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「ナッツ/レンジアドバンテージ」のその先へ

お久しぶりです。Masatonです。
先日「黙れWizard」と投稿したところWizard様からDMをいただき、
なぜかWizardの公認パートナーとなりました。
長いものには巻かれるスタイルです。懐の深いWizard Japan様には頭が上がりません。

昨今のポーカー界を取り巻くリーガルリスクの上昇で僕のNoteも大半を公開停止しました。
とはいえせっかくParterをいただいたのですから少しは爪痕を残したいわけです。

いつもはふざけてますが今回は真面目Noteです。長いです。
お時間がある人はぜひどうぞ。

「ナッツ/レンジアドバンテージ」でこのゲームを捉えるということ

実際これらの話はよくよく耳にするし、少し前の僕自体もこの「ナッツ/レンジアドバンテージ」でこのゲームのアクションを決定していた時期がある。
当然これらを否定するわけではなく、必ずしも間違っているというつもりはない。
ただし、このゲームをもっともっと楽しく、そして対人戦であることの「おもしろさ」を拡張していく意味で、「ナッツ/レンジアドバンテージ」で考えるその先に「あぁこんな考え方もあるのか。」とコーヒーでも飲みながら読んでいただければ幸いだ。

まず、少し前のポーカーと異なり、現代のポーカー環境は良くも悪くもソルバーが台頭し、ある意味「答え」のようなものが目の前に落ちている。
自身でソルバーを回すことがなくとも、願えば誰かしらが力を貸してくれるし、GTOwizardなどは視覚的にも優位で誰にとっても使いやすい。

これはもちろん喜ばしいことだし、もし「強くなりたい」と思ったときには誰にだってなんとなくの学習ルートが見える。
そう、「GTOを完全再現すればいい」と思うことだ。
これについての良し悪しはここでは話さない。願うものによっては良し悪しは変わり得る。

さて主題となるのが、もしこの「GTOを完全再現(模倣)しよう」となったときにこれらとどう接していくか?ということである。

ソルバーというものは、果てしない回数の計算の果てに「これだ!!」という結果のみを私たちに示してくる。
そこに「なぜ」「どうして」といったものはない。
親や、学校の先生、バイト先の先輩、会社の上司とは違う。
まぁそういう人たちもいるかもしれないが、ことソルバーにおいては当然に聞いても答えてくれないわけで、俺の仕事は見て覚えろという昔気質の職人タイプなのだ。

そういったなかで、私たちは一つの「汎用性のある答えのようなもの」を導き出している。
それが「ナッツアドバンテージ」と「レンジアドバンテージ」である。

気を付けなければいけないこととして、これらはGTOを模倣するために僕ら人間が「たぶんそうなんじゃないか?」と思い、「これを使えば再現率が高く保てるぞ!!」と思っているだけなのかもしれないということである。

現状僕はソルバーが最終的な結果をだすまでにどういう経緯を得てそうなっているのかを全部把握することはできていない。きっと出来る人は多くないと思う。それができる人が居たらそれはもう人外なのでできれば違う星でポーカーを打ってほしい。

だから「ナッツ/レンジアドバンテージ」で考えて、ソルバーの結果を再現しようとすることが間違いだとは思わない。
理想は自分の中にPCと同程度以上の計算性能を持つまたは、表示された結果を写真のように暗記して引き出すことだが、そんな人間離れしたことはほぼすべての人間にはできないし、できないならいま出来ることをしようとする姿勢が大切だと思う。

だからソルバーを模倣するにあたって実際に「ナッツ/レンジアドバンテージ」は実際にとっかかりやすく優秀だ。
ただなんとなく、「あれ?これ本当にそうか?」「なんとなく再現性が上がらんぞ?」と少し物足りなく思っている人が居ればこれから僕が書くことが少しは参考になるかもしれない。

「ナッツ/レンジアドバンテージ」で言語化してみる

実際に1つのシーンを「ナッツ/レンジアドバンテージ」で言語化し、ソルバーが示すものにどれだけ近づけるか考えてみよう

BTN vs BBDF  AK2r

誰かが誰かに「ナッツ/レンジアドバンテージ」を話すときに出てくるボードNo.1と言っても過言ではない「AK2r(レインボー)」ボードを用意した。
ポジションは自分がBTNで相手がBBディフェンスをしたケースとする。

よく聞くのが、これはBTNが圧倒的に有利だから「ナッツアドバンテージ」も「レンジアドバンテージ」も保有していて、だから大きいサイズを使うんだ!という話である。

左:BB 右:BTN

実際にBTN側は「EV」も「Equity(EQ)」も「EQR」もBBを大きく上回っている。簡単に言えば超有利だ。超有利なんだから「レンジアドバンテージ」があるということはお分かりいただけるだろう。

EQB(EQ Buckets) 左:BB 右:BTN

全体的に見てBTNが有利なのは簡単に理解してもらえるとして、ではナッツ部分はどうなっているのか?という話においては、この「EQB」を確認する必要がある。お互いのハンドの強さがどの程度の位置にいるかということを示している。

EQは勝率のことだがこの後にお互い一切のアクションが起きなかった場合の勝率であることに注意したい。お互いのアクションが相手を削っていき、楽になったり苦しくなったりもする。それを示しているのが「EQR(リアライゼーション)」だったり「EV(期待値)」だったりするのだが、このEQBで表されているのは単なる勝率であるEQとなる

さて「ナッツアドバンテージ」というのはこれの上の方を見たときにどっちが勝っているか?で有る無しが決まっている。

ナッツアドバンテージを語るなら最低でもこのEQ70+の部分で、上2行の80-90と90-100の2つと思っておけばより間違いはないだろう。これらの部分のBTNとBBの「%」の差に着目したい。
すごい差がついていることが見て取れると思う。実際のハンドとして見ると以下のとおりである

EQ80-100

BB側はプリフロップでAA,KK,AK,AQを3Betしてしまっている為に、それらをまったくもっておらず、一番強いハンドは「22」のセットとなっている。
しかしそれすらBTN側もプリフロップでピュアオープンしているわけで、一方的にBTNが最強ハンド群を持っているということが分かっていただけると思う。

これらの情報を精査して、この場面では「ナッツアドバンテージ」も「レンジアドバンテージ」もあるから超有利!高く打て!!
となっているということだろう。

確かに言っていることはそれなりに良く聞こえるし、必ずしも間違っているとは思わない。ただなんとなく少しの物足りなさを感じる。
この戦略はどちらかと言えばまだまだ独りよがりの戦略なのだ。
もちろん相手のレンジを全く考えていないわけではない。
実際に相手にAA,KK,AK,AQなどが無いことからこれらの戦略は発進しているわけで、対人戦としての最低限のキャッチボールは行われている。

でももう一歩踏み込んだらもっとおもしろいよ!それが今回のNoteの趣旨となる。

さて1つ目のケースは「ナッツ/レンジアドバンテージ」があるから超有利!高く打て!のケースだったが、本題に行く前にもう一つだけ言語化しておきたい。
「レンジアドバンテージあるからレンジベット」のケースである

BTN vs BBDF  AA6r

このケースではBTN側はほぼすべてのレンジで33%をベットしている。俗にいうレンジベットというやつだ。
ここまで露骨な戦略だと、ただこのボードはただ単に「全部33%打ったらいい」という表示された結果を写真のように捉えて再現するという方法で解決してしまうレベルなのだが、それでも言語化するとすれば、こういうったものになるだろう

「レンジが有利だからレンジ全体を使って相手に圧をかける」

こうなるのではないだろうか?
これは俗にいう「レンジアドバンテージ」を活用したケースとなる。

左:BB 右:BTN

実際に「EV」「EQ」「EQR」とBTNに有利に働いている。

EQB

これに「ナッツアドバンテージ」があれば一つ目の例と同様にきっとオーバーベットを打ち出していたのかもしれないが、こちらのケースでは「ナッツアドバンテージはない」と判断されたのかなんなのか、「チェックorオーバーベット」の戦略ではなく、「全レンジ33%ベット」という戦略が採用されている。

この2つのケースのように、「ナッツアドバンテージ」「レンジアドバンテージ」の有無の組み合わせで戦略を決定していっているのではないか?ということが現状広く認知されているように思う。

これらを活用することで、あり得ないほど大きいミスをすることは実際なくなると思うし、ただ単に表示された結果を眺めるよりも有意義な学習の時間となり、実際のプレイにも活用しやすい。
なによりも誰にとっても素直にスッと落ちてきやすい解釈で納得できる。

だから入り口はここでいい。ここまでの内容で「なるほどな」と少しでも思った人は遠回りではないのでぜひこの部分をまず時間をかけて考えてみてほしい。なんでこうなってるんだろう?という疑問から、その裏側をみることはこのゲームにとって有意義で、次回同じミスを減らしたり、再現性を今よりも高くすることができるかもしれない。

ただこれらの部分が、「うんうんわかるよ」と思えた人はぜひその先の一歩を一緒に目指していきたい。
この「ナッツ/レンジアドバンテージ」を活用した考え方は、キャッチボールで言えば1往復目で、実はもう一歩踏み込める。
この次の一歩がこのポーカーというゲームをとてつもなく面白いものにすると僕は考えている。対人戦であることのうまみをもっとみなさんに知ってもらいたい。

「ナッツ/レンジアドバンテージ」のその先へ

さてここからが本題となる。
もう一歩踏み込んだ対人戦としてポーカーを捉えるためには、
「ナッツ/レンジアドバンテージ」を足掛かりにしたうえで
「相手のターゲット帯」を重視するということである。

この「相手のターゲット帯」とは何を指すのかをまず確認したい。
このターゲット帯はEQBにおけるボリューム帯とも読み換えられる。

余りにもターゲットが少なすぎるとそれこそ独りよがりの戦略になってしまうので、相手のレンジの中でそこそこのボリュームを持つような部分をターゲットにして、そこが苦しくなるようなサイズを選択していくことが、「ナッツ/レンジアドバンテージのその先」と僕は考えている。

自身のハンドたちのことから戦略を決定するのではなく、どちらかといえば「相手がどうだからこっちは○○する」といったような、どちらかと言えば相手ファーストにこちらの戦略を考えるとも言える。

もちろん最低限打てる状況なのかを考える入り口として「ナッツ/レンジアドバンテージ」を考えることは必要だ。
ただ単に相手のことだけを考えて何らかの戦略を決定してしまうと、
「ナッツアドバンテージ」も「レンジアドバンテージ」もまったくなく、
本来はチェックしないといけなかったようなケースですらベットを開始してしまうようなことがあるかもしれない。
そういうことは当然に避けねばならない。

だから今まで考えてきたことは無駄になっているわけではなく、それらを土台にしてその先にあるものとして考えてほしい

相手ファーストで戦略を決定する

相手ファーストで戦略を決定するとは、狙いを定めた相手のターゲットレンジに、必要なだけのサイズで打とうとし、それが達成されるためのレンジを構成することである。

前半とは異なる視点から、同じボードの「AK2r」を見ていく。

BTN vs BB AK2r 

まず上段の「EV」「EQ」「EQR」からBTN側にレンジアドバンテージがあることは理解できるかと思う。
そしてEQBの80-100を参照し、ナッツアドバンテージも保有しているとする。

これで「じゃぁ大きいサイズ打ちましょう」と従来ではなっていたわけだが、いま私たちはここにもう一歩踏み込もうとしているわけである。

この時にまず考えるのは相手のボリュームサイズがどこにあるかである。

Wizardは本当に素晴らしく、このように視覚的にも分かりやすい。
赤枠は僕が編集で囲んだものだが、仮に赤枠がなくてもここまで分かりやすければ誰にだってわかる。

赤線で囲われている3つのEQ帯を確認しよう

①EQ60-70(14.1%)
②EQ25-50(40.3%)
③EQ0-25(23.4%)

これらがBBのボリュームサイズで、これらのどれかを苦しくするように私たちのベットサイズは決定されている。そしてこれらのどれかというのは必ずしも一つではなく、一つ以上となることに注意したい。
これらの複数をターゲットとしてサイズなどのアクションが決定される場合もある。

では実際にWizardが行っている「チェックorオーバーベット」という戦略がなにをターゲットにして実行されているかを確認していきたい。

①EQ60-70(14.1%)
②EQ25-50(40.3%)
③EQ0-25(23.4%)

ターゲットと思われる①②③の主なハンドたちである。
実際にBTNが130%サイズのオーバーベットをしたときに、これらのハンドたちがどうなっているのかを見ていくことでターゲットの感覚をより強く持てるはずだ。

BTN130%ベット後 EQ0-50

BTNのベット後ではEQが変動してしまっているため、ワンクリックでまったく同じ図を出すことはできないが、②③の低EQだったハンドたちは確定フォールドか、軒並み厳しい状況に追い込まれている。

①EQ60-70(14.1%)

そしてターゲットの中で一番価値の高かったKヒットたちですら簡単にはコールできない状況に追い込まれている。

なのでBTNの130%サイズのベットは
②③の低EQ帯を巻き込みながら①のEQ60-70(14.1%)をターゲットにしているといえる。

「レンジ/ナッツアドバンテージ」を主軸に考える戦略構築では、
こちらが有利だから大きいサイズを使い、結果的に①も結構降りるんだなということにとどまってしまうが、一歩踏み込んだ相手ファーストな戦略構築の目線で考えると、いくつかあるターゲットの中で今回は①をターゲットにするために①を厳しい状況に追い込むために必要サイズである130%を使用していることがわかる。なぜなら他のサイズでは①を追い込むことができないからだ。(次章検証

ソルバーの裏側に思いを馳せる

ソルバーは一定の法則に従いながらも、私たち人間から見たら無限にも思える数の戦略を対戦相手にぶつけて、その応酬の中で一番優れているであろう戦略を最終結果として私たちに提示してくれる。

言い換えれば微差で負けた2番手3番手の戦略が裏側に隠れている。
もちろん優秀と判断された1番手の戦略が一番良いことは明白なのだが、
これらの裏側に埋もれてしまった戦略について考えることは、私たち人間がポーカーというゲームをプレイする上で重要なのではないかと私は考える。

裏側に隠れてしまった戦略というのは残念ながら1番手になんらかの理由で負けている。
だから私たちが学習に時間を使ううえで一番手の戦略を模倣しようと考えるのは自然だし、これらをきっと否定することはできないだろう。

ただそれでも僕は2つの意味を持って裏側の戦略に目を向けることが、遠回りになるかもしれないがそれでも私たち人間にとっては必要なことなのだと考えている。その理由は以下の通りである。

①表示される戦略が、「自分が」実践する上で再現性に優れているかどうかは分からない

②裏側の戦略を想像することで、少しだけソルバーに近づくことができる

この2つである。

①については、例えどんなに表示された戦略が優れていたとしても、それはあくまで最大値であって、完全再現できて初めてそれらが担保されるということ

そして②はただ模倣するよりも、なぜそうなっているのか?それらを真に理解するこはできなくてもその一端に触れることでそれらは私たちの再現性を上げ、そして仮にエクスプロイトに移行する場合においても、「どうズラしていくか」の指針となるからである。

難しい言葉を羅列してしまったが、「AK2r」の裏側を実際に見てみよう。
みんなの理解が少しだけ深まるかもしれない。

「戦略決定」の裏側に迫る

BTN vs BBDF  AK2r

され何度も引用してきた「AK2r」だが、BBのKxまでターゲットにして「チェックor130%」サイズを選択した戦略が1番手を取り、当然にそれ以下のハンドを巻き込むことで期待できる成績が優秀な戦略であったことは理解していただけると思う。

ただし僕の主張というかこうなんじゃないか?という説では、①だけでなく②や③をメインターゲットにした戦略だって出来るはずである。

それらを巻き込んだ「チェックor130%」に飲まれてしまうのは確かに致し方無い気もするが、②と③をターゲットにして①に簡単にコールされてしまうのは仕方ないと「理解」したうえでベットサイズを下げる選択だって存在していいはずなのだ。

検証はWizard AIを使用し以下の条件で行う

①EQ60-70(14.1%) ←「チェックor 130%」
②EQ25-50(40.3%) ←「チェックor 66%」
③EQ0-25(23.4%) ←「チェックor 33%」

これらを行って正しく①②③を苦しい状態に追い込めていて、かつEVに大きく差が無ければ必ずしもソルバーが提示する「チェックor 130%」でなくともこちらは一定の意図を持ち、そして相手のターゲット帯を厳しい状況に追い込めているといえるだろう


「チェックor 131%」 EV3.19
BB側①のアクション

当然のことながら「チェックor 130%」戦略ではターゲットとされている①を厳しい状況に追い込めている。EVは3.19

「チェックor 65%」 EV3.15
BB側②のアクション

「チェックor 66%」では①のKxを最初からターゲットとは見込んでいない。コールされることを当然としながらQxやポケットなどをターゲットにしてベットしている。実際にこれらが苦しい状況に置かれていることがお分かりいただけるだろうか?
この時にポケットがフォールドし、2のヒット系がコールしているのはポケットの進展は、ターンリバーでセットを引く2アウツしかないが、ヒット系は、縦引きの2アウツとキッカーを当てる3アウツがあり、俗にいう5ドローで進展性がポケットよりも高いからである。合わせて言えば相手のナッツ級の完成率を下げる意味合いもあるのだがここでは本筋ではないのでこの程度にしておこう。EVは3.15 

「チェックor 33%」 EV3.12
BB側③のアクション

「チェックor 33%」では当然にKxを降ろす気なんて当然ないし、ヒット系が降りないことも分かってベットしている。ターゲットにしているのはノーヒットなどのハイカードやトラッシュハンドなのだ。
ただこのトラッシュハンドにもEQは残存していて、もしかしたら私たちの中途半端に強かったり弱かったりするハンドがターンリバーでまくられてしまうかもしれない。

BB EQ

Q9sのようなハンドのEQはなんと「32.6」もあるのだ。
ただ黙ってリバー、そしてショーダウンまで見ているだけだったら3回に1回はポットを持っていかれてしまう。
相手のトラッシュハンドを効率的に速やかに排除することを目的にしている。 EVは3.12

①EQ60-70(14.1%) ←「チェックor 130%」 EV3.19
②EQ25-50(40.3%) ←「チェックor 66%」 EV3.15
③EQ0-25(23.4%) ←「チェックor 33%」 EV3.12

さてこの検証を少しまとめよう。
当然に「チェックor 130%」が優秀である。ソルバーは一番優秀な戦略を表示するのだから当たり前だ。
ただここで考えたいのは、「チェックor 130%」とそのほか2つの戦略にとてつもなくどうしようもないほどの差がないということと、それぞれのターゲット帯に対応したサイズがあるのではないか?ということである。

「ナッツ・レンジアドバンテージ」の推定で、そのどちらもがある場合はどこまでやっていいかということをざっくりと推定し、その先に相手のターゲット帯をイメージする。
そしてどこをターゲットにするかを決め、その部分が厳しくなるようにこちらは必要なレンジを組み攻撃を仕掛けているのだ。

ではナッツアドバンテージの有無が分からないがレンジアドバンテージがあると言える場合はどうだろうか?
先に例題として出した「AA6r」を同じように検証してみよう。

「チェックor 33%」 EV3.22
BB(EQ0-25) vs 33%bet 
EQB

上のEQBを見てほしい。「AA6r」というボードではBBはかなり厳しく、レンジの大半がEQ50以下になってしまうことが分かるだろうか?
(EQ0-25の17.8%、EQ25-50の52.1%を足すとなんと70%近くとなる。)
これらを効率的に攻撃するために私たちが使うサイズは33%で「イナフ(充分」なのだ。

ただこれだって違うターゲット帯を持つことができると思う。
BBのEQ50-60だって13.7%ある。当然にトラッシュの70%を巻き込みながらEQ50-60をターゲットにしていくケースも見てみよう。
最低条件として50-60帯が厳しくなるような「状態」でなくてはいけない。
こちらはEQ60%+のシェアもある程度取れている。その条件は満たす。
これだってきっと裏側に隠れている戦略なはずだ。

vs 33%bet に対してのEQ50-60帯

ここを降ろすイメージを持ちながらサイズ調整をしていくとしよう。

「チェックor 66%」 EV 3.19
BB vs 66%への反応

残念ながら66%サイズではターゲット帯を完全に苦しくすることはできなかった。しかしながら一部のハンドにフォールドが生まれ始めていることがわかるだろうか?

「チェックor 100%」 EV 3.17
BB vs 100%への反応

66%サイズではターゲット帯を厳しい状況に追い込めなかったため、サイズアップして「チェックor 100%」とした。
サイズアップすることでなんとかターゲット帯を厳しい状況に追い込めるようになったがEVは下落していてコストがかかる戦略ということがわかる。
「チェックor 33%」の戦略はコスパ良く相手を苦しめられる。

まとめ

私たちがなんらかベットサイズを決定していくうえで、自手の「ナッツ・レンジアドバンテージ」を考えることはもちろん重要だが、
その先に相手のターゲット帯とそれに対応したサイズを重要視することで
今までよりも「相手ファースト」な戦略構築を行うことができる。それらはきっと私たちのポーカーをより進めてくれることに違いない。

実践的な「ヒューリスティクス(気づき」として最後にこれを提示しよう。

まずWizardやPioで表示された「最大のベットサイズ」と「メインサイズ」を確認してほしい。

「最大のベットサイズ」が大きいものはたいていの場合は「ナッツアドバンテージがある」と判断してよい。その際は概ね最大サイズがターゲットにしているサイズ以下にもターゲットが存在するので必ずしもそのサイズでなくとも戦略構築ができる。

このケースの場合は裏側を特に確認したい。
どこかをターゲットにしているからそのサイズなのだ。
本当にそのサイズをターゲットにできるのかを見ることがこの先大切になっていく。

もしターゲットを変更しサイズを下げる場合、多少のEVを犠牲にすることはやむを得ないが、なによりも正しく再現することが大切なので他のボードや全体戦略とうまく連携を取りながら全体的なEVを向上させたりおさまりをよくするといった人間的な対応も可能である。ぜひそう言った視点を持ってほしい。

逆にWizardやPioで最大サイズが上がり切っていないケースでは「サイズを上げることにコストがかかる」と考えてほしい。
ソルバー解で最大サイズが高いものを高いサイズで打っていくことはうまみがある。いままで大きいサイズがなかなか使えなかったプレイヤーが今後大きいサイズを使っていこうとする努力は最大EVへ近づいていき、そしてそれにはきっちりとEVがついてくる。

しかしWizardやPioの「メインサイズ」が小さく、比較的広くベットしているケースは相手のトラッシュが多く、それらを効率良く落とすことが最大EVなのだ。小さいサイズでいいよーと言ってくれているケースを無理に高くしていくことはリスクのある行為だ。
ほとんどの場合これらが最終的な結果として表示されている場合サイズを上げる=EVが上がるというわけではないので、コスパ良く安定したEVを奪取できると考えるとどめる程度でよいと思う。

今回のNoteはすべて「均衡視点」で執筆している。
もちろんこれで終わりではない。「ナッツ・レンジアドバンテージ」という入り口を通過した最初の一歩でしかないのだ。

「搾取的な視野」でさらにもう一歩を踏み出すことだって、
「均衡視点」を深めていく一歩だってあるはずだ。

おわりに

あまり真面目なNoteを書く機会は滅多になくなりましたが、Wizard Partnerとなるにあたって少しぐらいは真面目なものを残したいなと執筆しました。
長文となりましたが読んでいただいてありがとうございます。
少しでも学びのある内容となれていれば幸いです。

そしてその機会をいただきましたWizard Japan様ありがとうございます。

またこれらは私個人の座学の結果ではなく一緒に戦ってきた仲間たちの知見や協力も含まれると考えています。いつもありがとうございます。

今後ともよろしくおねがいします。

                                                                                                              Masaton

感想を「引用リツイート」してくださる方へ

まとめに書いたようにこの内容は均衡的な理解にとどまりこの先には搾取的な一歩があります。
希望制ではありますが、感想を「引用リツイート」してくださった方から2名程度にこのNoteのさらに一歩先をコーチングさせてもらえればと思います。1週間後を目途に抽選しこちらからご連絡します。



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