生成AIの登場でルネッサンスが起こると考える3つの理由:トランスナショナルな知的相互受粉と多元的世界観の出現
生成AIを使って、今までにはリーチできなかった知にアクセスしながら、毎日、スパークしまくりの日々を送っています。1週間前とは別人だなぁーと、毎週つぶやいている感じ。自分の中身がすごい勢いで入れ替わり続けています。
ルネッサンスのときは、きっとこんな感じだったんじゃないかと思います。そもそも、ルネッサンスが始まるきっかけは、十字軍がイスラム世界を攻撃したら、アラビア語に翻訳されたギリシャ哲学の本を発見したことです。ヨーロッパでは失われていたプラトンやアリストテレスの文献が再発見されたことで、知的相互受粉が起こってスパークしたのです。
その後、グーデンベルグの活版印刷の技術が生まれ、「書籍」というものが流通するようになって、ルネッサンスによって生まれた新しい知が、「書籍」によって流通して、さらなる知的相互受粉が起こり、ついには、ニュートンが物理学を打ち立てて科学が誕生し、産業革命が起こって、近代国家の登場へとなだれ込んでいったわけです。
つまり、ルネッサンスが起こったきっかけは、ダイナミックな知的相互受粉にあったのです。
これからルネッサンスが起こると考える理由は、生成AIによって2つの壁が取り払われて、ダイナミックな知的相互受粉が起こり始めているからです。
1つ目の壁は、言語の壁です。
AI翻訳の精度が上昇し、背景文脈を踏まえたうえで翻訳することも可能になりました。これまでは手が届かなかった文献に手が届くようになりました。
2つ目の壁は、理解の壁です。
日本語で読めたからと言って、理解できるとは限りません。自分の持っている意味ネットワークと、書籍の著者が展開する意味ネットワークとが、有機的に結合する必要があります。このような理解プロセスを生成AIが強力にサポートしてくれるので、今までは理解困難だった文献が理解できるようになります。
ドイツ語で書かれたKojeveの本を読む
フランスで量子力学を学び、ドイツでヘーゲル哲学を学び、フランスで外交官になってEC(ヨーロッパ共同体)を提案したKojeveは、近代を超える自由意志と世界との新しい関係性を博士論文で論じました。そこが源流となって、デリダやドゥルーズなどのフランス現代思想が展開していったそうです。
Kojeveの博士論文が、昨年、Kojeve研究者によってドイツで出版されたということを知りました。Kindle化などもしていないので、紙の書籍をドイツから個人輸入で取り寄せました。これをスキャナで読み取って、OCRをかけてテキスト化し、ChatGPTにコピペして、日本語に翻訳してもらったり(言語の壁を超える)、クリティカルリーディングのための質問を作ってもらって考えながら読んだり(理解の壁を超える)、しているうちに、Kojeveの考えたことが、だんだんと分かってきました。生成AIによって2つの壁を超えることができたことで、今までなら絶対に手が届かなかった知に手が届き、それを手掛かりに自分自身が思考することができていることに感動しています。そして、ルネッサンスの時代に生きた人も、きっと同じような興奮を覚えていたのだろうと思いを巡らせています。
僕がやっているのと同じようなことを、世界中の人がやり始めていることでしょう。今まではあり得なかった知的相互受粉が、これから起こっていくでしょう。そこから生まれる新しい考えや実践も、言語の壁を超えて相互に伝わっていくはずです。このようにして、新しい時代が出現するのでしょう。
トランスナショナルなトランスローカルが本格的に始まっていく
社会のパラダイムシフトを表すモデルとしてTwo Loopsモデルというものが知られています。旧パラダイムの行き詰まりを感じた人たちが、新しい試行錯誤を始めて、その中でスパークが起こると、次の時代のプロトタイプを作るための実践コミュニティを作って社会実験を行います。私も、いくつかの実践コミュニティを作って社会実験を行ってきました。
その先のプロセスが、実践コミュニティ同士が相互に繋がるトランスローカルです。2014年にトランスローカルのことを知った私は、当時、マレーシアに住んでいて、オンライン中心の活動になっていたこともあり、
トランスローカルが起こるためには、遠隔のコミュニティ同士が繋がる必要がある。そこで使われるオンライン活用のメソッドを開発しよう
と考えて、Zoomを使った様々な実験を行いました。『Zoomオンライン革命!』は、それらの実験をまとめて本にしたものです。
このときには、超えることが難しかったのが、「言語の壁」です。同じ言語圏のローカルコミュニティ同士は、Zoomで繋ぐことができますが、言語圏を超えて実践コミュニティを繋ぐにはどうしたらよいだろうか?という問いが生まれました。
トランスナショナルなトランスローカルができたら、惑星規模の社会的パラダイムシフトが起こっていく
というイメージが生まれましたが、どうやったらよいかが、2014年当時は分からなかったのです。
10年後の2024年になって、生成AIが登場し、言語の壁や理解の壁を超えることが可能になったとき、ようやく、トランスナショナルなトランスローカルというテーマに取り組むことが可能になったと思いました。
田原イコールは、このテーマに向けた第一歩です。言語の壁を超えて、世界各地の実践コミュニティに原稿を依頼し、お互いに知り合うきっかけを作っていきます。ようやく、ここに具体的に取り組むことができるようになりました。
世界各地の実践コミュニティが、グローバリズムの方法論で画一的に統一されるのではなく、それぞれの独自性を持ちながら、多次元空間を張り巡らせていくように繋がるのがトランスナショナルの方法論。その他次元空間の中で、自由意志と世界とが相互に影響しあいながら歴史を紡いでいくという世界観をKojeveは描き出しています。その世界を体験を通して実感していくことが、これから起こっていくでしょう。ルネッサンスによって近代社会が生まれたように、新たなルネッサンスによって近代を超えた社会が生まれてくるはずです。その社会イメージを描き出している人たちに、直接触れながら考えたり、実践したりしていく中で、それが現実化していくでしょう。僕がルネッサンスが起こると考えている3つ目の理由が、そこにあります。
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