EPOCHMAN「Brand new OZAWA mermaid!」を観て:人魚姫になれなかった人魚の、残酷でも不幸ではなかった、最高のお伽話。

久々のnote更新は、小沢道成くんのプロジェクト「EPOCH MAN」の公演「Brand new OZAWA mermaid!」の感想をば。
http://epochman.com/index.html/index.html
ほんとに素晴らしかったのだけど、構造的に再演はまず難しいとおもうので、
せめて言葉にして残しておこうと。

毎回楽しみにしているEPOCH MANの公演なのですが、
今回は様々な事情で千秋楽のみチケットを取って、1回限りの観劇の予定でした。
本来ならば。
評判が流れてくるのと、公開された公演寫眞がとても美しかったので、
やはり居ても立ってもいられなくなり、後半の水曜日・16日に
急遽チケットを取って観に行く事に。
16日の公演後にスペシャルイベントを企画していたことも理由ではあるのですが、
枚数限定の直前売「ハーフプライスチケット」を利用できたのも、
行こうと思った最大の理由。これ、ほんとに素晴らしいシステムです。

この直前の観劇決定判断、ホントにしてよかった。
というか千秋楽だけしか観なかったら、「何故1回しかチケット取らなかった!」と自分を攻めたことでしょう。
それくらい素晴らしかった。EPOCHMANの数ある公演の中で、
現時点で最も衝撃的で、最も切なくて、最も素晴らしい作品であったことは
間違いない。
この作品を見れたことは、10年後には凄い自慢話にできるかもしれない。
小沢道成という役者は、10年以内にきっと「ヘドウィグ」を演じるだろうから。野田秀樹と、イッセー尾形と並ぶ役者になっているだろうから。

御伽話を現代的解釈で作り直す物語は数多くある。
EPOCHMANでも、鶴の恩返しを元にした「鶴かもしれない」につづいて、
2度めの御伽話リメイクとして今回は「人魚姫」をモチーフにした物語を作ってきました。
でも、人魚姫は「人間になりたくてなれなかった」けど、
この物語は言うなら「人魚姫になれなかった人魚」の話。
そしてある意味「人魚姫よりも残酷なお伽話」に仕立て上げました。

誰かが極端に悪いわけでもない。
でも、皆が少しずつ、求めていたものが違うだけで、こんなにも悲しく、
残酷な結末になる。
だけど、小沢道成という表現者は、決して見捨てない。
だから残酷だけど、不幸ではなくて、決して不幸ではなくて、
あの終わり方の、あの表情に繋げた事が、切なくて嬉しくて、
私は2回観て2回とも同じ表情で、小沢くんを観続けました。

台詞。音楽。音響。衣装。小道具。舞台装置。照明。
とにかく全てが驚きで、全てが素晴らしかった。

(写真は小沢道成/EPOCHMANのtwitterからお借りしています。
https://twitter.com/MichinariOzawa)
公演が始まってから掲示されたこの写真に一目惚れして、
観るまではどんな舞台が展開されるんだろう?って思ってたのですが。

要するに上演時間85分、全部丸々フォトジェニックな場面が展開されます。

今回は初めて生音、生ドラムが投入されてました。
マルシェII世さんが最初に叩く音から始まり、最後の演奏が終わるまで
1秒1秒全てが計算され、神経が張り巡らされ、
2階分の高さがある劇場の上から下までいたるところに仕掛けが置かれ、
「ここがああなるの?!」「ここにもこんな仕掛けが!」と、
最後までワクワクさせ楽しませてくれて、
この舞台の構造すべてで、この残酷な物語が上質なエンタテインメントに昇華していく演出に満ちて溢れて。

私は正直、楽しみながら嫉妬していました。
こんな舞台、撮ってみたい。何処を切り撮ってもフォトジェニックにしかならない
この舞台を、私は肉眼でしか記憶できない事が、無性に悔しかったのです。


人魚姫のように自己肯定したまま消えていくことが出来ない人魚。
絶望の中に生きていかなければいけないのは、消えるより残酷なことなのかもしれない。
でも。だけど。
絶望の中に、確実に輝く希望の花火。
何処にも行けないけど、何処にも買える場所はないけど、元人魚は不幸ではない。生きているから。消えれなかったから。


花火に照らされた、最後の、震えながらの笑顔は、
とってもとっても美しかったのです。

とんでもない体力と精神力を使うから、1日1ステしか出来ない、
ほんとに贅沢な舞台でした。
たった14ステしか無いこの公演を2回観れて、ホントによかった。

でも、やっぱりいつか再演して欲しい。
小沢くんには、これ以上のものを求めてしまう。
一気にハードルを上げてしまったけど、きっと大丈夫。
彼なら、色んな所で沢山吸収して、もっと高みに上ってしまうだろうから。

だからいつかきっと、私はこの公演が見れたことを思いっきり自慢しようとおもうのです。
あの小沢道成という名優の、幻の舞台を見れた800人弱の一人なんだぞ、と。

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