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読了ログ:「忘れられた日本人」
こんにちは。おつかれさまです。
「忘れられた日本人」は、民俗学者の宮本常一氏が1960年に発表した著作である。
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日本各地を訪ね歩いて収集した多くの庶民の生活や文化に関する記録を基に、日本の伝統的な生活様式や価値観を描き出していて、調査から得られたエピソードやインタビューを通じて、日本の地方の人々の暮らしぶりや思考様式を描いているのだが、消えゆく日本の伝統的な生活様式を再発見し、その重要性を後世に伝えてくれるお気に入りの1冊である。
作中に出てくる地域には何ら縁はないが、この著書を読むたびに思い出されるのは曽祖父母の故郷「安房小湊」である。
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幼少期の夏はよくこの地に訪れ、親戚一同で海水浴に行き、BBQを行い焚き火をした。
明け方を知らせる町内のアナウンスや、猿が出てくる裏庭、親戚のおじさんやおばさんに可愛がってもらった経験は今では宝物である。
話が脱線したので元に戻そう。
「忘れられた日本人」に描かれる生活様式や価値観は、僕らが暮らしている現代社会においてはなくなりつつあるのではないだろうか。
例えば、地域社会の結束や相互扶助の精神である。町内コミュニティはあるのだが、あくまで他人同士。結束や関わりあいは希薄化されている。
(*もちろんないわけではないのだが。。。)
小湊の件を思い出したのはおそらく、自然と共生し季節の移ろいを感じながら生活することが豊かさであるといま感じているからだろう。
あの頃感じた海の匂い、風に揺られる木々やうるさいくらいの蝉の鳴き声。
火の揺らぎや枝葉がパチパチと燃える音に防空壕の静けさ。
(*ひいおじいちゃん家に防空壕があることを健気にも自慢していたことを今更ながらに思い出した。)
口承文化や地域ごとの風習など、現代の便利さに押し流されがちなものの価値が田舎にはあるのかもしれない。