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【妻が乳がんになりました】乳がんのおかげで本当の優しさを知る

「調子どう?」
妻が乳がんになってからは「おはよう」の代わりがこの言葉になった。

「うーん ちょっと頭痛い」
くらいの返事だったが最近は
「気持ち悪い」
という返事が増えた。
今日も
「調子どう?」
と妻に聞きそうになったが
「おはよう」
という言葉に変えた。

だってそうだろう。
がんで左胸とリンパ節を切って、まだ1ヶ月ほどしか経っていない。
そんな状況で抗がん剤治療だ。
調子が良いわけがあるまい。
「調子どう?」って聞くことが優しさだと、俺は今のいままで信じて疑ったことはない。
しかし調子が悪いとわかっている人間に「調子どう?」なんて聞いてもなんの役にも立たないのだ。
単なるこちらの自己満足に過ぎない。
じゃ、どうすれば良いのか?
それは黙ったそばにいてやること。

「ねえ、ちょっと背中さすってくれる?」
あまり食欲がない中、唯一食べられるのは今は梨。
梨を食べ終えたあと、妻は俺にそういった。
妻の背中を摩るなんて何年振りだろう?
そんなことを考えながらしばらく摩ると
「ありがとう。少し楽になったわ」
と妻。
その言葉を聞くと俺は妻との間で数年ぶりに暖かいものが流れた感じがした。

明日も何も言わずにそばにいてやろう。

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