戦友とは"翼"を授けてくれる人たち
29歳になった。自分が20代最後の1年を迎える、というかあと1年で30歳になることを未だ信じられずにいるけれど、数字だけは順調に積み重なっていく。
誕生日を迎えた今週、2つの朝ドラを見終えた。一つは今期の『虎に翼』。もう一つは3年前に放送された『おかえりモネ』。感想はSNSに洪水を起こすほど流したので割愛するが、どちらの作品も20代最後の1年を迎えた自分にとって今後の羅針盤となり得る物語だった。
人生はドラマではない。劇的な展開があるわけでも、岡田将生も坂口健太郎も目の前には現れない。しかし、ドラマに自分の人生を重ね合わせてしまう瞬間は存在する。
『虎に翼』は、法とは何かという視点から。『おかえりモネ』は、震災と地域という視点から。それぞれが「どんな生き方をしてもあなたはあなた。そこにいてくれるだけでいいんだよ。そして、どこに行ってもいい。あなたは何にでもなれるよ」というメッセージを、あらゆる人物が直面し、見つめる"地獄"を映し出すとともに、丁寧に描いた。
どちらの作品も共通していたのは、どんな生き方をしていても登場人物たちが交わる点だ。『虎に翼』であれば明律大学の卒業生、『おかえりモネ』であれば気仙沼の幼馴染たち。
彼らを観ていると、自分が頑張りたいと思える理由やどんなにしんどくても生きていたいと思える理由はそんな友達が自分の周囲にはいるからだと思い出させてくれる。
自分にとっては、高校生から大学生の頃にかけて震災復興や東北の沿岸部での活動をしていた同世代かもしれない。描写としては、リアルに気仙沼や南三陸、石巻の友人、東京から支援の活動をしていた友人が多いので『おかえりモネ』の方が近いかもしれない。
一方で、その人たちと密接に話していた頃は、この社会に対する課題意識やおかしいと感じる疑問をいろんな場面で共有し合っていたので『虎に翼』に通ずる部分もある。
大人になって、震災からの年数も重ねた。いる場所もバラバラになった。自分のように東京にいる人、地元に戻って仕事をしている人。学生の頃からやりたかったことを形にしている人、遠回りしている人。結婚した人、子供が生まれた人、独身の人。自分たちも20代ラスト、ちょっと年上だった人たちはとうに30代。本当にいろんな生き方。
何にもできていないと感じる自分は、東京でバリバリ頑張っている友人を見て遠く感じたり、地元で生業をつくる友人を見てどこか焦ったりする。自分だって着実に積み重ねているものはあるはずなのに。本当にこの先交わるのかな、なんてちょっと不安になったりもする。
それでもたまに会ったりする10年以上の友人と会話していると、やっぱり交わる人はいるのだと実感できる。
『虎に翼』で言えば、日本で初めての女性弁護士になった寅子はそれゆえに孤独であったが、時を経て学生時代の友人たちと交わる場面がある。『おかえりモネ』では、東京や仙台に出た人たち、地元に残った人たち、それぞれの孤独や選んだ現在への葛藤を描く。しかし、それでも交わり、ときにぶつかりながらどの選択をとったとしてもつながり続け、翼を授けてくれることを示している。
翼を授けてくれる人たち。そういう人を「戦友」と呼ぶのかもしれない。
そんな友人たちと会ったとき「また会えてよかった」と思えるように。2つのドラマを観終えて、29歳がはじまった。