「ハブの原理」が作動するアジール空間では、「ハコの原理」で傷ついた心が癒される:ワールドアジールネットワークに流通する雑誌で世界を癒したい
フランスの思想家ミシェル・フーコーやアラン・バディウは、アジールを社会の支配構造から逃れるための空間や、支配的な権力から独立した行動が可能な場所として捉えました。この文脈では、アジールは単なる避難所ではなく、社会の中で自由や独立性を維持するための象徴的な空間と考えられます。
今から思えば、僕がZoomを使って作ってきたオンラインコミュニティは、アジール的な空間でした。リアルのしがらみから離れ、役職の仮面を外して個人として集まった多様な人たちが、日常では語れないことを語っていくと、多様な文脈が入り混じってきます。場に流れている言葉を再編集しながら、自分なりのナラティブを獲得することで、私たちは癒されていきました。僕にとって「ハブの原理」で運営していたZoomのコミュニティは、学びの場であると同時に癒しの場だったのです。
そこには、日常を「ハコの原理」で運営されている学校や会社で過ごしている人が、多数、集まってきました。ハコでは、単一の強い文脈が設定されているため、それに合致していない部分を表現しにくかったり、その文脈に沿った正しさに否定されたり、それを内面化して自己否定したり、と、傷つきを抱えがちなのです。ハコの中でサバイバルするために感度を下げて感じないようにしている人もいました。「ハコの原理」が強烈に作動すると、その中で生きている人間は、決められたとおりに動く機械の部品のようになってしまうのです。
人は、そういう時に、息を吹き返すための場所を求めます。「ハコの原理」が及ばない非日常空間。江戸時代の日本だったら、駆け込み寺がそのような場所でした。家父長制の政治的権力で統一されている家というハコの中で行き詰った女性が、神仏の宗教的権力によって作られた立ち入り禁止の聖域に駆け込み、そこで一定期間、生活をすることで息を吹き返して、新しい人生を再出発したのです。
Zoomのオンラインコミュニティは、現代の駆け込み寺のようなものでした。自分自身を取り戻すためには、結界の貼られた非日常空間で、ハコの中では抑圧されている語りを取り戻していく必要があったのです。そこでは、相互エンパワメントが起こり、新しいナラティブが次々と立ち上がっていました。「フォアグラ型教育」という言葉も、そのような空間から生まれたナラティブでした。
2022年にマレーシアのペナン島から日本に帰国してからも、ペナン島で残務処理があって、何度も行くことになりました。せっかく行くのだからと思って、友人たちに声をかけてペナン・ラーニングジャーニーを実施しました。ペナン島は、マレー系が政権を取っているマレーシアにあって、中国系が多数派を占める場所です。東インド会社の港があった場所ということもあり、世界に開いている、とてもオープンな土地で、島全体がアジール的な雰囲気を持っています。僕は、この島で10年過ごし、日本というハコから抜け出して、自分を取り戻すことができたと感じています。ペナン島に日本の友人たちを連れてきて対話したら、各自に癒しが起こるのではないかなと思ったのです。
実際にやってみると、子どもや若者に大きな変化が起こりました。ハコの中で息をひそめて生きていた部分があったのだと思います。合わせるべき標準が存在しない多様なアジール空間の中で、みるみる顔つきが変わっていきました。それは、周りで見ていてうれしくなるほどでした。もちろん、大人にも変化が起こりました。「ハブの原理」が作動するアジール空間では、癒しが起こるのだ、そして、その先に未来が出現するのだということを確信する経験でした。
ペナン島に来なくても、同様の効果が生まれるようにするにはどうしたらよいだろうか?
Zoomのオンラインコミュニティのようなアジール空間と、ペナン島のようなリアルなアジール空間とを、さらに融合させたようなアジールネットワークを作ることはできないか?
それが、ワールドアジールネットワークを作りたいと思ったきっかけです。これができれば、「ハコの原理」で抑圧された語りが、「ハブの原理」で息を吹き返していき、相互エンパワメントによって癒しが起こり、新しい未来を生み出すナラティブが生まれてくるのではないかと思ったのです。それを、一人ひとりのナラティブによって構成される多言語マガジンによって実現したいのです。
言語の壁を超えて、お互いに出会っていくための自己紹介になるような雑誌、それが、田原イコールです。田原イコールに原稿を書くということは、世界のアジールにいるまだ出会っていない仲間に対して手紙を書くような行為です。そこから、新しい繋がり、新しい物語、が、生まれてくることを期待しています。
まずは、マレーシアのペナン島、アメリカのデトロイト、韓国のソウル、日本各地のアジール的なハブに原稿を依頼していきますが、田原イコール創刊号をサンプルにして、さらに世界各地のハブへとネットワークを広げていきたいと思います。広げれば広げるほど、お互いに豊かになる共存共栄が、「ハブの原理」の特徴なのです。
お願い
皆さんにお願いがあります。田原イコールを2000部くらい刷って、世界各地のハブに行きわたらせていきたいのでサポートしてください。世界のハブをネットワーク化して雑誌を行きわたらせて、新しい動きを活性化させていきたいです。最初は、ペナン島、デトロイト、ソウル、日本各地から始めますが、これをプロトタイプとして世界各地に展開していきたいです。クラファンで集まった金額に応じて印刷する部数を決めます。2000部刷るには印刷代が100万円くらいかかります。現在クラウドファンディングを実施中で、締め切りが8月31日で、現在集まっているのが55万円くらいです。サポートとしてありがたいのは、以下の4つです。
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出版パーティーを、対面とオンラインで行いますので、ぜひ、お集まりください。出版パーティーの参加費も、クラファンのリターンに入れてあります。これからの11日間、一緒に疾走して出版パーティーで喜びを分かち合いましょう。
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