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学びにコペルニクス的転換が起こったら、「ポンプ」と出会った(その2)

「参加型社会宣言」のオンライン読書会の渦が、勢いよく回り始めました。

通常、オンライン読書会という言葉から想起されるイメージは、「Zoomに集まって本を読む」というようなものではないでしょうか?

私たちがやっているオンライン読書会は、それとは、全く異なるものです。

2012年から反転授業に関わってきて、チャットツールなどでのコメントのやり取りや動画の視聴などを通した非同期のコミュニケーションと、対面やZoomなどを使ってリアルタイムでやり取りする同期のコミュニケーションとを、どのように組み合わせたら最適かということを考えてきました。

最初は、授業という同期コミュニケーションを主役において、それをサポートするために、事前課題として非同期コミュニケーションを活用するという発想でした。

「授業やワークのために、事前に動画を見てきてください」というのが、まさに、その発想です。

しかし、ある時点で、同期と非同期の主従関係がひっくり返りました。学びの場創りのコペルニクス的転換が起こったのです。

学習者を主役にすることを突き詰めていくと、マイペースで学んだり、学習者同士でやり取りしたりする非同期の時間が主役になり、それを充実させるために、同期の時間で交流したり、振り返りをしたりするのが自然だということに気づいたのです。

この主従反転は、学びやイベントの設計思想を根本から転換し、全く新しい地平を開きました。

また、この主従反転した学びやイベントを舵取りするデジタルファシリテーターという新しい概念が生まれました。

今回の「参加型社会宣言」のオンライン読書会も、同期と非同期との主従斑点が起こったパラダイムの中で運営されています。

デジタルファシリテーション

実は、このような、非同期コミュニケーションを主役にして、同期コミュニケ―ションによって支える場の作り方は、橘川さんが、1970年代に投稿雑誌「ポンプ」という参加型メディア(非同期)が媒介となって、読者同士で行われるオフ会(同期)が行われていた構造と類似しています。そのときの構造が、デジタルテクノロジーによって生まれ変わっているのです。

「ポンプ」については、こちらの動画をご覧ください。

デジタル技術の発達によって生まれた反転授業を突き詰めていった田原がたどり着いた世界観が、参加型社会一筋の橘川さんが立ち上げた投稿雑誌「ポンプ」の世界観とコロナの渦の中で合流し、化学反応を起こして、今回の読書会が立ち上がっています。

オープンスペースにおける活動と編集との対話的運動

読書会への参加者は、約170名。

「同期」の思考に捉われている方は、「170人で集まって読書会をやる」というイメージを思い浮かべるのではないでしょうか?

私たちは、1カ月以上にわたって非同期コミュニケーションを主役にして読書会を行うために、効果的に同期コミュニケーションを活用するという発想で、読書会をデザインしています。

デジタルファシリテーション3


7/22に行ったキックオフには、約50名が参加しました。

最初の30分は、読書会の発起人の田原の想いの共有と、読書会のコンセプトや、進め方の説明、そして、サプライズで橘川さんに登場していただき、10分ほど話していただきました。

この30分間の説明会は「キックオフ動画」として録画し、当日参加していない人や、後から参加する人が視聴することを意図して行いました。非同期コミュニケーションを支えるための前提の共有を、同期&非同期で行ったということです。

その後の1時間で、「未来フェス形式の読書会」を行いました。未来フェスというのは、橘川さんが考え出したやり方で、一人ずつ決められた時間内で意見を言っていくというものです。これは、投稿雑誌の考え方を同期コミュニケーションの中でやっているものだと僕は理解しています。

一人5分ずつ「本を読んで心に残ったこと」を語っていき、全員が語り終わってから対話するというやり方で読書会を進めていきました。6人以下になるようにグループを分け、各グループの対話を録画し、Youtubeに限定公開で共有しました。

Zoomの強みは、グループに分けられることと、簡単に録画できることです。お互いに誘い合って集まって、「5分ずつ心に残ったことを話し、対話する」という読書会を開き、録画をグループに共有するという活動を、1カ月程度続けていくと、様々な繋がりが生まれ、ドラマが展開していきます。

録画を見た人たちがコメントすることで、さらに話が展開していきます。

場の運営者は、非同期のコミュニケーションが活性化し、さらに、活動から生まれた視点を取り出して、いくつかの分科会を立ち上げていきます。

それは、「ポンプ」における編集者の役割であり、オンラインコミュニティにおけるファシリテーターの役割です。

活動を反映した分科会などのフレームが生まれることで、それがきっかけになって活動が生まれ、さらに活動を反映したフレームが生まれる・・といった、オープンスペースにおける活動と編集者(または、ファシリテーター)との対話的な運動によって、個人と場とが共振しながらうねりを生み出していきます。

これが、橘川さんが体験してきた「参加型社会」のダイナミクスであり、僕が体験してきた「自己組織化」のダイナミクスです。

今回、いっしょにやることで、「そこに行くんだ!」「このタイミングで動くんだ!」など、自分が普段やっている動き方とは違うところがあり、それが、新鮮な学びや気づきをもたらしています。同時に、Zoomの様々な活用法が、橘川さんにアイディアを生み出すきっかけを与えているのではないかと思います。

40年の時を超えて、「ポンプ」のコンセプトが、現在の文脈と新しいテクノロジーの中で蘇りつつあります。

ここに、アフターコロナの時代の先駆けとなるホットスポットが生まれつつあります。

新しい社会を生み出したいという切実な願いを持っているみなさん、繋がりましょう!

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