2021年の梅干し(3)梅の豊作の年は紫蘇が高くなる、梅が梅干しになるまで
梅干しの工程は長い。6月に始めて7月の終わり(土用)に3日干して、10月ぐらいから食べ始める。
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2021年6月25日 梅もぎ 36kg收穫 -9kg友人に差し上げた。
2021年6月26日 洗ヘタ取り 26kg洗い終わり -9kg梅酒
2021年6月27日 塩漬け 16kg+塩3.2kg 19.2kgでスタート
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発酵・腐敗・代謝(消化)
「発酵」の定義の狭さは、擬人的(直交的にヒトにとって役に立つたたない)である。僕は発酵(腐敗)とは生命の始まる場所と定義している。そして体内の細胞の内側で起こる代謝も同じ「律」の内にある。
そもそも発酵学というのは工業的に食品を作るために「ごく狭い範囲の腐敗」を安定して行う技術なのだ。しかし、世界は常に「輪廻転生」の循環のうちにあるのだ。全てお日様の下では生命は腐敗して、次の生命の内に生きる。マイクロバイオームを中心に生命を見ればそう見えてくる。
そして、工業的に作られる食事が私達を少しずつ殺しているのだ。
食事は作った瞬間から腐り始める。腐敗しているとしていないの境界線はあやふやだ。賞味期限とか消費期限とか昔からあったわけではない。当たり前だが、パックに入って鮮度を確認して買えないようなものが売り出されてから始まった「政治的に正しい食品」の流通条件なのだ。店頭で売られるものと真空パックされて流通されるものでは全く違う。食事の商品化とともに進化してきている。逆に言えば、「賞味期限とか消費期限」が記載されなければならない様な食事が問題なのだ。このお話はまた今度。
梅干しが素晴らしいのは、それぞれの家で作られているからなのだ。発酵(腐敗)は生命が始まるところだ。
梅酢が出たあとで紫蘇を加えるのだ。2016年に亡くなった母に教えてもらった時の動画である。料理というのは家庭というシェルターで維持されてきたのだ。もう10年くらい前だろうか。まだ食事の価値に気がついていなかった。残念である。
【2021年6月28日】 漬け込んで一日
じっとりと汗のように梅からエキスが出てくる。塩が足りなかったので600gずつ両方の桶にたした。最後には一つになるのであまり神経質にならなくていい。カビが生えるとしたら、土用干しが終わって、保存に入ってからである。表面に結露したりすると生えてくることが多いようである。
塩につけておく過程で出てくるのは「産膜酵母」と呼ばれている高塩分濃度の中でも代謝活動を行うことの出来るマイクロバイオームである。酸素の豊富な表面で膜を張る。
塩で漬けておくと、梅の内側から梅のエキスが上がってくる。梅の香りが強烈である。もちろんこの時に膜が張ることもあるが、これはとてもいいことなのだ。表面に出た膜を上下に撹拌すると良い。
重しは相当に重い10〜20kg位だろうか。母は、梅と同じ重さと言っていた。水が上がったら軽く押さえる程度の石に変える。表面が水からでないことが大事。
2021年7月1日 水が上がりだした
毎日、重しを外して、梅の上下を返す。皮が柔らかくなってきているので気をつけないといけない。
梅干しが発酵しながら美味しさに変わっていく。青梅を食べるとお腹を壊すというが、発酵させることで「人の身体というコロニー」に入った時に「既に身体の内側にある代謝系」との間で問題を起こす物質が代謝(常温での化学変化)される。無くなるわけではないのだ。
考えてみれば、これは身体の外側で起こっている「代謝活動(消化と言われる現象)」だ。身体の内と外との境界は、「政治的に正しい医学」が考えているよりはるかに「あやふや」なのだ。そして、生命の姿はおそろしく豊かなのだ。
赤紫蘇の量で色合いが変わる。毎年買っているのだが今年は品薄である。庭に随分出ているので庭の紫蘇を使えれば嬉しいなあ。
この頃の梅は面白い。梅のジューシーな味が残っていながら、梅干しの味に変わっていく。まだ、梅である。そして梅干しに変わっていくというのはマイクロバイオームの力だ。発酵(腐敗)していっているのである。
2021年7月8日 しっかりと漬かっている
この時期の梅は美味しさがちょうど真ん中ぐらいだ(笑)。梅の美味しさが残っているし梅干しを予感させる旨味もある。梅酢が濁っている。この濁りが生命なのである。
この旨さは、ここでしか食べれない。梅を食べるのではない。この梅酢の内にすく数え切れないマイクロバイオームを食べる。干すプロセスで内に濃縮される。商業的な梅干しとは違うことがわかる。
2021年7月19日 産膜酵母が白いカビをうみ始める。
14~16日の出張から帰ってきた。久しぶりに樽を覗く。
白いつぶつぶが重しの周りについている。よく見ると水面にもぽつりぽつりと出来ている。
少し食べてみると、梅のジューシーな味わいから梅干しの味に変わっているのがわかる。これが発酵(腐敗)の力である。今年も上手く出来たなと思う。昨年に比べて膜がはっていない(笑)。毎日上下していたからなあ。
梅の香りが消えて梅干しの香りに変わる
紫蘇を入れる時期は少し過ぎているのだが、売っていないので去年の梅干しの上に残してあった紫蘇を入れることにした。量は全く少ないのだが少しは良いだろうと言うことで入れてみた。
ちょっと無理筋だった(笑)。全く足りないのだ。
去年の梅干しである。まだ結構ある。去年は紫蘇が安かったのだ。今年は全く見かけない。
明日は庭に生えている紫蘇の葉をちぎってきて塩でもんで入れてみよう(笑)。来年は4月ぐらいに種を蒔くことにした。タネから蒔けば安く上がる。
2021年7月21日 庭の紫蘇の葉をちぎって集めた。
例年が200円の紫蘇が800円だという。ぼくが行くスーパーは仕入れもしない。漬け込んで袋詰にした商品もあるが、一回買って懲りた。全く違うのである。出来上がりの違いはさほど分からないのだが色が強烈すぎって気に入らなかった。
雑草の間にチラチラと生えているのちぎって集めた。
多めの塩でもんで、一回アクを抜く。これが大事だそうだ。
樽の中の梅酢を入れて、揉み、重しをして一晩おく。真っ赤な紫蘇のエキスが上がってくる。嬉しい香りがする。少ないがこのエキスが大事なのだと母は言った。
紫蘇はすごく少ないけど、仕方がない(笑)。紫蘇を使わない地域もある。庭師さんと話したのだが、今年は紫蘇が高いので使わないと言っていた。おまけに干すのが面倒だから干さないという。それもいいような気がする。
とにかく天日干しのときは蚊がたくさん来て体中痒くなる。
もう梅ではなくなっている。まだしょっぱさは弱い、濃縮されて強くなっていくのだ。