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「フィンランドの人々はなぜバイリンガルなのか」気になったから直接聞いてみた。
はじめに
2024年10月22日から27日までの5日間、フィンランド・ヘルシンキで現地の言語教育について直接聞きに行ってきました。フィンランドはヨーロッパの中でも特に多言語教育が進んでいる国として知られています。街の中に様々な人種の人が描かれている絵が飾ってあったり、トイレは男女共用のものが多かったり、言語に留まらず「多様性だなぁー」と感じる場面がいくつもありました。
さて、フィンランドの公用語ですがフィンランド語とスウェーデン語です。しかし、ほとんどの市民がバイリンガルまたはトリリンガルとして生活しています。また、英語も非常に普及しており、都市部では特にその傾向が顕著です。多くの人が仕事や日常生活において、フィンランド語、スウェーデン語、英語などを自然に使い分けています。ちなみに人口の90%近くがフィンランド語を母国語としています。
英語教育の早期化と教育カリキュラムの変化
フィンランドの学校教育における英語学習は、2020年から小学3年生から1年生に開始時期が前倒しされました。日本でも同じような現状が起きてますよね。これにより、フィンランドの子供たちはより早い段階から英語に触れ、基礎的な言語スキルを積み上げることができるようになりました。この変更は、グローバル化が進む中での対応策として国全体で進められており、早期からの英語教育が一般化しています。
フィンランドはどこもイマージョン教育なの?
フィンランドの一部の学校では、イマージョン教育が導入されています。これは、特定の教科(数学や理科など)を外国語、例えば英語で学ぶ教育方法で、言語の自然な習得を促すとされています。しかし、全国的に広く導入されているわけではなく、大半の学校では英語は独立した科目として学ばれ、授業はフィンランド語を基盤に進行します。この形式は、日本の英語教育と似ており、英語自体を学ぶことに重点が置かれています。実際に現地の人に聞きましたが、地面に寝転んで授業を受けていい、バランスボールに乗って授業を受ける子どもたち。みたいな絵を僕は想像してましたが、そんなのは限られた特定の学校だけらしいです。テレビで見た情報は実際の1部分であることを改めて学びました。
日常生活での豊富な英語環境
フィンランドにおける英語教育の成功を支える大きな要因の一つは、学校外での英語接触機会の豊富さにあると思いました(僕調べ)。テレビ、映画、ゲームなどのエンターテインメントの多くが英語で提供されており、フィンランドの子供たちは日常的に英語に触れることが当たり前となっています。通話しながらオンラインゲームする時も、基本英語話者と戦うことになるので、英語を話すそうです。これぞお家留学。。。ハリウッド映画や海外ドラマは字幕付きで放送され、吹き替えが一般的な日本とは対照的だと思いました。これにより、フィンランドの子供たちは学習としてではなく、自然な形で英語に親しみながら言語スキルを伸ばしているとバーで出会った男性に教えてもらいました。
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飽きずに話してくれた彼に乾杯。
「大量インプット」をナチュラルに実現している
第二言語習得理論、スティーブン・クラッシェンの「インプット仮説」によると、言語習得には大量の理解可能なインプットが不可欠であるとされており、フィンランドの子供たちは興味のあるコンテンツ(映画やゲームなど)を通じて、無意識のうちにインプットを得ていました。このような環境は、学習を意識しなくても自然に言語を身につける理想的な環境といえます。僕たちも普段から見てるコンテンツを英語にスイッチすることで大量のインプット環境は作れると思いました。
言語政策やロケーションが重要だ
この経験から、国全体で多言語社会を創っていこうと示す姿勢や、リソースを配分することが重要だと感じました。別の公園で話した女性は大学までは授業は全部フィンランド語だったけど、大学から英語になったと言ってました。専攻は建築なので別に英語でやる必要はない分野だと思ってしまいます。が、別の国とのコラボレーションを鑑みて英語で勉強していたそうです。英語力はもちろん非常に高いです。
また、日本とフィンランドの間には「言語距離」という大きな違いが存在します。言語距離とは、発音や文法構造の観点から言語間の類似性を示す指標であり、日本語と英語の言語距離は非常に遠いとされています。フィンランド語と英語は日本語よりも近いため、フィンランド人にとっては英語習得が比較的イージーです。この言語距離の差はあるものの(埋められない壁・・・)、フィンランドの教育と日常生活における多言語環境が英語の習得を後押ししている点は、日本でも参考にできる要素でしょう。
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自発的な学習動機の役割とその重要性
フィンランドの言語習得環境から学べるのは、英語を「学ぶ」ものではなく、「楽しむ」ものとして取り入れることの重要性です。フィンランドの子供たちは、英語を学習の対象とするのではなく、テレビや映画、ゲームなどを通して英語に触れ、「内発的な動機」を持って英語を活用しています。興味を持って楽しむことで自然に言語スキルを高める方法は、日本の英語教育にも取り入れられるべきであり、義務的な学習よりも効果的であることが示唆されています。
日本の英語教育への応用と課題
フィンランドの事例を日本の英語教育に応用するためには、学校教育の枠を超えた「楽しい体験」と「大量のインプット機会」を増やすことが鍵だと思いました。日本でも、フィンランドのように英語コンテンツを自然に楽しめる環境を整えることで、英語学習が生活の一部として取り入れられるようになると思います。また、子供たちが自分の興味に基づいて英語に触れられることで、学習意欲も向上すると期待できます。学習環境と日常生活の両面で英語に触れる機会を増やすことが、日本の英語教育の進歩に寄与するでしょう。
まとめ
英語「を」勉強するというと言う「学習」と英語「で」楽しむと言う「習得」の両面を持ち合わせることが肝だと思いました。日本だと特に後者ですよね。英語ってなっただけで拒否反応を起こしてしまう人をたくさん見てきましたが、子どものころに「楽しい」と言う実感がなく、「辛く苦しいもの」と言う認知がこべりついてしまっているからなのかなぁと思いました。
よって、もっとプレイフルに英語を学べる環境セッティングを創れるよう大学院でリサーチを深めていこうと思いました。他国から学べることはたくさんある!!
また次の記事で会いましょう😊