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新鋭校を上回った伝統校の意地(高校野球沖縄大会決勝)

今日は天候関係なく家にいると決めた。目が焼けるぐらいの猛暑だったのと、甲子園行きをかけた地方大会決勝があったからである。この日は南北海道、秋田、沖縄で決勝だったが、私は沖縄大会を観ることにした。

対戦カードは興南-エナジックスポーツ(以下、エナジック)。興南に関しては、高校野球ファンの方なら知らない方はいないはず。なにせ2010年に甲子園春夏連覇を果たした県内屈指の伝統校だから。
一方、エナジックはどうだろう。元から校名を知っていた方は沖縄県民の方以外はほぼいなかったのでは無いだろうか。
それもそのはず。開校したのは僅か3年前の通信制高等学校だからである。色々調べたところ、医療・健康機器の開発メーカーであるエナジックグループの創業者が理事長を務めているそうだ。そして、そんな新鋭校の野球部監督は神谷嘉宗氏だ。

学校HP:エナジックスポーツ高等学院  | 学校法人 大城学園 (oshiro.ed.jp)

神谷氏は2008年に浦添商を甲子園ベスト4に導いた実績をもっており、沖縄の高校野球ファンなら誰もが知っている名将である。僅か3年で県の上位に食い込むのだから、指導力は間違いなく優秀なのだろう。

話が逸れてしまったが、ここで今日行われた興南-エナジックの試合を振り返ってみる。

両校のここまでの4試合の勝ち上がり方は対照的だった。エナジックが5点以上の点差をつけて快勝(うちコールドゲーム3試合)してきた一方、興南は全試合の点差が最大で4点と、接戦をモノにしてきた。コンディションや得点力を考慮すると、エナジックに分があるとみていたが、試合は序盤から私の予想の逆を行った。

エナジックナインは創部以来初の夏の決勝戦で緊張があったのか、明らかに浮き足立っていた。2回裏に1点を先制されると、3回表の攻撃では、ツーアウトランナー3塁からホームスチールを仕掛けたが失敗し無得点。まだ序盤で、しかも打席に立っていたのは2番バッターだっただけに、慌てる必要は無かった。これで主導権を握られると、直後の守りではフィルダースチョイスが絡むなど、2点を失う。結局、先発の古波蔵君は3回限りで降板し、エナジックは苦戦を強いられることになった。

4回以降も興南先発の田崎君に悉く無得点に封じられ、中々点が取れない展開になる。5回終了時点で、私はこのまま興南の勝利を信じて疑わなかった。
田崎君はまっすぐも変化球も低めに集め、ランナーは出しても要所を締める投球を披露する。今春から導入された低反発バットの特性を活かしていた。

ただ、6回以降になるとボールが上擦る(例:左打者へのスライダー)ようになり、微妙にコントロールが乱れてきた。エナジックはそこを突けるかに注目していた。
7回表に先頭からの連打でピンチを招くと、2エラーが絡む等して同点に追いつかれる。6回までを投げ、三者凡退に終えたのは2回表のみだったこともあってか、球数が嵩んでしまったことが影響したのだろう。追いつかれた直後に一度ライトに回ることになった。

7回~9回は完全にエナジックのペースだった。チームとして取り組んできた走塁を遺憾なく発揮し、興南守備陣を揺さぶり続ける。勿体ない走塁死が目立ったが、走塁が強みのチームであることはよく理解できた。守備でも中盤以降の継投が決まり、4点目を許さない。

結局両チームとも勝ち越せずに、試合はタイブレークに突入することになる。奇しくも、お互い4番からの攻撃だった。
10回表、エナジックの4番・龍山君がライト前ヒットを放つ。興南外野陣は長打を警戒していたのか、定位置よりやや後ろに守っていたが、ピッチャーからライトに回っていた田崎君が好返球を見せ、ホームタッチアウトに仕留めた。
このシーン、キャッチャーの仲本君も見逃せない。ショートバウンドした為、弾いてもおかしくなかったが難なく捕球し、2塁ランナーを刺した。そして、私が特に注目したのは直後に3塁へ投げたこと。結果的にはセーフだったが紙一重だった。普段の練習等からしっかりと予測できていた証拠である。そして、この直後に興南はその田崎君が再登板することになる。この時、どういう意図なのか分からなかった。

さて、2塁ランナーが憤死したエナジックだったが、ワンアウト1,3塁の形を作った。しかし、またしても走塁ミスが顔を出してしまう。カウント0-1からエンドランを敢行したが、バッターが空振りしてしまい、3塁ランナーは憤死。その直後に見逃し三振に倒れ、痛恨の無得点に終わってしまった。

表の守りを無失点で切り抜けた興南は息を吹き返した。ノーアウトからのバントは失敗したものの、後の進塁打でツーアウト2,3塁とすると、代打・嘉数君が2球目のスライダーを左中間に運び、サヨナラ勝利。
この時、私は直前の守りで興南の我喜屋監督が田崎君を再登板させた意図を初めて理解できた気がした。ここまでチームを牽引してきたエースに託し、流れを引き寄せたかったのでは無いか、と。

試合全体を振り返ってみて、伝統校である興南から「まだまだ新鋭校に覇権は握らせないぞ」という意地を感じた。一方で、エナジックが甲子園初出場するのもそう遠くないとも思った。経験豊富な神谷監督のもと、来年どんなチームになっているか楽しみになってきた。




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