創造的な仕事は管理しない方が成果はあがる。
多くの組織では、多くのルールを守らなければならない。
性悪説に基づいたルールで人を縛れば、創造性は失われて生産性は落ちていく。
信頼関係をしっかりと築ければ管理などしなくても、仕事が自分事になり圧倒的に楽しく働けるようになるのだ。
つまり、管理で縛るより自由に働く方が高い生産性を発揮する。
著者[倉貫義人]
株式会社ソニックガーデンの創業者で代表取締役社長。小学生からプログラミングを始め、天職と思える仕事に就こうと大手システム会社に入社。自ら起業すべく社内ベンチャーを立ち上げる。しかし、経営などの経験が無かったため当初は大苦戦。徐々に管理をなくすことで成果を上げる。最終的には事業を軌道にのせて、マネジメントバイアウトし、株式会社ソニックガーデンを設立する。
■自由に働く組織に変えるための3つのステップ
「管理をやめてすべて自由にすればいい」というわけではない。
著者が長い時間をかけて取り組んできたことは大きく3つある。
・第一段階 生産的に働く
仕事というのは単に楽しく働けばいいというわけではなく、大前提として価値を生み出す必要がある。
まずは、無駄な仕事、作業、いらない会議をなくす。仕事の進め方も継続的に改善することによって生産性を高める。
結果、成果を出せるようになって初めて次の段階に進める。
・第二段階 自律的に働く
これは、誰かに管理されなくても働くことです。自ら考え行動して成果を出していけるようになると、細かい管理は必要なくなる。
そうすると組織としての管理負担がなくなり、本人も自由と責任を得ることにより高い生産性と品質を実現できる。
働く場所や時間などの選択をできるようになる。
・第三段階 独創的に働く
独創的に働くというのは、自分たちだけの働き方を追求することである。
ここまでくれば、業界の慣習や常識にとらわれることなく、新しい手法を見つけ出すことの出来るチームになる。
そして、他社にない独創的な働き方を実現し、差別化を図れる。チームにとっての強みにもなっていく。
最終的には、遊んでいるのか、仕事をしているのか分からない状態になる。もちろん、結果を出すので豊かに暮らしていける。
そうやって仕事が楽しくなっていけば、人生を楽しむことに繋がっていく。
実現したい組織の姿は、「組織としての圧倒的な成果と働く個人が圧倒的楽しく仕事をすること」である。
本書は、そういったことを夢や妄想で終わらせず、著者が試行錯誤してきたことで実現できたことや気づきや考えをまとめたものだ。
「社員たちを幸せにしたいけどなにをしたら分からない」
「今の働き方を続けていっていいのだろうか」
そんなことを考えているビジネスパーソンにオススメの一冊である。
■「ふりかえり」で根本的に生産性を改善する
木こりのジレンマという話がある。刃こぼれしている斧で一生懸命に木を切っている木こりに「斧を研いだらどうか」というアドバイスをする。
しかし、木こりは「木を切るので忙しくて、斧を研ぐ暇はない」と答えた話である。
このように、実際の現場でも似たようなことが起きている場合が多いのが現実である。
たとえば、問題に対して進捗の遅れをカバーするために残業をしたりするアプローチは対処療法でしかない。
一度、残業でカバーしてしまうとその先もずっと残業でカバーすることになるのだ。これが、斧が刃こぼれを起こしているのに磨こうとしない代表的な例である。
この場合、根本的なやり方自体を見直していくことが必要なる。そうした仕事のやり直しを見直す時間「ふりかえり」をすることで、高い生産性を実現する。
しかし、「ふりかえり」で見直すのは業務ではない。業務の進め方や仕事のやり方を見直していく。「仕事が遅れているからリスケする」のではなく、「遅れた時に2人でペアになって作業してよかった」といった気づきを共有するのである。
「ふりかえり」では、「KPT」というフレームワークを使用する。
・Keep よかったこと
・Problem 悪かったこと
・Try 次に試すこと
これら3つを洗い出していき、全員で出し切っていくことを優先する。
そうすることで「個人のよかったこと、悪かったこと」が、「チームのよかったこと、悪かったこと」に変わっていく。
KとPを全員で共有したら次のT「次に試すこと」に移っていく。ここでは、精神論ではなく、具体的なアクションに落とし込む。
例えば、「ミスをしないように気を付ける」だとうまく出来たかどうか確認が難しい。「次に試すこと」は仮説検証ができるアクションにすることが大切である。
寝坊をした場合、「早起きするよう気をつける」ではなく、「目覚まし時計を買う」といった具合だ。
最後に、こういった「ふりかえり」の時間を週に一度、1時間程度行うことから始める。最終的には、「ふりかえり」をすることが当たり前になって、日々の仕事の中でできるようになる。
生産性の高いチームは、1人1人が考えて行動できることである。「ふりかえり」を続けていくことで、各自がチームのことを自分ごとと考えるようになるのだ。
■セルフマネジメントで働くチームを作る
創造性の高い仕事では、指示命令をしても成果が出ない。これまでは、機械のように同じことをするルーチンワークだとマニュアル通りに働けば、良い仕事ができた。
しかし、この先テクノロジーが発達していくほど単純労働は減っていき、新しいものを生み出す創造的な仕事が求められる。
そうした、仕事をするためには指示命令のマネジメントしても、卓越した成果を出すことはできない。
指示命令型のマネジメントをやめて、各々が「セルフマネジメント」が出来るようなマネジメントしていくのだ。
ここでは、「セルフマネジメント」のレベルを3つに分けている。
・レベル1 自分に与えられた仕事を1人で出来る
最初に目指すレベルはこの段階だ。例えば、「カレーが欲しい」という要望に手順などを伝えなくても、材料や作り方やどのくらい時間がかかるか把握し、提供できるレベルである。
そして、自分で休息をとれることだ。身体と精神のコントロールもセルフマネジメントのうちである。
このレベルでは、与えられた仕事をこなせるがマネージャーは必要になる。
・レベル2 自分に与えられたリソースで成果を出す
このレベルは、一つの仕事ではなく、リソースを管理して成果を出す。どの仕事を優先するか、どの仕事を辞めるか。与えられた戦場において、勝利するための戦術を駆使することだ。
この段階では、プロジェクトマネジメントスキルが必要になってくる。「どのような仕事をすると大きな成果になるのか」「どうすればコストをかけずに済むのか」などより俯瞰した考え方が求められる。
このレベルでは、一般企業で言えば管理職にになる。このレベルまでくると、リソース配分のマネジメントだけですむ。
・レベル3 自分で仕事を見つけて成果を出す
このレベルになると管理されることは不要になる。リソース管理を自分で行い、自主的に仕事取り組める。
その組織やチームのビジョンや目的を理解し、行動することになる。これは、その会社や組織の経営を担うレベルである。
この段階では、より戦略的な視点が必要になってくる。未来のことを自分で考え、自分自身の成長に責任を持つのも自分なのだと理解するのだ。
このように、レベル1からレベル3まであげたが自己組織化されたチームとは、誰が誰に指示命令するわけではなく、ビジョンに向けてそれぞれが自分の得意分野ですべきこと勝手に判断して行動する。
さらに、そのすべきことの中にはお互いのスキルを補完しあうことも含まれており、その結果チームとしての成果につながる。
■評価をなくす
単純労働の評価では、目標設定が簡単で誰がやっても同じであり、やればやるだけ成果に繋がった。
しかし、創造性が求められる仕事では、目標設定も複雑である。
例えば、個人ごとの売り上げで評価すると、縁の下の力持ち的な仕事をしている人たちを評価できない。
さらに、専門性の高い仕事になると上司より部下の方が詳しいという場合もある。結果数字でしか判断できないとなってしまう。
一時的な良い評価や悪い評価によって人のやる気をコントロールしようとするのは、大きな手間をかけて評価することに対して、結果的に得れるものが少ない。
それでは、どう評価するのかというと、結論は「評価しない」のだ。
これを「ノーレイティング」というアメリカで始まった人事評価の動きだ。評価をせず、リアルタイムで対話をし、フィードバックする機会を増やしていく方法だ。
では、評価をなくしたらどうやって報酬や昇格を決めるか?と思うかもしれないが、著者が取った方法はシンプルだ。
「職種ごとに基本的に給与はほぼ一律にして、賞与は山分け」
個人ごとの差をなくしたのだ。本質的ではない目標設定もなくなり、マネジメント側の負担も大きく低減された。
評価がなかったら「社員の成長欲がなくなるのではないか?」とか「不公平じゃないか?」とか「優秀な人はやめるのではないか?」とそんなことを思うだろう。
パフォーマンスの良い社員と悪い社員を評価しないで、給与で差をつけないと同じ給与なのに生産性の高い社員ばかりが仕事をするはめになる。
しかし、「成果を出してしまえば、それ以上に稼ぐ仕事をしなくてもよい」と決めれば、生産性を高めて成果を短時間で出せるようになれば、時間に余裕ができる。
新しく生まれた時間に対して、新しい仕事を入れず、その時間は自分がやりたい仕事をしてもいいというルールなのだ。
つまり、報酬は給与ではなく「自由にできる時間」ということだ。ここで注意したいのが、金銭的な報酬だけをモチベーションにしている人にはやっていけないということだ。
反対に、自由な時間を得て勉強をしたり、新しいことを試したい人はやっていける。
そして、個人の視点でやりたいことを会社の視点で考えても意味があるようにすりあわせしていく。本当に自分のやりたいことならば、管理しなくても取り組み、それが会社のためになるのならいいことしかない。
究極的には、「自分がやりたいこと」ではあるが、会社のためという観点を持てば、遠慮することなく支援や応援をもらえることなる。そうすることで、結果的にトータルで得なのだ。
私の要約では伝えきれなかった内容も沢山あるので、この本が気になった方は、実際に読むことをオススメします。私は、たった一冊の本でも「人生は豊かになる」と思っています。
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■私の考察
本書の著者、倉貫さんの株式会社ソニックガーデンは働き方がほんとに面白い。
まず、この会社は「納品のない受託開発」というコンセプトで月額制の料金でプログラマが顧問として担当してくれて、時間ではなく成果を提供している。
やることは、プロダクトの開発や新規事業などのパートナーとなってくれる。
そして、働き方が自由だ。「いつどこで働いてもよい」から始まり、副業OK、売り上げノルマなし、休暇取り放題、経費は承認なく使える、雇用契約でも個人事業主としての契約も選べる。
この会社は、「遊ぶように働き、働くことを楽しむ」「家族や人生を犠牲にしてまで、事業の成功を目指さない」といったカルチャーがある。
こういった会社に魅力を感じる人は多いと思う。こんな働き方ができる会社が少ないからだ。
単純にここで働く人たちは、HPを見てもすごく楽しそうだと感じる。
純粋に「仕事が楽しい」ということにどれだけの価値があるのだろうか。
人それぞれと言ってしまえばそれまでだが、個人的には人生を楽しむ大きな要因だと思っている。
しかし、すべて人が「仕事が楽しい」と思わなくてもいいとも感じる。
先日SNSで「今日の仕事は楽しみですか?」という駅の広告が話題になっていたが、「心が折れる」「つらい」とか批判的意見が多く、広告の掲載をやめた。
たしかに、仕事は楽しくないと感じる人がほとんどだろう。
これは仕事すること自体が目的の人と、仕事をすることが何か別の目的を達成するための手段の人に分かれるのではないかと思っている。
だから、絶対的に仕事は楽しいとはならないし、もちろん楽しい人もいる。仕事以外に楽しいを見出している人もいる。
もし、あなたが「仕事は楽しい」と思っているならそれはすごい幸運だと思うし、そうじゃなくても仕事を楽しいに変えることができるかもしれない。
それではまた、次の本で。
私の情報が少なからず皆さんのお役に立てればと思います。
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