二拠点生活をする僕が気づいた「体験」と「選択肢」の重要性について
前回は、二拠点生活をする僕が山梨で暮らすようになって当たり前になった暮らしの営みの一部をご紹介しました。
今回は、二拠点生活をするようになって得た気づきや、実感したことについて書きたいと思います。
自分らしさを見つけるための体験の重要性
都市と田舎にはそれぞれ異なる魅力があるのは確かです。たとえば、田舎では時間がゆっくり流れますし、近所付き合いが自然に生まれます。四季を感じたり、畑を耕したり、都市ではなかなか味わえない体験もできます。それに伴い、贅沢という概念も変わります。都市部では、田舎にはないエンタメ体験などが豊富ですが、よりおいしいもの、より高価なものなど、都市部での贅沢は物質的な欲求を満たすためのものになることが多いと感じています。一方で田舎では、野菜を育てる時間そのものが贅沢に感じられるんです。時間をかけて植物を育て、その変化を楽しむ。こういう時間は、都市ではなかなか得られません。
このような体験は、「贅沢」や「自分にとっての本当の豊かさ」を見つめ直すきっかけになります。その結果、「自分はやっぱり都市のエンタメが好きだ」と気づくのもいいですし、「自然の中で過ごしたい」と思うのも自由です。重要なのは、実際に体験してみること。それがないと、本当の自分の価値観に気づくのは難しいと思います。
田舎では、たとえばコンポストを試したり、地球に優しい生活を始めやすい環境があります。一方、都市には人が集まり、さまざまなコミュニティや体験の場が豊富にあります。それぞれの環境でできることは違いますが、どちらが良いかではなく、自分にとって大切な価値観を探るために異なる世界を体験してみることが大事だと思います。その中で、きっと自分らしい生き方が見つかるのだと思います。情報の海にいる現代だからこそ、体験を重ねることがますます重要になっているのではないでしょうか。寺山修司さんの言葉を借りるならば、「書を捨てよ、町へ出よう」というわけです。
私自身も二拠点生活を始めた理由は、どちらかというと「田舎暮らしをしたい」というよりも「いろいろな体験をしてみたい」というものでした。実際に二拠点生活をすることによって、「都市ならでは」「田舎ならでは」の体験をそれぞれ重ねることできており、広い選択肢の中から自分や家族に合うものを選ぶことができていると感じています。
子どもの選択肢を広げるために
子育てにおいても、さまざまな体験を重ねられる環境はとても大切です。私の感覚としては20歳くらいまでの多感な時期にさまざまな体験をすることは、人格や価値観の形成において非常に重要だと考えています。
子どもたちの興味や好奇心がどこに向いているのか、大人が目をそらしてしまうと見えなくなってしまいます。そのため、当たり前ではありますが、できるだけしっかり目を向けてあげることが大切です。ただし、大人の価値観を押し付けてしまう危険もあるため、それは注意しなければなりません。また、子どもが興味を示したものをただ拾い上げるだけでは不十分で、それを広げてあげることも必要です。あえて「逆」を見せることも、子どもにとっては貴重な学びの機会になります。選択する力は子ども自身にも備わっていますが、それを伸ばすためには、親が価値観を示しながら考えさせることが必要です。
都会にはたくさんの人がいるので、人と関わろうと思えばさまざまなコミュニティや場があります。ニッチなスポーツや習い事など、多様な体験の機会も整っています。ただし、それらの体験を得るにはお金が必要な場合も多いです。一方で田舎の場合は、都市ほど幅広い体験の場はないかもしれませんが、自然の中で創造性を育める環境があります。大人の価値観を押し付けるのではなく、子どもが自分で選べるように選択肢を広げてあげることが大切だと思います。
自分にとってのウェルビーイングを実現するためにも、常に選択肢を持ち続けたい
私の場合は、二拠点生活をするようになったことで「没頭できる時間」を持つことが大切だと気がつきました。たとえば、田舎では草取りをしたり、焚き火を囲んだりして、無心になれる瞬間。都市では、お風呂にゆっくり入る時間がそれに近いかもしれません。そうした「雑念のない時間」を日常に取り入れることが必要だと感じます。
また私は怖がりな部分があり、多くのことに対して不安を抱きがちです。お金のこと、住む場所、自分や家族の将来……。こうしたことについて、「もしこうなったとしても大丈夫」と思えるような選択肢を常に持っておくことを心がけています。
選択肢を持つことは巡り合わせや縁も関わるため、自分の力だけで全てを成し遂げるのは難しいと感じます。それでも、思い続けていれば実現することも多いというのが私の経験です。長い目で見て、選択肢を増やし続ける努力をすることが大切だと考えています。私にとって二拠点生活は、選択肢を増やすための重要な手段のひとつなのです。