田原イコール物語17 自己組織化コミュニティの作り方
自分が今までやってきたこと、収入を得ていたことを手放すことは、過去の延長線上の未来を手放したということだ。過去を手放すと未来から引っ張られるようになってくる。
自分は、どのような未来へ引っ張られているのか?
そのとき、自分がずっとやってきたことは、「自己組織化」だなぁーと思った。自然の摂理によって何かがひとりでに形成されていくということ、自己組織化=self-organization にずっと惹かれてきたのだ。
粘菌の自己組織化の研究に始まり、反転授業の研究ではコミュニティの自己組織化に取り組んできた。
自分がここまで取り組んできたことを、一度、思い切ってアウトプットしてみようと思った。そのときまでは、他の人のコンテンツをプロデュースすることはやっていたが、自分のど真ん中のコンテンツを出していくということは、やったことがなかったのだ。
ちょうどそのころ、NPO法人セブンジェネレーションズが、GCI(Game Changer Intensive)という社会変革者のためのプログラムを始めていて、日本で第1回を行うところだった。それに参加してみて、社会変革のためのオンライン講座というものがあり得るのだと感動した。それなら、田原版GCIをやってみようと思った。そうしてスタートしたのが、「自己組織化コミュニティの作り方(0期)」だった。
当時、自己組織化という言葉は、まだまだマニアックな言葉だった。どんな人が集まってくるのか、想像もつかなかった。だから、コンテンツ作りは、「ど真ん中に直球を投げるような気持で作る」という以外なかった。自分の話すことのレベル感、難易度も、はじめてだったのでよく分かっていなかった。与贈工房の当時のメンバーだった杉岡さん、さわさん、てっちさん、中西さんが背中を押してくれて、暴走することができた。
10人くらい集まってくれたらうれしいなと思って募集を始めたら、110人が集まってきた。その多くは、それまで知らなかった人たちだった。講座案内には、意味不明なことがたくさん書いてあったが、参加者は、「直感的に面白そうだと思った」と、参加してくれた。彼らのおかげで、僕にとっての未来が出現した。「反転授業の研究」の友人たちも、運営ボランティアでサポートしてくれて、8週間にわたって対話し続ける日々がスタートした。
これは、講座でもなく、ワークショップでもなく、本当のカオスだった。
僕は、2週間ごとに20分の動画を4本ずつリリースしていった。参加者との対話にも入った。参加者のFacebookグループには大量のコメントのやりとりが生まれ、燃え上がって100を超えたスレッドもあった。参加者の一人が立ち上げたメッセンジャーグループには、毎日、滝のようにメッセージが流れていた。みんなが惜しげもなく、自分の知っていることを場に投げ込んでいた。どうやってこの状態が生まれているのか、よく分かっていなかったが、心を開いてそこにいることが、自分の役割だという確信が、謎に芽生えていた。
約100人で、共同創造の実感を共有した。こういう世界があることを知った。
どうしてこれが起こったのだろう?
自分は何をしていたんだろう?
新しい問いが生まれた。その問いを抱きながら、自己組織化コミュニティの作り方(1期)が始まった。0期の仲間と、新しく加わった1期のメンバーの温度差を自己組織化のエネルギーに活用するところが新しいチャレンジだった。1期も激しく燃え上がり、さまざまなドラマが展開した。
ここで出会った人たちと一緒に生きていきたいと思った。
オンラインで生態系のようなコミュニティを作って、そこで生きていきたいと思った。
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