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The first time in NYC. day 2(2/2).

数年前のことだ。
その時食事していた友人から突然

 「万引きしている人を見た」

と言われた。
私は

 「どこで?」

と聞いた。
彼は

 「え?そこ?」

と応えた。
私は意味がわからず

 「どういうこと?」

と聞き返した。
彼は

 「そこ重要?」

と更に聞いてきた。
私は

 「そりゃ重要だろ。」

と半ば呆れて言った。
場所がわかればどこで万引きを見かけて何を万引きしていたのかある程度絞れるものだ。
私の質問の意図をわかっていない彼のことが少し理解できなかった。

 「新宿。」

不思議そうに彼は言った。
私はよくわからなかった。
何故そんな応答になるのだろう。
「スーパー」とか「デパート」とか「釣具屋」とかではなく「新宿」。
私は眉間に皺を寄せつつ

 「一人で?」

と取り敢えず会話を続けることにした。

 「いや、彼女と。」

隣には奴の彼女。
やはり何の話かわからないまま。

 「ふーん。」

と気の無い返事をした。
すると

 「いや、どうだった?とか思わないわけ?」

と先に煙に巻くような言い方をしたくせにまるで私がボケをカマしたかの様に追従してきた。
私は仕方なく

 「それ、どうしたの?」

と返した。
すると不思議そうにしながら

 「どうした?って?」

と言ってきた。
なんだこのチグハグな会話は!!
そして彼女の方は何故か笑っている。
どうにも噛み合わない。
何を聞いて欲しいのかさっぱりわからない。

 「だから見てどうしたんだよ。」

と私が言うと
奴は訝しみながら

 「いや、良かったんだけど。」

と私の予測範囲にはない返答。
思わず

 「はぁ?万引きだろ?捕まえて突き出したんじゃないのかよ。」

と強めに言った。
正義は守らなければならない。
にも拘わらず奴は彼女と共に笑い始めた。
当然意味がわからない。
すると

 「違うよ。万引き家族だよ。」

万引きする家族を見てそれが良かったなんて言うとは益々理解できない。
私はそんな人間を友人に持った憶えはない!!

 「万引きしてる一家見つけて何が良かったんだよ!怒」

二人は爆笑。

もうお分かりですね。
二人は映画「万引き家族」の初日を観に行き感動。
これはオススメだ。と言うことで話題に挙げたにも拘わらず私が邦画をまるでチェックしない為オトボケ回答連発。
可笑しな会話になってしまったのだった。

思えば最初に
「万引き家族を見た」
と言っていたのかもしれない。
いや、それでも私はピンとはきていないだろう。
せめて
「『万引き家族』っていう映画を観てきた。」
と言ってくれたら・・・

もはや後の祭りだ。
奴らは暫く笑い続けた。


私はこの手のエピソードに事欠かないらしい。
シアタークリエとテアトル銀座(懐かしい)を間違えてたり。
SUICAとクレジットカードを間違えてタッチしたり。
地方のホテルで本館と別館を間違えてたり。

先日も藤倉梓様が演出する作品
「ながめせしまに茶の湯でも」

「流れ作業でこんにちは」
だと本気で覚えていた。

挙句彼女のXにて晒される始末。(ほんとごめん)

そしてそれはここNYでも如何なく発揮されるのであった・・・

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