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#4 Discus Toolのすゝめ
こんにちは。
「Discus tool」というものをご存知でしょうか?
読んで字の如く「円盤投げの(為の)ツール」です。ハンマー投げのハンマーの小さいバージョンみたいなもので、ミニハンマー、Discus hammerと呼ぶこともあります。
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上の写真のものは2kgのマスターズ用ハンマーとハンマー投げ用のワイヤーを千切ったもの(!?)と、リングキャッチを連結して自作しました。
これだと若干短かったので、今はリングキャッチを3つにして長くしています。
メーカーや個人の好みにもよりますが、大体25-35cmほどのものが多いですね。
そんなDiscus toolですが、僕は円盤投げのトレーニングとしては最推しレベルでオススメしてます。
そもそも投げられる環境が無い、(上級者向けなので)始めたばかりの初心者には危険で向かない、感覚が合わない人もいるなどさまざまな問題はどうしても発生してしまうのですが、可能であればぜひ取り入れてほしいトレーニングの1つだと僕は思っています。
いくつか個人的に感じたメリットを紹介します。
(ちょっとお試しで目次を入れてみることにしました)
メリット
大きな遠心力を得られる
Discus toolの最大の利点はターン中に大きな遠心力を得られることです。
円盤投げにおいて遠心力を感じる(円盤と釣り合いを感じる)というのは大切なポイントの一つであり、必須技術といっても過言ではないでしょう。
ただ、円盤投げで遠心力を感じるというのは意外と難しいことだと思っていて、「腕を脱力させる」「肩のラインに保持する」など物体を持ち続けている中で最低限のことができてないと、遠心力を最大限に感じられず、腕投げのようになってしまいます。
日本選手権に出られるような選手でも、案外この辺りが甘いものです。(僕のことです)
そこでこちらDiscus toolの出番です。
シンプルに円盤よりも重心が外側にあるので、より大きな遠心力を感じやすい、というのはありますが、Discus toolはその特性上、遠心力を最大限に感じられるような位置に保持させやすいため、その感覚を養うためにはとても良い器具だと思います。
力強く大きなリリースの感覚を得られる
これもまた大きな利点です。
大きな遠心力を感じられるということは、(しっかり釣りあえて投げられたのであれば)普段円盤を投げている時よりも大きな投げができているということです。
その状態で思いっきり投げるとそれはもう爆発的な力とリリースのスピードが得られます。
下半身優位でターンすることも強く意識しないといけませんが、その結果大きく速いリリースもできますし、「リリースの速度と爆発力」の向上、またその感覚を得ることに繋がります。
軸を保ち円盤に力を伝える感覚を養える
当然ですが、円盤よりも外側の重心で重いものを振り回しているため、外側にいこうとする軸をブラさず真っ直ぐに保つ力が必要になります。
下の写真を見てください。
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左が円盤、右がDiscus toolです。
左右共に右側に重心を預けるような形になっています。この形でもうまく使うことができれば、非常に風に乗りやすく伸びる円盤に化けるのですが、左はちょっと軸が傾きすぎですね。投げ急いで十分な起こし動作が行われていないので最後まで力を加えて振り切れず、結局低い円盤のままポテっと落ちて終わる、僕の投げではよくある失敗パターンです。
この形の矯正にもDiscus toolは役立ちます。(個人的には)
Discus toolを持って回るためには普段よりも軸を立てる(まっすぐにする)意識を強くする必要があります。そうでないと外側に体を持っていかれてそもそも回りきれないからです。
リリース時には最適化された形で振り切ることができるため、パワーポジションからリリースまでの動作の中でも、下半身からの力を投擲物に最後まで加えきるというような感覚も養えます。
遠くに飛んで楽しい(?)
これは1つの楽しみとしてありますね。
純粋な「投げる力」を強くするためのトレーニングとして有効だけでなく、遠くに飛んで気持ちいいんですよね。笑
重さや長さにもよりますが、2kgの円盤と2kg(総重量2.5kg)のDiscus toolであれば、だいたい7mくらいの差があるらしいです。(人によっては3m-5mともいうので結局個人差ですね)
僕のコーチもDiscus toolで70m投げられるなら65m投げる力は備わっていると話してくれました。
ちなみに僕のDiscus toolのベストはノンリバースが69m半くらいで、リバースが73mくらいです。
あれ…?軽いの投げたのかな…笑
まあ、というのも僕Discus toolを投げる時はめちゃくちゃいい投げしてることが多いんですよね。なぜこれが円盤でできないッ…といつも悶々としていますし、Discus toolが投げるのが上手くなっているだけというか…その感覚の擦り合わせがまだ上手くいってないんやなあと反省しています。きっとそれが伸び代…
余談ですがDaniel Ståhl選手(スウェーデン)は3kgのDiscus toolを73mくらい投げるそうです。
圧倒的パワー…
デメリット
さてここまでいいところばかり紹介してきましたが、当然デメリットもありますので、いくつか。
手に入りにくく、高価
現状、Discus toolを販売しているのは海外メーカーのみです。かなりマニア向けの器具なので需要が少ないんでしょうね…。代表的なものはDenfi社やNordic Sport社などですが、当然個人で購入すると送料や関税もあってまあまあ値段が張ります。
(でも円盤買うよりは安いですよ!)
軽いハンマーを購入して自作したり、2kgや2.5kgの軽いプレートをワイヤーに巻き付けたり、紐付きメディシンボールで代替は可能ですが、耐久性や安全性、投げやすさを考えるとあまり向いているとは言えないでしょう。
感覚によって合わない人も多い
僕のように「腕の脱力」を意識していたり、「後ろから円盤を出してくる」とか「とにかくブンブン振り回すぜ!」という感覚の人には、よいトレーニングになるかもしれませんが、最初からカチッと固めて回っている人や「円盤を押して前に出してくる」という感覚の人には向かないかもしれません。
そういう感覚の人は、サンドボール、軽い鉄球(砲丸)、鉄の棒、ボウリングピン、ソフトダンベル、結んだタオルなどを振り回す方がよいトレーニングになる可能性もあります。
トレーニング場所が限られる、危険
投擲選手を悩ますことも多い練習環境問題ですが、このDiscus toolも例外ではありません。
一般的な陸上競技場では、天然芝の保護の観点から、投げが限られるところばかりです。
僕の拠点だった中京大学は天然芝に向かってのハンマー投げが可能でしたが、そういうところは多くないでしょう。
僕が現在拠点にしている競技場は、砲丸、円盤、やりはできますが、ハンマー投げや芝生に向かっての鉄球投げは禁止されています。
また、ある程度ターンの形ができていないと失敗してあらぬ方向に飛んでいく可能性もあり、ネットがあったとしてもかなり危険です。投擲物の事故が起これば、その練習場所が使えなくなったり、その競技を実施させてもらえない事態につながりかねません。
Discus toolでなくても、投擲を行う際は、自分は凶器を持っているようなものと自覚し、安全確認を怠らないようにしましょう。
さいごに
Discus tool欲しくなってきましたか?
オススメだとは言っていますが、魔法のようなトレーニングではなく、あくまで手段の1つにすぎません。
今回語ったこともあくまでも僕個人の感覚や見解にすぎません。
でも、一つのきっかけを与えてくれる可能性がある器具じゃないかなと僕は思っています。
あ、言い忘れてましたが、Discus toolを投げるときはハンマーグローブは忘れないようにしてくださいね。そのまま投げると指が大変なことになりますよ。
ぜひトライしてみてくださいね。
おわり