マネージャーのいない、ホラクラシー組織でのデザインマネジメント(Ubieの例)
こんにちは、Ubie株式会社のプロダクトデザイナー 永尾です。
先日、マネーフォワードさん、弁護士ドットコムさんが企画されたDesign Management Popsに登壇してきました。初回ということで探りながらの開催でしたが、いろんな会社のデザイン組織のリーダー/マネージャーが集い、それぞれの悩みや取り組みなどが聞けるとてもレアな会でした。僕はパネラーの1人として参加しました。この記事では、自己紹介&パネルディスカッションコーナーでお話ししたことを改めてまとめて紹介します。
自分はUbie株式会社のUbie Product Platformという、事業・プロダクト開発を担う組織に所属しています。ホラクラシーを採用している組織で、マネージャーが存在しません。マネージャー職では無い自分が Design Management Pops に参加したのは、ホラクラシー組織における「マネジメント」業務のあり方を紹介して、新しい組織のかたちを模索するヒントになれば…という思いからでした。
中央集権的なマネージャーという存在
僕は今マネージャー職ではありませんが、過去に所属した複数の会社でマネージャー職を経験しています。いずれもピラミッド型の従来型組織でした。会社や組織が違えばマネージャーの定義に多少違いはあるものの、マネージャーには色々な責務が集約されています。それをメンバーから見ると、何をやってるか分からない、忙しそう、大変そう、というような印象を持たれがちです。実際、なかなか大変です(笑)。マネージャーになることが敬遠される理由のひとつです。
デザイン組織のマネージャーは、中途採用を除けばプレーヤーから登用されるケースが多いと思います。リードデザイナー的な役割を果たすメンバーに白羽の矢が立てられるのは、デザイナーあるあるでしょう。その流れで、優秀なプレーヤーとしてだけではなく、一般的なチームマネジメントに加え、デザインの品質管理・全体のデザイン力引き上げ・デザイン戦略策定なども期待されます。
ある程度の規模の組織になると、複数人のマネージャーが登用され業務を分担することがあります。または、マネージャー候補のメンバーに委譲して育成を図ることも。しかし、評価・査定業務は委譲しづらいところです。Design Management Popsでも、権限委譲に課題を感じ最適解を探されているマネージャーさんがいました。権限委譲は責任とセットになるので、委譲された人はその分負荷が増えてしまいます。評価・査定もある程度あせて考慮した方が良いので、マネージャー→メンバーへの権限委譲はそこそこカロリーの高い行為に思えます(委譲する内容にもよりますが)。
ユビーが採用するホラクラシーは、このようなモヤモヤを解消する仕組みです。
マネジメント業務を分散するホラクラシー組織
Ubieのホラクラシー組織では、評価がありません。人事もいませんし、役職もありません。この辺はすでにいくつか詳しい記事があり、浸透しだしている部分もありますが、まだいくつか誤解されがちなことがあります。その中の一つが「マネジメント」業務の存在です。評価をしない、人事もないのでピープルマネジメントはしませんが、組織やカルチャー、お金や事業(プロダクト)のマネジメントは従来型の組織と同じように存在します。従来型の組織との違いは、マネージャー職にそれらを集約するのではなく、役割を細分化してメンバーで権限と責任を分担するところです。従来型の組織でマネージャー経験がある方は、イメージしやすいかもしれません。
ホラクラシー組織は最小単位の役割(ロール)と、同じ目的を持ったロールの集合(サークル)で構成されています。すべてのロールには、その目的と責任範囲が定義されています。責任範囲は他のロールと被らないよう設定されます。サークル(組織)を運営する上で必要なマネジメント系の役割を担うロールの例をいくつか紹介します。
例えば、リードリンク、ファシリテーター、セクレタリーというロールはどのサークルにも存在する一般的なロールです。リードリンクは各サークルの代表的な存在ですが、従来型のマネージャーに比べ権限と責任範囲は限られています。その分、各ロールが権限と責任を負うことになります。
リードリンク
目的:サークル自体の目的を担う。
責任:親サークルの視点を持ち、サークルの目的や戦略を調整、サークル内のロールに適任者をアサイン、サークル内の仕事の優先順位決める。
ファシリテーター
目的:サークルのミーティングの進行とプロセスの順守。
責任:ホラクラシー憲法に沿ってミーティングやオペレーションが実践され、プロセスを順守するようサークルに導く。
セクレタリー
目的:公式な記録を残し、情報の透明性と整合性を保つ。
責任:サークル内で必要なミーティングのスケジューリングする。議論や決定事項を記録し、その情報へのアクセシビリティと透明性を保持する。
デザインマネジメントに関連するサークルやロールもあります。それぞれのサークルに必要なロールが設定され、アサインされたデザイナーが他のメンバーを巻き込みながら推進しています。
※デザイナーは事業を推進するサークルにもアサインされています
1つの役割に権限と責任を集約せず、あらゆる役割に責務が負荷が分散されています。これを実現するためには各メンバーの協調性と自立性が大切です。ユビーが採用面談に力を入れているのは、そのためでもあります。
※参考までに、Ubieがホラクラシー組織を採用した背景については、次の記事が詳しいです。
組織ごとに最適解がある
ホラクラシー組織であってもマネジメントが存在し、デザインマネジメントも例外ではないことが少しは伝わったでしょうか。
ホラクラシーだけが正解ではありません。Ubieの中にもいわゆる従来型に近い組織形態を採用している組織があり、グループの目的に合わせて最適なかたちをとっています。事業と組織が拡大するにつれ、ホラクラシーを採用している組織も変化・適応する時が来るかもしれません。実際、僕が入社した2020年10月から今まで組織は変化を繰り返しています。
おわりに
デザイン職種の最近の課題として、全社で横串を通しデザイン戦略やプロダクトのブランド戦略、スケールする組織作りなどが急務となっています。興味がある方、ぜひ僕たちを助けてください!
職種に関わらず、変化を楽しめる方、従来型の組織でマネージャー職を経験されたことがある方はユビーと相性が良いかもしれません。ぜひカジュアルにお話ししましょう。ではまた〜。