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フレンチフライ/ポテトフライとポテトチップがおいしく揚げられたら幸せになれるのです、よね?

フレンチフライもポテトチップも油の温度が肝心


 ポテトチップスにしてもフレンチフライにしても油の温度がなんといっても重要ですよね。ポテトチップスは165~190度が最適温度、フレンチフライは一度目が160度、2度揚げのときが190度だと言われているようです。
 でも温度計持って160度になったぞとジャガイモを揚げ始めると温度が下がりますよね。火加減を調整したりするものの上がり過ぎて火を弱めたり、弱めたら下がり過ぎたり、下げても温度が上がり続けたりと「ああもうだめだあ」という気分になったころにはジャガイモが揚がっていて、急いで取り出すなどという羽目になるのです。
 すごく簡単な料理なのに、マクドナルドのフレンチフライのように外がサクッとしていて油っこくないフレンチフライを家で再現することも、パリッとした市販のポテトチップみたいなのを作るのもけっして簡単とはいえないですよね。温度が適当だとサクッ感もパリッ感もない油っこい揚げジャガイモになってしまいます。
 ジャガイモを熱い油の中に入れるとすぐにぶくぶくと泡立ってきます。一見沸騰しているようですが、これは沸騰ではないらしく、ジャガイモに含まれている水分が気体になってでてきているのだそうです。ジャガイモの水分がなくなるとどうなるかというと、あったものがなくなるわけで空洞になるわけです。油の温度が高いとジャガイモが油に触れた瞬間に表面から水分が抜け、そこに油が入り込んできます。これがたぶん油っこくなる原因ではないでしょうか。温度が低いとジャガイモに火が通るまで時間がかかり油っこく、高すぎる場合は中まで火が通る前に焦げてしまうこともあるんじゃないでしょうか。
 とにもかくにも油の温度、これがフレンチフライやポテトチップを揚げるのに最も重要なことなのです。

ぶくぶくの泡は油が沸騰しているのではなく、ジャガイモに含まれている水分が蒸発してできたものなんですよ。

 
 そんなんなら買ってくればいいやということになってしまいますよね。それはそれでいいわけなんですけどね。ファーストフードチェーンのポテトはおいしいですから。ポテトチップに関してスーパーに行けば選ぶのが困ってしまうほど選択肢があります。別に苦労して自分で作る必要などないともいえます。
「それではフレンチフライやポテトチップは店で買いましょう」では私としてはおもしろくないわけで、どうにかならないものかと思ったりしていたのです。

アメリカの典型的なスーパーのポテトチップが陳列されたコーナー。こんなに種類があるの迷うしかないです。私がよく買うのは左のストアブランドのシーソルト味。でも好みは右上の地元マサチューセッツ州ケープコッドのその名もcape codのケトルクックドというやつ

 

これがCape Codのチップス。ケトルクックドと呼ばれる昔ながらの方法に近い揚げ方。パリパリ感が全然違うんです。ちなみにCape Codはケトルクックドの元祖。私が目指すホームメイドチップスの目標もこれ

上は通常のポテトチップの生産過程。残念ながら上げてる場面はありません。下へケトルクックドのチップスの生産過程。通常は常に作業がベルトコンベアで流れていて止まることがありません。ケトルクックドではどでかい油が入ったプールに揚げる分だけジャガイモを投入。通常のベルトコンベア式と違い、ケトルクックドではここで動きが止まり揚げる態勢に入ります。チップスが揚がると次の作業に移動します。


アヴァンギャルドに揚げてみる


 そうしたらですねえ、とんでもない方法を見つけてしまったんです。何がとんでもないかって、「それはないでしょ」。「それはやっちゃいかんです」みたいな方法なんです。つまりこれまでの常識を覆すアヴァンギャルドで超画期的な方法なんです。日本でも数年前にyoutubeなどに登場したようですが、方法だけで「どうして」という疑問に答えてくれるものは、ザっとチェックした感じ見つかりませんでした。
 どんな方法かというと、こんな感じです。まず鍋にフレンチフライまたはポテトチップ用に切ったジャガイモを入れます。その通り熱した油の中にではありません。ジャガイモを入れたら次に冷たい油をひたひたになるまで注ぐんです。
 もちろんこれだけじゃ揚がりません。なので鍋を火にかけます。火力は中火ですかね。
「なに、そんなことしたら油ギトギトになるでしょ」
 私もそう思いましたよ。でもやってみないと分からないですから、とにかくやってみることにしました。

この方法だとこんな感じで始まります。生のジャガイモが冷たい油に浸っているだけ

 油の温度が少しずつ上がってきます。早ければ5分、少なくとも10分前後でジャガイモからぶくぶくと泡が出てきます。油の温度が上がるに従って、ジャガイモが揚がり始めるに従ってこのぶくぶくが増えていきます。時間にして20~30分くらい、ジャガイモはこんがりきつね色になっています。これで出来上がり。
 油の温度を気にする必要もなし。ジャガイモの量を気にする必要もなし。油の量はかなり少なめ。これでおいしいフレンチフライやポテトチップができなら、こんなに嬉しいことはありませんね。でもあくまでも結果次第。
 

はたして出来上がりは


 結果はというと。これがおいしいんです。”とても”がつくくらい。最初にフレンチフライ、次にポテトチップを揚げたんですが、ポテトチップに挑戦する際に少し改善を加えました。改善がよかったかどうかは分かりませんがポテトチップスは売っているやつに匹敵するというかそれ以上のおいしさでした。正直これまで食べたポテトチップの中でいちばんおいしかったと言いたいです。外側がサクッとしていて中がホクホクのフレンチフライももちろんおいしかったですが、出来上がったポテトチップのパリパリ感ははっきりいってため息ものでした。
 どうしておいしく揚がるのか。このことに関連した論文があるようですが、そこまで突っ込むと話が難しくなりそうなので今回は辞めておきます。
 この方法の利点は冷たい状態から徐々に油の温度が上がってくるので、高温に投げ込んだジャガイモみたいに入れた瞬間にぶくぶく泡立ってくるということがありません。つまりジャガイモの表面が水分で保護されている感じで油が中に入り込みにくいといえますね。結果油っこくなりません。スロークッカー(低温調理)に似ているという人がいます。確かにそうなのかもしれません。
 

これがポテトフライの完成品。見た目も食感も某ハンバーガーチェーン店に近いものになりました


これがポテトチップの完成品。最高においしい理想的なチップスになりました
これは目標としたCape Codのチップス。上の写真と比べてみてください。こちらのほうが少し色が濃い以外は見た目も同じ。同じも食感もそっくりです

何でも大丈夫、
というわけにはいきません

 ひとつ注意してほしいことがあります。この方法はあくまでもジャガイモなどをそのまま何もつけずに揚げるのに向いています。カツなど衣つきのものは向いていません。やったことはないですが冷たい油の中に衣つきの食材を入れたらどうなるか。失敗は目に見えていますよね。衣は油を注いだ瞬間に油を吸ってとんでもないことになってしまうでしょう。冷凍のコロッケとかを油の温度が上がる前に入れてしまった経験のある人は、私もそのひとりですがどんなことになるか分かると思います。
 日本初のyoutubeの中にはジャガイモに小麦粉や片栗粉をまぶして低温の油から上げるというものもありました。実際やったことがないので100%否定することはできませんが、通常の方法で唐揚げや竜田揚げなど揚げるときでさえもカスで油が汚れるわけで、低温だと油を注いだ時点でまぶした小麦粉、片栗粉の大部分は油で流されてしまうと考えたほうがいいような気がします。もちろんコロッケとか天ぷらとかはもってのほか、ではないでしょうか。
 

レシピと浅い知識、勝手な思い込みに基づいたうんちく

一応レシピを書いておきましょう
材料
ジャガイモ:適宜/油:適宜/塩:適宜
●ジャガイモは水分が少なく硬い、澱粉の多いアメリカでいえばアイダホやラセットポテトが向いているようです。
●アメリカでフライによく使われる油はキャローナオイルやピーナッツオイルです。沸点が高いコーンオイルやソイビーン(大豆)オイルもいいですね。
●塩は単に味つけ用。好みでいろいろな味を加えてください。もちろんケチャップも。
 
作り方
1.ポテトチップの場合はスライサーを使って薄く切ります。皮付きのままでもいいですね。ポテトフライの場合は皮をむいて、太さなどをできるだけ揃えるために角を切り取って直方体にします。切り落とした部分がスープ、マッシュポテトなどに使ってください。太くするか細くするかは個人の好みで。ただしできるだけ太さを揃えてください。
2.切ったらたっぷりの水に浸して余分な澱粉を除きます。水に浸しても浸さなくても大した変りがないという人も多くいます。これも好みの問題ですかね。私は水に丸1日浸しておきました。
3.水に火がしたらザルに上げて水を切り、そのあとキッチンペーパーでふき取ってください。
4.拭き取ったら鍋に入れます。やったことはないですが、ポテトチップとポテトフライをいっしょに揚げるのは、たぶん大丈夫なような気はしますがやらないほうがいいかもしれませんね。
5.鍋に油を注ぎます。ジャガイモが完全に浸かる程度でOKです。
6.準備ができたら火にかけます。印象としては弱火よりも中火のほうがいいような気がします。あとは揚がるまで基本的にはほっとけばいいです。ただたまにかき混ぜたほうが均等に揚がります。
7.同じ太さ、厚さに切っても揚がるまでの時間が違います。ちょうどいい焼き色になったら1本でも1枚でも油から上げてください。
8.泡があまりでなくなったところで終了です。すべて上げて油を切ります。
味つけは好みでどうぞ。
 
 鍋にジャガイモと油を入れてから揚がるまでの写真を撮っておきました。泡が出てくるまでは5分おき、その後は2分おきです。ここでは主要なポイントの写真だけを選んで載せました。

フレンチフライ/ポテトフライ
初実験
旧式のコイル式コンロを使用。目盛りは5段階の3でスタート。

1.火をつける前の状態
2.5分経過。ジャガイモから泡が出始めた
3.22分経過。泡が盛んに出ている状況。油の温度は109度。なかなか上がらないので目盛りを3.5まで上げる。
4.34分経過。数本に焦げ目がつき始めた。油の温度は115度。この前の時点で目盛りを4に、さらにこの時点に5に上げた。
5.42分経過。焦げ目がついたものを取ったので少なくなっている。油の温度は130度。
6.48分経過。泡の出が落ち着いて終了した状態。油の温度は148度。

ポテトチップ
フレンチフライの反省を踏まえてブタンガスのポータブルコンロに変更。火力が強いコンロなので中火の弱火でスタート。最後まで変えることはなかった。

1.火をつける前の状態
2.2分後にはすでにジャガイモから泡が出始めた。油の温度もすでに108度。
3.10分経過。すでに全体が泡でぶくぶくいっている状態。油の温度は112度。
4.16分経過。すでにほとんどのジャガイモが浮いている。油の温度は114度
5.24分経過。ジャガイモの外側がきつね色になり始めた。油の温度は124度。フレンチフライのときはこの温度、この状態になるまで40分くらいかかっているのでかなり早い。
6.32分経過。ジャガイモすべてにきれいな焼き色がつき、泡のでも落ち着き終了。フレンチフライのときより15分も早く揚がってしまった。油の温度は198度。

結果は少し強めの火力で最初から最後までいくのが正解のようです。最終温度198度というのは少し高い気はしますが、ポテトチップ自体には全く影響はありませんでした。望んでいたとおりの最高においしいポテトチップになりました。今度はこの方法でフレンチフライも挑戦してみたいと思っています。

参考にしたサイト
順不同
https://scienceandfooducla.wordpress.com/2015/08/25/fair-food-deep-frying/
http://www.decodingdelicious.com/the-science-of-frying/
https://ift.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/j.1750-3841.2007.00352.x
https://www.delish.com/uk/food-news/a39770866/how-to-cold-fry-chips/
https://thefooduntold.com/food-science/french-fries-and-the-science-behind/#The_oil
https://www.americastestkitchen.com/articles/3102-for-restaurant-quality-french-fries-start-with-cold-oil
https://www.seriouseats.com/wok-skills-102-how-to-dry-fry-in-a-wok
https://foodcrumbles.com/should-you-rinse-or-soak-potatoes-before-frying-an-experiment/
https://www.nytimes.com/1999/05/05/dining/deep-secrets-making-perfect-fry-potato-moment-often-soggy-disappointment-time.html
https://www.youtube.com/watch?v=BdjjamEpmSU&t=585s&ab_channel=emmymade
https://www.youtube.com/watch?v=UiJmmVd3kWI&ab_channel=MyNameIsAndong
 https://www.youtube.com/watch?v=qWTFkgnTYkE&ab_channel=TechShoot
https://www.youtube.com/watch?v=GCIoNspDJvU&ab_channel=FoodNetwork

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