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小海の大魚、大海の小魚 ~ SuperReturn Internationalという大海にて ~

お久しぶりです。Partners Fundの中村です。今日はベルリン出張、特にその際に参加したSuperReturn Internationalカンファレンスにて得てきた学びを記事にまとめました!

タイトルの「小海の大魚、大海の小魚」とはカンファレンス主催者の一人が、様々なファンドGP・LP達がひしめく国際的なカンファレンスの中で四苦八苦する私たちの姿を見て放った言葉です。それは決して私たちをそしる意味ではなく、小さな海の大魚を目指すのでなく、小魚と見られてでもこの場に出向いたことの意義を訴え、諦めてはいけないぞ、と我々を励ます言葉でした。

(そもそも我々がどこかの小さい海の大魚である訳でもないですし(笑)、別に小さい海の大魚が悪いとも思っているわけでもないですけれど。)

それでも今回の記事は、世界規模からすれば極小な魚に見られたとしても、大きな海を目指し続けたいと我々のように夢見る仲間たちがいると思い、少しそんな仲間たちのヒントになればと思い、書いてみました。

SuperReturnとは

SuperReturnとは、年数回世界各国で行われるPE及びVCファンドのGP達とファンドに出資するLP達の集まるカンファレンスです。ここ東京でも毎年末のシーズンに開催されています。世界各国のGP達はこういったカンファレンスも使いながら新規出資元LPを募ったり、既存LP達とのアップデート会議を実施したりしています。

その中でも、今回ベルリンで開催されたカンファレンスは最大級のもので、参加者総数は5,000人近く、そのうちファンド所属の参加者が2000人以上、LP所属の参加者が1,300人以上でした。

参加するファンドGPは多種多様で、世界各国のバイアウトファンド、プライベートクレジットファンド、ベンチャーキャピタルなどが参加していました(比率的にはバイアウトファンドが多めという印象)。

LP側は、政府系ファンド、企業年金ファンド、大学基金、ファミリーオフィスなど、こちらもバラエティーに富むメンバーが揃っていました。政府系ファンド、企業年金ファンドなどかなり大きな金額($50M~$100M以上のチケットサイズ)を運用するLPが多かったため、GP側もそういった金額を運用できるようなバイアウトファンドやプライベートクレジットファンドが多かったのだと思います。同様の理由から、ベンチャーキャピタルファンドも、グロース・レイターが多かったです。

ベルリンという土地柄もあり、国でいうとGPもLPも欧米ファンドが多かったですが、東南アジアの政府系ファンドや中東系ファンドも参加しており、正に「SuperReturn International」の名に違わぬカンファレンスでした。残念ながら、日本のファンドというか日本人の参加者は数えるほどしかいませんでしたが。

Partners Fundとして今回カンファレンスに参加した理由は海外VC、LP達とのコネクションを強めるためでした。海外スタートアップへの出資機会を模索しているというのも勿論ありますが、今後投資先が海外進出を目指す際にしっかりと支援するために必要なネットワークを事前に構築するために、今回は敢えて東京ではなくベルリンで行われるカンファレンスに参加しました。

世界の目線

資金調達状況

多くのGP達と情報交換をする中で、皆が口を揃えて言っていたのは現環境下での資金調達の難易度でした。日本でも資金調達の難しさが昨今話題になりますが、海外ではこの危機感を更にひしひしと感じました。

LP達にとって新規出資が難しい理由の筆頭であがる要因の一つが、未上場株式領域での追加出資できる資金がLP達の手元に少ないということです。利率が上がる中、企業による融資を利用したM&A活動が減少しており、結果、近年のLP出資先であったバイアウトファンドやベンチャーキャピタルファンドが実現益を出せずにおり、LPの元に未上場株式向けの資金が残っていないそうです。

この現状を語るように、カンファレンスに出席しているLPの中には、新規出資先は一切探しておらず、既存出資先の優良VC・PEが設立する新ファンド向けの出資金だけ手元に残しているファンドもあるという話を聞きました。

リターン目線

もう一方で、新規出資先を探しているLPも当然いました。では、そういったLP達がどういう出資先を探しているかというと、LPのサイズや種類(企業年金、基金、ファミリーオフィス)によって大きく異なるのですが、求められるリターン基準についてはある程度共通する目線感がありました。

簡易的にまとめると以下の表のようになります。現在、アメリカの銀行口座にお金を入れれば5%弱の利率がつくことからも想像できるかもしれませんが、表の黄色で示した~10%までのリターン水準は比較的安全な資産(上場株など)の運用で求められるリターン基準です。緑色で示した領域、得に「15%~20%」あたりはバイアウトファンドやプライベートキャピタルファンドに求めるリターン基準として、多くのLP達が口にしていました。

つまり、ハイリスクハイリターンのVCが海外LPに魅力的な新規出資先として振り向いてもらうには最低20%強のIRRを出していることが一つの基準となります。(図の青色の領域)

ある企業年金ファンドの担当者が、このリターン目線をよりわかりやすい言葉で表現していたのですが、彼らが求めるのは「ユニコーンの再現性」ということです。勿論、チケットサイズが50~100億円の大口LPだからこそこのような表現になるわけですが、将来的にそのような大口海外LPから注目されるためにはどういうトラックレコードが必要とされるのかを痛感した瞬間でした。

IRRマトリックス(年数 x 出資-実現益倍率)


なお、LPの種類によってどう目線感が異なるかをもっと聞きたいマニアックな方がいましたら、TwitterやFacebookなどでいつでもご連絡ください!


挿話:アフターパーティーという戦場

真正面から海外LPと議論すると上記のようなリターンのトラックレコードや戦略/専門性の議論が大事になってくる一方で、GP-LPの関係性は財務的な数字や戦略以外にも、個人的な側面もあります。そこで大事なのが、こういったカンファレンス期間中に色々な企業が別途開催するパーティーです。

SuperReturn Internationalも違わず、毎日夕方19:00から深夜2:00あたりまでいろんなホテルやバーでアフターパーティーが開かれていました。こういったお酒の入る場でこそ会議の場では開けない門が開くこともあり、真正面からは戦っても勝つことが難しい新参者の我々のようなファンドにとっては参加必須だと痛感しました。

大手ファンドもこういった非公式な場での関係性構築は重視しています。真偽は確認していないのですが、ある大手ファンドは今回のカンファレンス期間中に既存LPと新規LP候補を集めた招待制パーティーを$1M以上をかけて実施したとの噂が流れていました。そのパーティーでは、米国の著名歌手Usherがゲストとして招かれていたとか。これだけの軍資金をかけて、カンファレンス外でも資金調達をめぐる戦いが繰り広げられているのです。

私もいくつかアフターパーティーに参加できたのですが、どこでどんなパーティーが開かれるかを初日からしっかりと把握できなかったのは痛恨のミスでした。公式イベントではないので、情報をつかむには独自のルートが必要だったのです。良かった点があるとすれば、今回そういった情報の効果的な入手方法を学べたことです。こちらも相当マニアックですが、こういったTipsを知りたい方も是非DMください。

最後に:世界における日本という市場

この記事を書く際にどういったメッセージを伝えたいかを考えていて思ったのは、「世界に日本の経済、スタートアップ及びVCの魅力を発信していく仲間を募りたい」でした。残念ながら、カンファレンスの中でお話した計120人ほどの方々の中で日本のスタートアップを知っている方はほぼおらず、日本のVCについては言うまでもありません。それ以前に日本市場への理解も浅く、唯一皆さんが理解していたのは日本の人口が減少局面にあり、極度の高齢社会であるということでしょうか?

今後人口が縮小する市場の中で活動するVCとしては、投資先スタートアップの海外進出支援が求められることが増えてくると考えています。そして、その局面になってから海外現地のGP、LP達に日本市場と日本のスタートアップを理解してもらうのは不可能だと思っています。だからこそ、今からじっくりと海外への発信を始め、日本VC独自のプレゼンスのあげ方をしっかり確立しないといけないと思っているのです。今回のベルリン出張でその考えは一層強まりました。

勿論このような壮大なことを一人でやっても仕方がないので、多くの仲間と一緒にできればと考えています!SuperReturnや同様のカンファレンスに今後参加されるVCの方がいれば、いつでもご連絡ください!いつでも今回の経験を経て学んだことをより詳細に共有させていただきます!




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