見出し画像

マンション経営で節税できるのは本当なのか。条件や仕組み、リスクをご紹介

「マンション経営をすると節税できる」という話を聞いたことがありますか。近年、不動産会社や知り合いから誘われ、新しく始める方が増えています。

この話を聞いて、疑わしく感じる方もいらっしゃるでしょう。サラリーマンを狙った悪質な勧誘もありますので、嘘くさいと考えても無理はありません。
しかし詐欺の話を抜きにすれば、本当に節税できるのでしょうか。節税効果が高く失敗する可能性が低いのであれば、投資する価値はあるはずです。

本記事ではマンション経営に興味のある方に向けて、節税が成り立つための条件や仕組み、リスクをご紹介します。項目は大きく分けて以下の5つに分かれています。

  • マンション経営をして節税が成り立つ条件

  • 節税できる税金の種類と仕組み①相続税

  • ②所得税

  • 初期投資を何年で回収できるか、利回りを計算しシュミレーション

  • 節税目的でマンション経営をするリスク、失敗した場合

気になる項目をお読みいただき、検討する材料にしていただければと思います。


マンション経営で節税する条件と税金の種類

マンション経営で節税できると言う話は本当なのでしょうか。結論としては誰でもできるとは言えず、ある条件に当てはまり「税金のかかる仕組みを利用」することで可能となります。

①会社員で年収1200万円以上の高収入があり、初期投資できる資金がある

サラリーマンの副業としてマンションを経営することで、所得税を節税することができます。
ただし、所得税は所得が高いほど税率があがりますので、節税して効果があると言えるのは一定額以上の高収入の方になります。
具体的に言うと課税額が900万円以上、年収約1200万円以上の方は大幅な節税をすることが期待できます。

さらに土地を所有していない場合、新しくマンションを購入する元手が必要です。

②これから土地の相続をする、または相続を受ける

土地を相続する予定であれば、相続が発生する前からマンション経営をすることで、発生時に相続税を節税することができます。
ただし相続の額によってはそもそも相続税がかからず、節税の必要がない場合があります。詳しくは次章の「基礎控除」の項目をご覧ください。

③建物の立っていない土地を所有している

土地を自身で所有していて、なおかつ土地活用をしていない方は、新しくマンションを建てることで固定資産税を節税することができます。
土地活用とは建物(自宅を含む)を建てる、誰かほかの人に貸しているなどを指し、更地の状態とは税率が区別されます。

上記の三つの項目において、それぞれ節税対象となる税金が違うことにお気づきでしょうか。

  • 相続税

  • 所得税

  • 固定資産税

節税効果が高くなるのは、複数の条件に当てはまる方だといえます。
特に相続税
は減額の幅が大きく、節税したいのであれば是非ともリターンを得たい項目です。条件②に当てはまる方は将来的に相続を受けた後、③の条件も満たすことができますので、長期的な節税に期待できます。

相続税・固定資産税を節税する条件と仕組み

相続税は節税による減額の幅が大きいということを述べました。
ではどのようにして税額が決められるのでしょうか。

土地評価額を下げることで相続税が減額される

土地には「評価額」というものがあり、それにしたがって資産価値が決められます。評価額が高ければ相続される財産の価値が高くなり、相続税も増額されていきます。

もっとも土地評価額が高いのが建物の建っていない「更地」です。更地の状態では相続税、固定資産税などあらゆる税金が高額になりやすいのです。

土地評価額を下げるためにはマンション経営などの土地活用をし「土地の評価を下げる」方法が有効です。
詳しい説明は省きますが、特定の条件を適用すれば最大で

相続税を40%
固定資産税を1/6

更地の状態と比べ減額することができます。

そうは言っても『財産の価値を下げたら本末転倒じゃないか』と思われるかもしれません。しかし実際のところ、土地は更地にしておくままでは固定資産税を支払うのみで、収入がありません。持っているだけでは損と考えることができ、活用してはじめて利益を生み出せます。

相続税は「基礎控除」を超えた場合のみかかる

なぜ相続税を節税できるのかについてお話しましたが、節税を考える前に忘れてはならないことがあります。

相続税には「基礎控除」という「相続される財産の額が一定額を超えるまで税金がかからない」決まりがあります。相続先の税負担を抑えるために作られたものです。
つまり相続される財産の額が基礎控除額内に収まっていれば、そもそも相続税は支払わずにすむのです。

基礎控除額は相続人の数によって変わってきます。

3000万円+(600万円*相続人の数)

計算すると相続人が一人の場合は3600万円、 2人の場合は4200万円までが基礎控除される額となります。

以上のことから相続税の節税を考えるのは、基礎控除額を超える財産分与があった場合のみとなりますので注意してください。

「損益通算」で所得税を節税する

次に、所得税の節税について説明します。仕組みを理解するためには損益通算(そんえきつうさん)について知る必要があります。

損益通算とは

所得税を減らすためには所得を減らすことが簡単ですが、そうはいきませんよね。ではどうすればいいのでしょうか。

申告の際、帳簿上の”費用”を計上し所得をあえて小さく見せることで、税率を低く抑えることができます。

例えば、副業のマンション経営が赤字(=費用が収入を上回る)であれば、本業と合わせた総収入が本業一本と比べて低くなります。収入が減った分、かかる税率が低くなるということです。
あくまで費用の計上ですので、実際の現金が減っていくわけではありません。この仕組みを「損益通算」といいます。

経営初期の赤字経営を利用する

費用をたくさん計上すれば、経営上赤字になります。
経営が赤字であれば損益通算を利用して所得税を節税できる。とはいえ、赤字経営をして大丈夫なのでしょうか。どのようにして経営を保っていくのでしょうか。

ずっと赤字のままでは経営できませんが、マンション経営の場合、安定した家賃収入さえ得られればプラスに転じることができます。

経営初期にこそ購入資金をはじめとした多くの費用を計上します。
しかし経営をシュミレーションし資金計画を立てれば、家賃収入や節税効果で費用をペイし、翌年以降プラスに転じることができます。

マンション購入して本当にペイできるのか、できるとしたら何年ぐらいかかるのか 経営シュミレーション

前章で「費用をたくさん計上しても翌年以降プラスにできる」としましたが、本当にプラスにできるのでしょうか。また、どれくらいの年数で元手を賄えるのでしょうか。

利回り(費用に対する儲けの割合)を計算することで、何年で元が取れるかを予測することができます。

利回りの計算方法
(年間家賃収入ー諸経費) ÷ ( 物件価格+購入時諸経費 )

仮の条件を立てて実際の利回りを計算してみましょう。
設定した値は全国平均値目安となります。

~条件~
【購入時にかかるお金】
購入価格5000万円+購入価格の5%の諸経費
【物件】
全10部屋、うち空室が3部屋
家賃5万円
年間経営費用は家賃収入の15%            

のマンション経営における年間利回りは
家賃収入            5*(10-3)*12=420万円
購入時経費  5000*0.05=250万円

経営費用    420*0.15=63万円
利回り    (420-63)/(5000+250)=0.068=約7%
返済年数    100%/7%=14.28=約14年

利回りが約7%ですので、 100%の費用をまかなうために約14年かかります。15年目以降は純粋な利益を得られます。

結果として全国平均だけを見れば、費用をペイすることは可能と言えます。計算は利回りのみを考慮した結果であり、その他の節税効果は加算しておりません。所得税が高額であったり相続が発生した場合、節税効果が大きくなるのでもっと短い期間でペイすることができます。

ですから将来的なプラスを見越して、経営初期の費用がたくさんかかる時期に赤字経営をすることが定番とされています。節税効果を高めるために必要であるからです。

節税目的でマンション経営をするリスク

ここまでマンション経営の利点ばかり説明してきましたが、リスクもたくさんあります。特に重要な点をピックアップしていきます。

  • 物件選び・立地選びに失敗すると取り返しがつかない

長期的な目線で考えれば、物件選び・立地選びの段階が最も大事なポイントだと考えます。利回りが高い・低い物件とありますが、他にも考慮すべき要素がたくさんあります。

良い物件を立てたとしても、立てる地域にマンションを借りる世代が集まっていなければ入居者は増えません。特に土地の所有者は場所を選ぶことができませんので、場所によっては経営を始めること自体がリスクとなります。

入居者にとっての利便性や住み心地が整っているかの判断、将来的に土地の価値が変化するかを予測しなければなりません。

そして選ぶ段階で失敗すると、経営がすぐに立ち行かなくなり、取り返しがつかないのが難しいところです。

  • 初年度以降節税効果が薄くなる、長期の節税は望めない

初年度は必然的に経費がかさむため節税しやすいですが、その分翌年以降は効果が薄くなります。

  • 空室リスクによるマンション価値の低下と隣り合わせ

安定的な収入を得るためには家賃収入が不可欠です。しかし入居者の出入りは流動的であり、空室が増えるリスクは常にあります。
空室を増やしたままにしておくと家賃収入が減るのはもちろん、マンション価値が低下します。すると利回りが低下し費用の支払いをペイできないなど、投資そのもののリスクが表面化することになります。

  • 経営難に陥ると借金だけが残る

経営難に陥りマンションを手放したくなっても、価値が下がった状態では買い手がつきづらくなります。よって手放したくても手放せない可能性があることも考慮に入れなければなりません。売却できたとしても売却価格が低いため借金だけが残ってしまいます。

結論・まとめ

入居者の出入りにより、家賃収入とマンション自体の価値が変動することから、マンション経営には明確なリスクがあります。
リスクを避けるためには、物件選び・立地選びの段階からしっかりとした経営プランを立てなければなりません。

ですから、節税のみを目的としたマンション経営を始めることはお勧めできません。マンション経営において節税はおまけで、経営がメインの不動産投資であることを念頭に置いた方がよろしいでしょう。

ご自身の立場で、経営による利益だけで成果を上げることができそうか・長期的な経営ができそうかどうか、を基準に決めるべきだと思います。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?