通りに相手のあり方も言動も変えられない。相手に合わせてバランスを取っていく必要がある。続いて、男性性と女性性は、特に両親のパートナーシップの影響を受ける。僕自身を例に上げると、父親は経営者で力強く、母親も父に勝るとも劣らない勝ち気な性格だ。つまり、僕の育った家庭は、『女性性』は弱く、否定されてきた。そのような家庭環境で育った僕は、長らく『女性性』を否定してきた。好きなビジネス書も、「感情はないものとする、というロジカル系が中心だった。実際には、人間には感情はあるのだけど、職場やコミュニティで扱うのは面倒だから無しね!」という考え方に傾倒していた時期がある。当然、男性性に偏ったチームやコミュニティは、女性性を大切にする人には合わず、人が離れていく。そして、男性性とは勝ち負けが重視されるので、常に勝ち続けている人しか残れない。結果、男性性に偏ったチームやコミュニティは人数が増えていかず、最後は、講師一人だけの孤独になる。その時に絶望して、男性性から女性性へと反転して、機能不全になってしまう人もいる。
今回は、『男性性と女性性』について考えてみた。ひとりの人間の中にも、チームの中にも、コミュニティの中にも、社会全体の中にも、『男性性と女性性』はどちらも大切で、バランスをとっていかないと最終的には崩壊してしまう。私たち一人ひとりの中にある『男性性と女性性』を統合していくことで、あなたの主宰するチームやコミュニティが繁栄していく。