不動産売却にかかる税金はどのくらい?手続きのポイントは?全体の流れで解説
皆さんは自身の持ち家、あるいは土地を手放した経験はありますか。
ちょっとした生活の変化で起こることに、不動産売却があります。何かのきっかけで引っ越す場合など、売却せざるを得ない状況がこれから訪れるかもしれません。
しかしいざ売却するとなったとき、ほとんどのかたは初めてであり、実際どんなことがあるのか、どう進めていいのかわからないと思います。
本記事は「まだ売る相手が決まっていない住居をこれから売りに出す」状況を想定した内容です。全体の流れを見通せるような構成にし、その上で知っておきたいこと、気をつけたいポイントに焦点を当て解説します。
特に次の部分を強調しました。
どんな流れで進み、やるべきことは何か
必要書類や用意するべきものは何か
売却ステップごとの大事なポイント
かかる費用・税金の金額、支払うタイミング
売りたいと考えている方はもちろんのこと、そうでない方も来る時のために知識をつけて困ることはありません。上の4つのうち、1つでも不安や疑問な点があればご覧ください。
かかる税金・費用・期間はどのくらい?知っておきたい前知識
まず気になる部分である、かかるお金や時間について触れていきます。
税金・費用の総額は売却利益の約23~45%、特例利用で3~5%
税金や費用といった支払う金額は、売った不動産の売却価格によって決まります。
計算するためにはまず、売却価格から売却するまでにかかった費用を出します。費用は仲介手数料という不動産会社へ支払う費用が大半で、売却金額のおよそ3~5%かかります。
売却価格から費用を差し引いた金額で利益が残り、通常は税金がかかってきます。税金の総称を譲渡所得税といいますが、利益に対し2割から4割かかります。よって税金・費用の総額は例えば2000万円の値段で売れたなら、 2000万×(0.23~0.45)=460~900万円が支出目安です。
利益が生まれなかった場合、税金は発生しません。
譲渡所得税は条件を満たすことで免除することができます。詳しくは後の「確定申告のポイント」の項目で解説します。
費用を支払うタイミングについては、基本的に不動産が売れたときより後になりますので、急いでお金を用意する必要はありません。物件の査定や、会社に依頼する段階では無料です。
3か月から6か月の期間かかる
次に不動産売却にかかる期間について。全体の所要期間目安はスムーズに進んで3か月から6ヶ月です。
期間は不動産が売れるタイミングによって大きく左右されます。なかなか買い手がつかないようであれば、その分だけ長くかかります。市場動向に対しての売却物件の需要、依頼した不動産会社の仕事具合などに影響されます。
不動産売却の全体の流れ
この章では全体の流れをつかんでいただくため、主な事柄を各ステップに分けて記載しました。ざっと目を通していただくことで、これから進める内容が理解しやすくなります。聞き慣れない言葉があるとしても、今はなんとなくで読み進めていただいて大丈夫です。
売却の流れは7つのステップにわかれます。
①事前準備
・売りたい不動産の相場を調べる
・住宅ローンがある場合売却金額で完済できるか確認する
②査定依頼
・何社かの不動産会社に査定依頼をし、見積もりを出してもらう
・依頼した会社を比べて、これから契約を結ぶ会社を絞っていく
③媒介契約
・選んだ会社と契約を結ぶ(媒介契約)
・契約書に仲介手数料(不動産会社へ支払う費用)の金額を載せてもらう
④売却活動
・媒介契約した会社と戦略を立て、価格設定し不動産を売りに出す
・購入したい人の物件見学(内覧)に備え、当日は対応をする
⑤売買契約
・購入したい人と交渉がうまくいったら売買契約を結ぶ
・売買契約時、不動産会社に仲介手数料の50%を支払う
・買い手から手付金が入金される(売却金額の10%)
・住宅ローンを組んだ物件を完済したら、抵当権抹消の準備をする
・今住んでいる物件を売るなら、決済日前までに引っ越しを済ませる
⑥決済引き渡し
・指定書類と準備物*を用意する(*詳しい内容は後述)
・買い手へ不動産の所有権移転(持ち主の移動)手続きが行われる.
・抵当権(ローンの担保のようなもの)を司法書士に抹消してもらう
・売却残金90%が入金される
・不動産会社に仲介手数料の残金50%と、司法書士に報酬を支払う
・物件やカギなどを相手に引き渡す
⑦確定申告
・翌年に確定申告をする必要がある
・通常ならば売却益の約2割から4割の税金(譲渡所得税)がかかる
・居住用の財産を売ったならば、3000万円まで控除される特例(自己申告)
支払いに関する部分は太字にしました。お金が動くのは売買契約からになりますので、それまでに準備しておきましょう。
不動産会社を選ぶまでサイトをうまく活用しよう
全体の流れをご覧いただいたところで、詳細や注意点の解説に移ります。
まず、前章の①~④までの部分について順を追って解説します。
査定を依頼する前に、自身で相場を調べてみよう
適正な金額で売却するためにも、査定を依頼する前にまずはご自身で相場を調べてみましょう。
特に住宅ローンを組んだ物件を売却したい場合、売却金額と合わせてローンを返しきる必要があります。相場を調べることで収支の計算に役立つかもしれません。
過去にあった取引が載っているサイトをご紹介いたします。
レインズマーケットインフォメーションhttp://www.contract.reins.or.jp/search/displayAreaConditionBLogic.do
政府指定の会社が運営しているサイトです。
直近三年以内に取引された、戸建てやマンションの売却相場を知ることができます。物件の築年数 、間取りなど細かく記載されており 、ご自分の売りたい物件と似た条件のものがあれば 、おおよその参考になるでしょう。使いかたは簡単で、地域名を入力して検索するだけです。
レインズデータライブラリー 月例マーケットウォッチ
http://www.reins.or.jp/library/2024.html 都道府県ごとに、各月にあった取引のデータがまとめてあります 。戸建てやマンションのほか 、土地の取引価格も知ることができます 。
前年前月と比べての価格の動きが赤字で示されていて、今売るべきかどうかの判断につなげやすいです 。
注意していただきたいのは 、各データはすべて「都道府県全体の平均値」で出されており、築年数が「平均築年数」での記載となっていることです 。
査定依頼には 一括査定サイトがおすすめ
一括査定サイトとは
依頼する会社を探すには、一括査定サイトが便利です。物件の情報や条件を入力し検索します。いくつもの会社へ同時に査定予約できます。
おすすめサイト
ライフルホームズ
スーモ不動産売却
イエウール
RE-Guide(リガイド)
提携企業数が多く、利用者満足度の高い会社を集めました。家を売りたいなら一戸建ての売却に強いイエウール、より細かく条件を入力したいならばRE-Guideがオススメです。
不動産会社の選び方 、売却に強い会社の見分け方
査定サイトを選んだら、不動産会社をピックアップしていきます。
売却を扱う不動産会社は主に2パターンに分かれます。
買取業者
買取業者自身が物件を下取って、市場価格で売って儲ける業者。
特徴
・売却までが早い、数週間から2か月程度
・相手を探す必要がないためスケジュールや資金計画を立てやすい
・売却価格は仲介業と比べて20から30%安くなる
・物件の条件が悪いと買い取ってもらえないこともある
仲介業者
売り手と買い手の間に立って交渉、あっせんする業者 。売り手を探して市場価格で売る
特徴
・市場価格で売れる
・売却までが長期間に渡り、最後までいくらで売れるかわからない
・売り手が見つからない場合がある
・仲介手数料がかかる
大きな違いは売り手が第三者になるかどうかです。どちらを選択するのが良いかは、ご自身の売りたい条件や地域によって変わります。
本記事は、より手続きのステップを踏む必要のある後者を念頭においています。
良い会社の見分け方
依頼する会社がいい会社か見分けるポイントを挙げていきます。
判断基準
*査定前
・ホームページで企業情報を確認する
・売却が得意(売却専門会社であればベスト)
・実績や売買成約件数の多さ
・クチコミサイトの評判
*査定後
・査定の時に媒介契約を迫ってくるならば要注意
・営業担当者の対応が迅速かつ丁寧か
・こちらの状況に合わせ親身に話を聞いてくれるか
査定の段階ではまだ料金はかからず、契約を結ぶ必要はありません。ですから複数社に見積もりを出してもらい、査定後に候補を絞っていきましょう。
媒介契約から物件売却をするまでのポイント
媒介契約と仲介手数料について
不動産会社に正式に依頼すると、契約書を介して媒介契約というものを結びます。
契約の種類と違い
・専属専任媒介契約 (1社に売り手探しも含めすべて任せる)
・専任媒介契約 (1社に任せるが、売り手を自分でも探せる)
・一般媒介契約 (2社以上に任せる契約、物件情報を世間に公開しない)
選ぶ際のポイント
どの契約を選んでいくか、ポイントになる点をあげます
・できるだけ早く売りたいかどうか
・自分で売り手を探したいかどうか
・1社に決め込むか、2社以上に手広く探してもらうか
・売却を公にしてもいいかどうか
早く売りたいならば、専属専任媒介契約を結びます。こちらへの活動報告の回数が多く、会社も積極的に動いてくれる可能性が高いです。
売却をできるだけ世間に知らせたくないならば、一般媒介契約を選びます。ただ一つ、売却するという情報が市場に出回らない契約です。手広く探せるメリットもありますが、活動報告義務がなく進捗がわかりづらくなるデメリットがあることを頭に入れておきましょう。売却期間も延びる傾向にあります。
専任媒介契約は両者の中間の位置づけとなります。
仲介手数料とは
どの契約形態を選んだとしても、不動産会社への支払いである「仲介手数料」が発生します。前金などはなく、売買契約時に50%、物件を引き渡すときに50%支払うのが一般的です。契約がまとまらなかったら支払いは不要です。
媒介契約時の注意点
物件の瑕疵はあらかじめ伝えておく
もし物件のどこかが壊れたり歪んでいるなど、欠陥が分かっているならば契約の時点で伝えておきましょう。のちに発生するトラブルを防ぐためです。仲介手数料の金額や設定方法を契約書に記載してもらう
悪質な会社は仲介手数料を高額に設定しようとします。念のため予防線を張りましょう。契約書に手数料の設定額などを記載してもらうことで対策ができます。
売却活動のポイント
価格を設定し物件を売り出します。購入希望者が出るまでのあいだ、以下のことを忘れないようにしてください。
・不動産会社からの定期的な報告で進捗状況のチェック
・内覧に備え、物件を整理・掃除して見栄えを良くしておく
購入希望者が出たら売買条件の交渉を行い、次の項目を話し合い決めます。
・物件価格の提示
・支払い方法
・振込手数料を負担する側
・引き渡し希望日
売買契約のとき契約不適合責任を外してもらう
交渉がまとまったら買い手と売買契約を結びます。
注意すべきは、契約条件における「契約不適合責任」というものです。
内容
『売り渡した後の一定の間で物件に何か不具合があった場合に、売り手が補償しなければならない』
重い制約ですので、売買契約の際には必ずこの責任を除外してもらうようにしてください。不動産会社に伝えて、売買契約書に「免責特約」を設けてもらいましょう。
なお売買契約時に、仲介手数料の1回目の支払いをしますので準備を忘れないようにしてください。
決済日前に引っ越しを済ませておく
決済日には物件が自分のものではなくなってしまうため、その前に必ず引っ越しを済ませておきましょう。
決済引き渡しと確定申告について
売買契約から数週間後、早くて数日後に残金の決済と物件の引渡しを行います。
抵当権の抹消手続きについて
ローンを組んだ家を完済した方は、金融機関から書類が送られてきます。ローンを組んだ時に銀行から設定を求められる「抵当権」を抹消するためです。そのままにしておくと、抵当権は返済を終えても残り続け、買い手に負担がかかります。
手続きの方法は二つあります。
・自分で法務局へ行って手続きする
・司法書士に手続きを代行してもらう(報酬を1万~3万5千円程度支払う)
売却前にすでに完済している方は、決済前に手続きを完了することが望ましいとされています。どちらかのやり方を選ぶかは、金融機関から指定があればそちらに従いましょう。
売却と同時に完済した場合は、不動産会社の手配で司法書士に依頼し、決済日に手続きを行うことが一般的です。
抵当権抹消に必要な書類
どのやり方をするとしても、ローン完済時に案内される指示などに従って、手続きに必要な書類を集めます。
必要書類
・ローンを完済した時に送られてくる書類
・登記申請書
・申請料金
登記申請書はネットでも用意でき、申請料金は通常1000円~2000円程度です。もし何かわからないことや不安な点がありましたら、法務局に相談しましょう。
決済日の流れと必要なもの
決済は関係者(当事者、不動産会社、司法書士、金融機関)の立ち会いのもと、平日の午前中行われます。
主な内容
所有権移転(物件の所有権を買い手に移す)書類の作成
抵当権の抹消手続き(まだ済んでない場合)
代金の残金90%が入金される
買い手から固定資産税など清算金が支払われる
物件のカギなど物件に関する書類の引き渡し
決済完了時に仲介手数料2回目50%、司法書士に報酬を支払う
必要なもの
不動産の権利に関する書類(登記済権利証など)
税金に関する書類
本人確認書類(写真付き身分証明書)
印鑑証明書、実印
抵当権抹消書類(必要な場合)
着手金を確認できるもの(預金通帳・キャッシュカード)
物件の鍵、説明書など
支払いのためのお金
確定申告のポイント
売却金額から各種費用を差し引いて利益が出た場合 、翌年の2月16日から3月15日の間に確定申告をする必要があります。譲渡所得税(売却利益で発生した所得税と住民税)が発生するためです。物件の所有期間5年超えで2割、5年以下で4割かかります。
3000万円控除の特例
譲渡所得税は支払ずに済む場合があります。
例えばこれまで住んでいた家屋や土地を売却したならば、譲渡所得税を 3000万円まで控除できる特例の対象に当てはまります。それ以外にもさまざまな特例があり、詳細は国税庁のホームページで確認できます。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
ほかの優遇措置が適用される場合は利用しない選択肢もありますので、特例を受けたくても事前に税務署などに相談をしましょう。なお、自己申告制となりますので申告を忘れないようにしましょう。
注意点
住宅ローン控除などほかの優遇措置と併用出来ない
特例を利用した場合も確定申告は必要
確定申告の必要書類
確定申告に必要な書類をまとめました。特例の申請も確定申告と同時に行います。
必要書類(入手場所・費用 など)
確定申告書 (税務署・市役所)
登記事項証明書 (法務局 で600円 、オンライン請求で500円 )
源泉徴収票 (給与所得者のみ )
本人確認書類
各種費用の領収書
売買契約書のコピー (売買契約時に作成したもの )
特例を受ける場合、上記に加えて必要な書類があります。
譲渡所得の内訳書(売却後に国税庁から 送られてくる )
戸籍の附票の写し(住民票の住所と売却物件の所在地が異なる場合)
その他特例の種類にあわせた書類
まとめ
全体の中で特に大事な部分をピックアップします。
売却完了までかかる時間は3か月から6ヶ月程度
特例を利用しない場合、支出の総額は売却金額の23%~45%が目安
ローンがある場合事前に残材を見て、売却時に完済できそうか確認する
売れる金額 、かかる時間 、担当者の対応などを総合して依頼する会社を決める
媒介契約書に 仲介手数料の金額を載せてもらう
物件に欠陥があれば早めに伝えておく
仲介手数料は売買契約時と決済時に半分ずつ支払う
売買契約時に契約不適合責任を除外してもらう
決済日前に必ず引っ越しを済ませておく
確定申告の前に、譲渡所得税の免除特例を受けられるか確認
不動産の売却は選択と決定の機会がたくさんあります。しかし事前にやるべきことを整理し、確認・チェックを怠らないようにすればスムーズに進めることができるでしょう。
依頼する会社に任せきりにしてしまい、売った後で後悔する方も中にはいらっしゃいます。ご自分でも情報を集め、内容を充分に吟味して会社と協力していきましょう。
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