見出し画像

今も昔も、すごい人


戦後沖縄、最高のヒーロー 激動の時代に築いた島の誇り

出典:琉球新報

具志堅用高さん、現在ではバラエティー番組での印象も非常に強いのですが、

本当にスポーツ界、というか沖縄という地域、あるいは戦後日本というものを

活気づけ、未だに彼以上の影響を与えた人はいないくらいのスーパースター

です。

自分が生まれ過ごした場所が、アメリカから日本になるっていう感覚は僕は

リアルにイメージすることは正直難しいです。確かに、何もない状況から

這い上がるしかない状況だったあの当時、きっと今にはない勢いがあったん

だろうし、その分何倍も今にはない、言えないような苦労やそれこそ差別、

妬みや嫉みみたいなものもたくさんあったんだろうと思います。笑顔だけ

では片付けられない葛藤も理不尽もあったけど、それを乗り越えてきたのが

当時の沖縄だったし、日本だった。

そして、困難を乗り越えようとする時、心のよりどころであり人々の希望の象徴

となる存在が必要不可欠です。その中で、やっぱりアスリートはその象徴的な

ヒーローとしての役割が良く似合う。強く・勇ましく・たくましく・ハツラツと敵に

立ち向かい、戦争で負けた劣等感や絶望感に包まれた日本という国において

そんな大変な状況の中でも挑戦し続けるその姿は、今では映像で

しか見ることができませんが、言いようのないくらいの輝きに満ちていたんだと

想像できます。

そこでいうところの具志堅用高さんは、沖縄という日本の中でも唯一、今でも

敗戦国であることを実感させられる地域で生まれたスターなんです。

すごい所は本当にたくさんあるんですが、僕が思う一番のすごさは、

「あまりすごいと思われていないこと」だと思います。

これは長嶋茂雄さんもある意味共通しているかもしれないんですが、

もちろん現役当時の彼らは成績的にも圧倒的だしめちゃめちゃすごいと

思われていたんでしょうが、長嶋茂雄さんは僕らが小学生とかの頃は

言葉遣いが面白い巨人の監督だったし、具志堅用高さんはパンチパーマで

陽気で少しおバカなおじさんです。

要するにキャラクターなんですよね。そこが一番すごいことだと思います。

すごい人がすごく見せることはできると思うんです。すごくない人がすごい人

に見せかけることもできるし、すごくない人がそのまますごくないように見せる

ことも出来る。けど、すごいのにすごくないように見せるのってこの中で

圧倒的に難しいんです。

そして、すごく見えないことで何が起きるかっていうと、可愛げやキャラクター

が愛され、競技のファンを超えたところでの人気を得るというバズを起こす

ことができるんです。すごさって、本当はその競技やスポーツにある程度

明るくないとわからないものだったりするし、嫉妬の対象になったりする。

けど、キャラクターや可愛さ、愛され役っていうのは全国民にほぼ共通

の感覚ですから、競技の枠なんて簡単に飛び越えることができるんです。

当然時代背景もありますが結果的に、未だに長嶋さん以上の人気を持つ

野球人はいないし、具志堅さん以上に日本中誰もが知っているボクサーは

居ません。実際、具志堅さんはボクサーとしてのイメージがもうなくてすっかり

バラエティータレントだなんて言われますが、ボクサーであったことが必ず定期

的に番組の中で触れられるので今現在ボクシングに興味がなかったり、これまで

ボクシングに触れる機会がなかったマスに対してボクシングに触れる機会を

提供するという意味ではもしかしたら今でも一番かもしれません。

そして何より、現在はジムの会長も務めてらっしゃって、ジムや試合会場では

ほんとうに別人の顔をされてらっしゃるんですよね。自身の勇猛果敢な

ファイトスタイルの秘訣を聞かれた時、「恐くて堪らない」ということを

おっしゃっていて、あまりに恐いから

「もう立つな!早く終わって!」という気持ちでああいうスタイル

になるんだと。あれだけ強い男のその言葉にビックリもしましたし、それ以上に

その素直な人間性にさらに惹かれたし、危険性を誰よりも知っているからこそ

ボクシングには立場が変わっても真剣に向き合うんだっていうのがすごく

かっこいいですよね。完全にギャップ萌えです(笑)。

すごい人なのにこれだけ”かわいい”って本当にすごいと思うし、これは

きっと努力とはまた違うところな気がします。

どちらがいいのかはわからないですけど、例えばタモリさんやさんまさん、

たけしさんのことはなかなかバカに出来ないし、気軽に話せない大スターです。

同じように大スターなのに、所ジョージさんや笑福亭鶴瓶さんは隣にいても

10分で慣れそうな気がする(笑)。具志堅さんはそんな魅力のある大スターなん

ですよね。

崇めることがマイナス宣伝になった時、その人は無敵ですよね。YouTubeで

爆当たりした江頭さんのように。

リングアウト勝利まで収めた稀代のスーパーボクサーでありながら、誰よりも

すごいと思わせないボクサー、具志堅用高はいつまでも愛されるレジェンドで

あり続けると思います。

アメリカから日本になったばかりという過酷な状況の中、道なき道を突き進み、

開拓してきた彼の功績を見れば、この経験したことのない第2波を想定したうえでの

新しい生活様式を取り入れたコロナ明けの時代も、前を向いてみんなで進んで

行けそうな気がしてきました。


いいなと思ったら応援しよう!