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“曲がった”のは性格だけじゃない?【慢性副鼻腔炎・鼻中隔湾曲症】手術を受けてきた

9月某日、鼻にまつわる手術を受けてきました。

入院自体初めてではないし、はっきり言って命に関わるような重大な疾患でもないため、手術前はかなり気楽に考えていたんです。

実際、前日の入院〜手術直前までは超イージーモード。

映画見て、飽きたら寝て、3食勝手に出てくるとか最高かよ?

などと、病室の窓から残暑厳しい街を闊歩するサラリーマンを眺めながら、謎の優越感に浸っていました。

しかし、手術当日。全身麻酔から目覚めたその瞬間。

地獄の日々が幕開けたのであります(笑)


親知らずの抜歯で発症した「慢性副鼻腔炎」

出典:神谷耳鼻咽喉科

もともと小さい頃から鼻に違和感(ふとしたタイミングで鼻水が止まらない、鼻血が出やすい、鼻の通りが悪い)を感じていました。

しかし、ちゃんと耳鼻咽喉科を受診し始めたのは、大人になってからであり、ごくごくここ最近のこと。

鼻で呼吸ができていなかったわけではないし、すぐに死ぬわけでもないから、放置しながら生活していました。

人間、日常生活に“そこまで”支障がないと、なかなか通院しようという気にはなれない生き物です。

そんな僕がなぜ、35歳にもなって耳鼻科を受診したのかと言うと、きっかけは上の見出しにも書いた「左上親知らずの抜歯」でした。

出典:あいデンタルクリニック

じつは上顎の親知らずが生えているポケットは、頭蓋骨の中にある空洞「副鼻腔」と繋がっています。(人によっても個人差があり、抜いても問題ない人が大半)

僕の場合、親知らずの抜歯後、この穴がうまく閉じなかったことで、口腔内の雑菌が副鼻腔内に侵入。結果、炎症を起こしてしまったのです。

抜歯後、口を濯ぐと鼻から水が出るようになり、鼻の奥が「ツーン」と痛む。さらに膿で鼻も詰まり、たいへん息苦しい。

この症状は手術をするまでの間、定期的に僕を苦しめていました。

もちろん、抜歯した歯医者には何度も通いましたが、「穴が自然に閉じるのを待つしかない。抗生剤出しておきます」の一辺倒。

自分なりに調べると、もはやこうなると歯医者ではなく、耳鼻咽喉科の領域であるという答えに辿り着きました。

埒があかなそうなので、耳鼻咽喉科に相談しにいったのです。

耳鼻科のCTスキャンで判明「鼻中隔湾曲症」

歯医者の失敗を活かし、耳鼻咽喉科も2件受診。

その2件目で、「一応、CT撮りましょうか」と提案を受けました。

※イメージ
出典:神谷耳鼻咽喉科

そして、画面に映し出された自分の頭蓋骨(副鼻腔)を見て驚愕。

副鼻腔の「腔」部分は「膿」で真っ白に映り、空洞がまるでない!(笑)

しかも綺麗に左側だけで、右側はきちんとスペースが残っている。「あぁ。やっぱり親知らずの抜歯が原因だったんだ」と、答え合わせをしている気分でした。

落胆して驚く僕に、先生が続けます。

耳鼻科医:「武田さん、それともう一つあって。鼻中隔という左右の鼻を隔てている壁があるんですが、それが大きく曲がっているせいで、右の鼻の空気の通りを邪魔しているんですねぇ」

オレ氏:「……え? 右ですか? 左の副鼻腔炎側じゃなくて?」

耳鼻科医:「はい。左側は副鼻腔炎による膿で呼吸がしにくくて、右側は(物理的に)曲がっているせいで、呼吸がしにくい状態なんです」

オレ氏:はぁ〜(てかオレ、どうやって呼吸してたん?笑)

出典:老木医院

さらに詳しく話を聞くと、この症状は手術入院でかなり改善されるらしく、おすすめもできるということ。

もちろん保険適用されるし、高額医療費制度も使えば医療費も8万円〜くらい。さらに生命保険入っていれば、マイナスにはならなそうと判断。

前置きが長くなりましたが、そんな経緯があり、今回の手術入院へと踏み切ったわけです。

いざ手術へ

紹介先の大きな病院へ

今回、僕が受けた手術は以下の3つ。と言っても、別々に受けたわけではなく、一度の手術で全て終わりました。

先生からの「どうせなら一緒にやっちゃいましょう」というすゝめで、3つの症状を一気に解消するための手術でした。

・内視鏡下鼻腔手術Ⅰ型(下鼻甲介手術)
・鼻中隔矯正術
・内視鏡下鼻・副鼻腔手術Ⅲ型

医学用語あるある。漢字の羅列により何の手術なのかわからない方も多いと思うので、一つずつざっくりと説明します。(僕の理解している範囲で)

内視鏡下鼻腔手術Ⅰ型(下鼻甲介手術)

執刀医からは「下鼻甲介切除術」と説明されたと記憶しています。

長年のアレルギー反応により腫れてしまった「下鼻甲介」をダイエット(削ぎ落として減量)することにより、鼻通りを良くする手術です。

鼻中隔矯正術

続いてこちら。CTによって判明した、鼻曲がり症。鼻の中の粘膜をはがし、軟骨を削りとって矯正します。正しく区画整理をすることで、空気の通りをスムーズにする手術です。

内視鏡下鼻・副鼻腔手術Ⅲ型

慢性副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症)を緩和するための手術。鼻腔内にたまった膿を取り出し、頭痛や鼻詰まりを改善する手術です。

大昔はそれこそ、上唇の裏をメスで切って顔面の皮と肉を剥がして行うという、おぞましい手術だったそうな(笑)

今は内視鏡で鼻の穴の中からアプローチするので、体への負担や痛みもほぼありません。(実際に体験したのでガチ楽です)

数多くの犠牲のもとで成り立っている医学の進歩には、本当に感謝ですね。

入院生活:入院日・手術当日

大部屋に空きがなく初日・2日目までは個室でした

手術日の前日に入院、翌日の午後イチで手術。

術後、5日間は病院で過ごす必要があるため、6泊7日の入院生活でした。(病院によっては日帰りも可能だそうです)

Mr.テイタラクとは私のことだよ

手術前日はすることもないので、病室でリモートワーク。

勤務時間終了後は、PCでテキトーに映画見ながら、プリングルス食ってコーラ飲んでみたいな。スーパー怠惰な生活をしておりました(笑)

寝る時間こそ遅かったものの、その日はよく眠れました。

元気だった手術直前?に撮った一枚

そして翌日、予定通りの時刻にオペ室へと案内され、麻酔医によって麻酔が全身に送り込まれる。

「ジワ〜」っとした感覚を最後に、寝ている間に手術は終了。もちろん痛みもなく、あっという間でした。

入院生活:手術後〜5日間

地獄の日々が始まる

出典:いらすとや

手術室から病室へと戻り、麻酔で意識が朦朧とする中、あらためて自分の今の“状態”を正しく把握しました。

_人人人人人人人人人人人人人人人人_
> ちょっと待って。すごい苦しい。 <
 ̄Y^Y^ Y^Y^Y^Y^^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄

それもそのはず。

切開による手術だったため、止血用のタンポンがこれでもかと鼻の穴の中にぎっしり詰め込まれているのです。

完全鼻閉。そう、完全なるまでに鼻閉状態。鼻呼吸が全くできない

瀕死の姿

口呼吸しかできないので、口が乾く。とにかくカラカラになる。

鼻から空気が抜けず、「耳キーン」という痛みが襲うため、飲み物もほとんど飲めません。喉はひどく乾くのに、飲むことができない。(僕の場合、3日で1.0Lをやっと飲みきれるペースでした)

同じ理由で嚥下もシンドイ。食欲は順調に減退。それでも、点滴外すためには食べなきゃいけない。

口呼吸しながら話すため、看護師さんとの会話も息が切れ切れ。

なぜ病室で寝ているだけなのに、こんなに疲れるのか?

時間が永遠に感じる。

気を紛らわすために徘徊。院内の廊下で“ゾンビ化”していた

地獄だ。控えめに言って、これは地獄だ。

確かに聖人君子のカケラもないような人生ではあったが、あまりにも代償としては大きすぎる。

これが新しい日々への、“イニシエーション・ヘル”(通過儀礼のような地獄)だとわかっていても、それでもとにかく辛い。今が辛い。

明日や未来のことを考える余裕など、当時の自分には全く残っていませんでした。

出典:いらすとや

みなさんも想像してほしい。忍者の「水遁(すいとん)の術」を。

これで日常過ごすようなものですよ? そりゃ辛いって。

もともと鼻詰まりで口呼吸だから、楽勝じゃね?」と思った人もいるかもしれませんが、じつは口だけで呼吸をしているつもりでも、鼻から微量の空気は入ってきています。

微量でも入るだけで全然違うのです。口呼吸と鼻呼吸の効率の違い、ナメたらアカン

そして、次第に精神も蝕まれていきます。

「寝ている間に口呼吸もできなくなって、死んだりして」
「この天井を見ながら、あの世へ逝ってしまった人もいるんだよな」
「なぜ自分はこんなにも不幸なんだ?」
「やっぱ手術受けなきゃよかった」

※上記無限ループ


「もっとも死に近い場所」そういう感覚に陥る

病院という閉鎖的な空間もブーストをかけ、覚醒している間はとことん精神が不安定になり、「逃げたい・死にたい・楽になりたい」しか考えられなくなります。

そして口呼吸のせいで夜はうまく眠れない。寝ていると口の渇きで目が醒めるからです。

結局、退院するまでの間、自分は眠剤に頼ることで、なんとか1日3時間でも寝られるようにしていました。

思えば入院初日、「安全のため、窓は10センチしか開きません」とスタッフの人に説明されたのを思いだした。

そりゃ、飛び降りちゃう人もいるだろうね、と思います。

自分もその瀬戸際にいました。冗談抜きで。

入院生活:手術後5日目

やっとガーゼを抜去

ガーゼ抜去の朝、虹が。なんとロマンティック!

もうこの瞬間のために、ここ数日は生きてきたと言っても過言ではないくらい、待ちに待ったガーゼ抜去の日。

処置室に呼ばれ、若い先生から説明を受けます。

先生:「じゃあ、これからガーゼ抜きますね。ちょっと痛いです。あと血がかなり出ます。人によっては具合が悪くなることもあるので、辛かったら言ってくださいね」

痛み?

そんなものは「苦しさ」に比べれば、なんてことない。一瞬ガマンすれば終わる話なので、そこに恐怖は感じなかったです。

どデカい先細りのペンチのようなもので、一気に先生がガーゼを引き抜きます。

(……ゾゾゾゾォォオオオオオオ……チュルリ!!!)

と脳内に響く音。脳天の遥か奥の方から、どこからともなく現れるガーゼ。

1本25センチはありそうな、ほぼ千歳飴と同じような長さのガーゼがお目見え。

_人人人人人人人人人_
> 長くね!! ?? <
 ̄Y^Y^^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄

先生:「はい。一本取れましたよ。あと2本入ってますからね。がんばってください」

_人人人人人人人人人人_
> あと2本!! ?? <
 ̄Y^Y^^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄

そりゃ苦しわけですよ。このサイズが3本入っていたら。

先生の手により、手際よく取り出されるガーゼ。

しかし、解放されたその瞬間……

鼻から「スーーーーーーーーーーーーーーーン!!!」と空気が入り込みます。


出典:いらすとや

オレ、生きてる

シンプルにそう感じる。息ができるって、とても幸せなことなんですね。

その施術後、トイレへ。

便座に座った瞬間。涙が溢れた。

よく頑張ったなぁ(泣)と。自分を褒めたい気分でした。

まとめ:みなさんへの感謝

燦々と照りつける太陽の中、帰宅。勝ちました!

そんなわけで、手術と入院生活は無事終了。退院してカフェでこの記事を書いております。

執筆している現在も完治はしておらず、経過観察というステータスです。

ただ、治りかけの現時点ですでに、鼻の状態はスコブル良好。

術前とは空気の通りがあきらかに異なり、鼻でしっかり呼吸できています。マジですごい。

そして、独り身の僕が辛い入院生活を乗り越えられたのは、家族・友人をはじめ、いろんな方々が支えてくれ、応援のメッセージを送ってくれたからだと思っています。(ご自分の生活でみんな忙しいのに申し訳ない)

DMだったり、LINEだったり、ときには電話だったり。

何度、泣いたことか(笑)

そういう意味では、執刀医より耳鼻科の先生より、周囲の人々への感謝の気持ちのほうが断然大きいです。

入院生活で、本来のあるべき「SNSの正しい使い方」というのを再認識しました。離れていても、コミュニケーションが取れる。とても素晴らしいことです。

「言葉」は使い方を間違えれば、刃になる。

でも、人々を勇気づけ、強くすることだってできる。

ポジティブな言葉は、ポジティブな影響を生み出すと、身をもって体験した入院生活でした。

あらためて、メッセージをくれたみなさん。本当にありがとうございました。

みなさんのおかげで、“呼吸するよろこび”を吸い込みながら、毎日を過ごしております。

この場をかりて、御礼の挨拶とさせてください。

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