アートで街を育てる、広報視点のインバウンド戦略!
エリアセッション:東京
(インバウンドサミット 2021年6月19日)
https://www.youtube.com/watch?v=-bwcjfiDgZM&t=1s
・脇山 亜希子 - 寺田倉庫 執行役員
https://www.terrada.co.jp/ja/
・酒井 寛子 - 三菱地所 広報部 マネージャー
https://www.mec.co.jp/mec-go-next/?id=main
・馬場 由紀子 - 日本空港ビルデング株式会社 広報・ブランド戦略室 次長
https://www.tokyo-airport-bldg.co.jp
・渡邊 茂一 - 森ビル タウンマネジメント事業部 TMマーケティング・コミュニケーション部 https://www.mori.co.jp
【ホッシーのつぶやき】
都市にアートが必要だという理由、都市が訪日客の入口になり現代アートから伝統工芸まで触れることの重要性を感じるセッションでした。
・人間の意識の5%しか言語化できておらず、95%はアートによる認識が大きい
・街にアートが大事なのは、何かが生まれるキッカケになるから
・街は、いつも新しくて、面白い人やモノ・コトに出会え、楽しい場!
・アートや美術館巡りが都市観光の核になり、行くたびに表情を変える街
・価値観が多様化し、人の琴線に触れるものも違う、いろんな切り口を用意する
・羽田空港は、インバウンドが到着し、最初に伝統工芸や文化、アートに触れる場
・文化庁の助成金は、DMOや観光事業者との連携の要件が増えている
・政府も、助成金だけでなく、アートを活用した経済活性化に舵を切っている
脇山:「アートで街を育てる、広報視点のインバウンド戦略」のセッションを始めます。オーガナイザーを務めさせていただきます寺田倉庫広報担当の脇山と申します。スピーカーには、アートのパワーを借りてシティブランディングに注力されている企業の広報担当にお集まりいただきました。それでは自己紹介と所属企業の取り組みについてお話し頂ければと思います。
渡邊:森ビルの渡邊と申します。森ビルは、都市を作り都市を育む会社で、約1600名の社員で約100棟の建物を運営し約3000テナントが入居しています。プロジェクトの多くは東京都心部にあり、現在、虎ノ門と隣接する虎ノ門麻布台に2つの大きなプロジェクトを進められており2023年に完成予定です。
都市づくりの根底にあるのが「ヴァーティカル・ガーデンシティ」という考え方です。オフィス、店舗、住宅、交通インフラといった都市機能を垂直方向に積み重ねて集積し、空いた地上部を緑化する考え方で都市を作っています。大切にしているのが、安心安全、環境みどり、文化芸術で、特に都市に人やモノを惹きつける磁力として「文化芸術」が欠かせないと考えております。
代表的なものが2003年にオープンした“六本木ヒルズ”です。“六本木ヒルズ”では、現代美術を扱う美術館を54階建てタワーの最上階に設置して、そこから最先端の現代美術を発信し続けており、今ではアジアを代表する現代美術館として認識され、毎年、世界中から約4000万人の方をお迎えしております。
他にもチームラボと共同して「森ビル・デジタルアートミュージアム・チームラボ・ボーダレス」を2018年にお台場にオープンいたしました。年間来訪者が230万人で、その半分が外国からのお客様です。このような取り組みは他の再開発プロジェクトにも広がっており、本日はこのような視点からアートで街を育んでいく議論をしたいと思います。
酒井:三菱地所の酒井と申します。弊社はまちづくりをやっている会社です。世間で三菱地所は「丸の内が大家さん」と言われることが多いのですが、営業収益の7割は丸の内以外でして、事業エリアは日本全国、海外30カ国以上で展開しています。事業内容も、オフィス、住宅、データセンター、発電といろいろ手掛けており、スタートアップ支援にも力を入れています。
特徴は、時代や社会の要請に応じて街やビジネスモデルを変えてきたことです。例えば丸の内、近代日本の幕開けの頃は経済インフラとなるビジネス街を整備し、高度経済成長期はオフィス需要に応じて増床し、経済が成熟して精神的な豊かさが求められる今は、文化商業教育など多機能なまちづくりへと変化させています。
弊社のアートへの取り組みは、1972年、丸の内の目抜き通りにパブリックアート展示を始めてからになります。1990年頃には、街を構成する重要な要素としてアートという文字が社内資料に明記されており、2002年竣工の建替え後の丸ビルはアート作品が散りばめられており、街全体を美術館として楽しめるように設計されています。弊社の特徴は町や通りを面的に使っており、行政、地権者、企業、個人などいろんな方と連携してやっていることです。今は世界各国から訪れ、休日の来街者は2002年から2018年で約3倍に増加しています。美術館も当社直営運営しております。平常時の来館者は年30万人から40万人あり、街へのシャワー効果を果たしています。
最近、文化庁の実証実験「artist in the office」にも協力しました。政府も、未来投資戦略会議などでアート支援を補助金などの支援だけではなく、「アートを活用した経済活性化」に舵を切っています。内閣官房と文化庁も文化経済戦略を策定して、文化と経済の好循環の実現を目指しています。
人類にとっての古い道具とは、食べる、飲む、身を守る、生きるための道具、そして、音や言語、コミュニケーションを取る道具になりますが、機能や宗教儀礼などでは説明できない装飾、美、アートなどが盛り込まれていると多くの文化人類学者が指摘されています。おそらくアートは、キレイとか、凄いとか、怖いとか、何かしら人間の心が形になったものではないかと思われます。
街やビジネスにアートが大事なのは、新しい何かが生まれるキッカケになるところです。アーティストは前例や常識に捉われず、本質をみつめて新しい見方をしようとする人たちです。従来の人から見ると異物混入に感じるかもしれないですが、それが革新や新しい未来を生む、そういう要素はビジネスにおいても社会においても重要な視点だと思っております。
馬場:日本空港ビルデング株式会社、広報の馬場と申します。弊社は羽田空港の旅客ターミナルビルを建設・管理・運営している会社です。羽田空港は国管理空港で、当社は国から滑走路などの土地をお借りして旅客ターミナルビルを運営しており、成田、中部、関空、伊丹の会社管理空港とは異なります。
羽田空港には3つの旅客ターミナルビルと4本の滑走路があり総面積は約1516万ヘクタールです。コロナ前の2019年の羽田空港の旅客者数は8500万人で、世界第5位、日本では第1位の空港です。従業員は約8万7000人おり、単純換算すると1日約23万人が行き交う場になります。羽田空港は国内線48路線、国際線53都市58路線が就航し、国際航空ネットワークの主要拠点でもあります。航空需要の増加とともに発着枠が増加し、それに併せて旅客ターミナルビルも増改築してまいりました。また2021年の東京オリパラに備え、7月には第3ターミナルのビジネスジェット専用ゲートも供用が開始されます。
コロナ収束時期は、国際航空運送協会(IATA)によると、2019年頃の旅客需要に回復するのは国内線で2022年春頃、国際線では2023年頃と予想されています。
羽田空港の利点は、何と言っても都心へのアクセスが良いことです。2029年にJRの羽田空港アクセス線が開通し東京駅まで約18分で直通運転されます。政府目標の2030年インバウンド6千万人を達成するためにも「首都圏の国際競争力の強化」「地方を元気に」「より多くの外国人観光客を迎え」「東京オリパラを円滑に開催」が課題となっています。
羽田エリアは、先端技術の実証実験やジャパンカルチャー体験を創出して、日本初のスマートエアポートシティを目指しています。羽田連絡道路の橋が21年度末に完成し、ライフサイエンス最先端研究機関が集まる川崎の殿町地区「キングスカイフロント」と結ばれ空港と一体的なエリアとなり、ここにアートテクノロジーセンターができてアートイベントも開催できるようになります。
羽田空港は1993年頃から若手芸術家を応援するために無償で場所を提供し、多くの人の目に触れる機会を創出してきました。その中のお一人が“千住 博”さんでした。第2ターミナルは設計段階から千住先生にアートディレクションを依頼し、随所に作品を展示するとともに、BGMとして千住 真理子の「フォーシーズン」という曲が流れております。これは千住明氏が博氏の作品から発想を得て作曲し、千住麻里子氏がヴァイオリン演奏するという千住3兄弟の共同作品になります。
さらに第2ターミナル本館南側に増築される商業施設には、おもてなしをアートの領域にという「the art of hospitality」が作られ、世界中からスタイルの違う260点以上のチェアーやテーブルが設置され、さらに日本の空港として初のミュージアム「ディスカバリーミュージアム」を開設しております。このように羽田空港では、アートを施設空間の一部として配置し、お客様に触れていただき感じていただくことを目指しております。
脇山:寺田倉庫は品川区、天王洲地区を拠点とする倉庫会社で、従業員は約130人ですがその多くが何らかの形でアート事業に関わりを持っている会社です。私たちは、モノだけでなく価値をお預かりするという理念に基づき、アート、メディア、建築模型などをお預かりし次世代に継承する保管事業に取り組んでいます。
当社の拠点、天王洲は羽田空港からのアクセスに恵まれ、品川駅からの徒歩圏内にありながら水辺空間と現代アートを体感できる貴重なロケーションになっています。幅広い用途にご利用いただけるイベントスペースはライブ配信システムを完備しており、面積は延べ6000平方メートルに及びます。一番大きな空間では世界で記録的成功を収めた「デビットボウイ大回顧展」だったり、「スターウォーズアイデンティティ」を開催しており、今年は「バンクシーって誰?展」を開催します。魅力的なコンテンツの開催により来訪者も年々増加しています。
1975年より美術品保管を始めており、美術品の修復、梱包、配送、展示といった事業も展開させてきました。2012年以降は若手作家のアートアワードの主催や日本最大のアートコンプレックスなど施設の運営にも取り組んでいます。昨年12月には現代アートのコレクターズミュージアム「WHAT」をオープンさせ、ここはコレクターからお預かりしている作品を公開するミュージアムになります。またWHATカフェでは、お食事をお楽しみながら未来を担う作家のアートを鑑賞し購入することもできます。これらの施設は文化観光推進法のもと民間企業で初めて事業採択を受けております。
パネルディスカッションに移行させていただきます。コロナ禍で2019年に4.8兆円あった市場が消滅しました。そして今、コロナワクチンが急速に普及し、世界の国際観光が急速に戻りつつある中、インバウンドの再スタートに向けて、今、何ができるのかを議論したいと思います。
渡邊さん、森ビルさんは、文化芸術を都市づくりの核とミッションに掲げられており、このメンバーの中でも一番アートに深い造詣を持たれていると思いますので、「何故、今アートなのか」を語っていただけますか。
渡邊:私が思う「何故、今アートなのか」の1つ目はアート取り巻く環境です。今の社会はものすごく成熟しており、製品・サービスも感性的な価値に興味をもたれています。一方で、人間に目を向けると、人間と意識の5%しか言語化できておらず、認識できていない95%の非言語化領域の価値も非常に高いと思われます。そのような中で、アートが果たすコミュニケーションの役割はますます大きくなるということです。
2つ目は、アートやアーティストと対峙する価値です。例えば、街作りとしてパブリックアートを設置する時、アーティストと一緒に作品を作るわけですが、アーティストも町の歴史やプロジェクトの背景をものすごく勉強されます。その過程で我々もアーティストと一緒に議論し、皆んなが持っていた思いや課題が構造化されていきます。そのプロセスで「志」をシェアできることが大きな価値だと思います。この議論を経て出来上がった作品は街や場に結びついているので、作品としての強度も高くなると思われます。その魅力が人々を惹きつけますし、最終的に観光資源にも資することのではないかと思っています。
脇山:言語化できているのは5パーセントに過ぎないのですね。アート領域における経験に紐づいたコメントが素晴らしいと思いました。三菱地所さんは魅力的な観光資源だったり、アートを通じて町の価値を再構築されていますが、東京が世界から選ばれる街になるためには、何が求められるのでしょうか?
酒井:グローバルな都市間競争における街の魅力を考えた時、論点は一つでなく複合的になると思います。都市の価値が多様化していて、それぞれ心の琴線に触れるものが違うので、いろんな切り口を用意するのが良いと思います。人によって文化、アートが良い方もいれば、経済がいい、自然環境、きれいな空気がいいも魅力の一つだと思っていて、インバウンドであればエキゾチックな風景や体験、食事、都市観光であれば、アートや建築巡り、ショッピング、イベントが主要コンテンツになると思います。弊社が目指しているのは、街に行くと、いつも新しくて面白い人やモノ、コトに出会えて、刺激があるので楽しいを目指しており、有楽町に築年数が経過したビルをたくさん保有しているので、今後、有楽町のリノベーションや建て替えを進める時に、どうすれば街の価値を高められるのかイノベーションが起きるのかを考え、訪れる人がクリエイティビティを感じ、アートが触媒として新たな視点や人の流れをもたらすと考えています。
脇山:地域活性化の取り組みを民間が中心となり実践することで、街の魅力を高め、アートや美術館巡りが都市観光における核になり、その度に表情を変える街を作ることは凄く大事です。これからはインバウンドがリピーター化することを計算に入れないといけないと感じました。羽田空港のアート作品が話題になっていますがどのような効果を期待されているのでしょうか?
馬場:羽田空港は日本の空の玄関口として、世界に日本文化や情報の発信拠点になることを目指しています。観光需要を想起させることもそうですが、インバウンドが日本に到着して、最初に日本の素晴らしい伝統工芸や文化、アート作品や匠の技、最先端技術などを目に触れてもらい、日本の魅力を感じていただくこと、日本各地を訪れてみたいと思っていただくこと、東京を起点に地方も活性化する仕組みを作ることを考えてます。
脇山:ここからは、インバウンドに対して「今やっておくべき方法・施策を3つ」お話いただきたいと思います。
寺田倉庫では21アカウントのSNSを運用しています。SNSの運用が定着する前は広報がSNSをパトロールして、ガチガチのガイドラインで運用していたのですが、今はそんな時代では無いと思っています。それでも炎上と背中合わせなので危機管理はしっかり行うべきで、そこは広報が運用ガイドラインを定期的にアップデートしています。
渡邊:私たちもSNSの発信を強化していますが、皆さんはSNSをどのように使い分けされていますか?
脇山:ソーシャルリスニング(SNS上で交わされる自然な会話を収集・分析する手法)で言うと、一番強いのはツイッターだと思っていて、私も朝はエゴサーチ(自サイトの評価の確認)から始まり、寝る時もエゴサーチで終わります。インスタは美しいものが多いので作品をできるだけ多く出したいツールです。またエゴサーチが付いた芸術文化のブランディングでいってもインスタだと思います。その代わり「版権」などの管理はとても大変です。著作権も大変だし、名前を間違えると一大事になるので、作家さんとの確認作業をシッカリ行いながら発信しています。またフェイスブックはターゲティング広告が優秀なので、広告はフェイスブックを活用しております。
脇山:あと去年の今頃、SNS発信を皆さんはどのようにされましたか?
渡邊:森ビルではSNS発信は止めました。
脇山:SNS運用者がしょんぼんとしている時期がありましたが、転んでもただでは起きない、その間に動画制作スキルとか、広告配信単価を下げる努力だとか改善され、自粛期間における良い副産物と言えます。
また、どんなSNSが刺さるかというのは自治体や企業によって違うと思いますが、それぞれの情報は総務省統計局だったりリサーチ会社である程度の予測は立てられると思います。
渡邊:「皆さん、来てください」と言えなかったけど、研究できる時間でもありました。アプリもlinkedin(世界最大のビジネスSNS) とか、WhatsApp(39か国語に対応している無料のチャットアプリ)とか、ウィチャット(世界で10億人ユーザーいるアプリ)とか、日本でどれくらい使う人がいるか分からないけどグローバルで見ると利用者が多いですね。
羽田空港さんもグローバルなSNSにリーチするのは、今後重要そうですね。
馬場:本当に力を入れなければいけないと思っています。コロナ禍で人を呼べなかったので、公式youtubeのアカウントも最近作りこれから動画やインスタを活用しなければと思っております。
脇山:2つ目は、感性の価値の重要性が増していることです。最近、インスタユーザーが国内外で増加傾向にある理由は感性の重要性だと思うのです。デザインやアートには国境がないのでビジュアルに訴えかけるデザイン、写真をできるだけ使うようにしています。
3つ目は助成金、実証実験です。今日ご参加の方は観光庁の実証実験や助成金はよくご存知だと思いますが、“文化庁助成金制度”についてご紹介いたします。文化庁の助成金は、もはや文化関係者に限定した事業ではなくてDMOや観光事業者との連携が必須条件に加えられたり、補助率がアップしたりするものが増えています。また申請・審査において、周辺企業、自治体、交通会社などの連携が重視されるようにもなっています。これらの結果として、周囲を巻き込みダイナミックな取り組みを実施するきっかけにもなっていますので、是非、文化庁の制度も活用していただきたいと思います。
渡邊:助成金、実証実験は、お金のメリットもありますが、パートナーが増えて、情報流通量が増すのもメリットですね。
脇山:国に支援していただく事業を自社が営んでいることは、現場のモチベーションアップにも繋がりますし、対外的なPRにつながりますね。
馬場:今年2月27から文化庁の「CULTURE GATE to JAPAN」プロジェクト、新千歳、成田、羽田、関空、中部、福岡、那覇の7空港で、メディア芸術日本発信プロジェクトが行われています。羽田空港と成田空港でのテーマが「ビジョンゲート」になり、キュレーターにパオラ・アントネッリ氏をお迎えして、各アーティストさんが日本文化を感じたものを作品にしておられます。写真は68本のラッパで、日本語も母音をプログラミングして細く長く音を出して和音のようなサウンドを流すものです。
これは日本をイメージしたアーティストさんの映像作品を、ゲートにデジタルサイネージに流したものです。
担当者から広告活動について聞いた話では、アートカルチャーにアプローチするのは欧米中心であり、トラベル系とは別グループが担当され、海外のどのような媒体に発信するかは個人的人脈で調べたと言われていました。アートだけではなく、ファッション業界や芸術デザイン、音楽、文化、カルチャーを包括的に扱うメディアにアプローチしたり、世界のインフルエンサーに愛されるメディアもターゲットにされたと言われていました。またキレイな映像に力を入れ、羽田空港のインスタにアート作品を載せたのですがアクセスが伸びませんでした。何故かというと、当社は飛行機や空港などニッチなファンが多いので、アートに引っ掛けて端の方で飛行機が飛んでいるような絵にするとアクセスが飛躍的に延び、これもノウハウとして残りました。今回は文化庁のプロジェクトですが、羽田空港はアートだけじゃなくて、国土交通省と経産省と連携してロボットの実証導入を目指すプロジェクトも実施しております。
脇山:始めたSNSは最後まで運用しなければという時代でも無いので、反応が悪ければ変えればいいというフレキシビリティがあってもいいと思います。
酒井:私どもの1つ目は、街づくりを通じて社会に貢献することが目的なので、私たちがSNSで発信してもいいのですが、街に来てくれた人にSNSで発信してもらうほうが効果的なので、来訪者を増やして、発信してもらえるような感動を仕掛けることが大事かと思います。またデジタルサイネージをたくさん設置してイベントを見てもらうようにもしています。コロナで人の行動や流れが変わるという認識もあるので、コロナ前からの人の行動変容とか、個人に最適化された体験にデジタルの活用も重要視しています。ひょっとしたらデジタルツイン(物理空間から取得した情報をもとに、デジタル空間にコピーを再現する技術)みたいな発想になるかもしれないと思います。
2つ目に企業広報として大事なのが、自分たちの事業や取り組みを発信することも重要ですが、それと同じくらいに重要なのが、社会の意見や反応を会社に届けることだと思います。
3つ目は、自分たちの伝えたいこととメディアとか社会が知りたいことへの橋の架け方、手段やツールも含めて考えることです。各メディアさん、各記者さん、それぞれが読者、視聴者を抱えており、その人たちに向けて情報発信しているので、編集方針や情報の取り扱い方もそれぞれ変わってきます。同じ一つの物事でも、NHKの情報番組とその他の情報番組では切り口が全く変わります。それぞれの切り口にあった見せ方を用意することだと思います。また、メディアの役割の1つに社会課題を提示して、解決方策を指し示すという役割もあると思うので、メディアさんと一緒になって課題を考えたり、読者、視聴者にどのような情報を届けたらいいのかを考えていく、そのためにはフラットになって、社会は何を求めているのかを考え、相手の立場に立つことも大事だと思います。
渡邊:私が考えた3点の1つ目は、自由にメッセージを発信してあまりコントロールしない時は、メッセージを皆んなと共有することが非常に重要です。だからこそ自由に発信できるのだと思います。
2つ目は、ターゲットに合わせたメディアの扱い方です。この図は六本木ヒルズに村上隆さんの作品を設置する時に、どういうメディアで、どういうコミュニケーションを取るかをプロットしたものですが、ターゲットが色々なのでジグソー的にメディア展開した方がいいと思っています。時代やターゲットによってメディアも変わりますし、SNSでもこれをやってあれをやめてということがあります。また、メッセージとターゲットがしっかり分かっていれば、重層的なメディア展開ができると思います。
3つ目は、フレキシブルに情報を発信していく時に重要なのはしっかりした運用体制を持つことです。安定的、継続的に発信しつつ、常に新しいことをやるのは労力がかかるので、きちんと仕組み化することだと思います。そのため外部のパートナーにお願いすることもあると思います。
脇山:今日の内容をまとめました。“何故アートなのか”は、成熟社会なのだからこそ感性価値が重要になっている。アーティストと対峙することで物語のある作品や街が生まれる。“準備と体制”では、アート事業の意識の統一と目的の可視化。「伝えたいこと」と「メディアや社会が知りたいこと」に橋を架ける。“アートで街を育てる広報視点のインバウンド対策”では、アートは国境を越えるので攻めの発信。行政や企業との連携。重層的なメディア展開が重要になると感じました。
渡邊:有名なアーチストと必ずしも組む必要もないと思います。町の方向性、志みたいなのをシェアできる、同じ方向を向いているアーティスト、職人さんたちと組んでいくのが重要な気がします。
酒井:何も無い魅力というものもありますし、都市は都市の魅力もあるし、普通の日本人の生活が見ることも魅力になるかもしれません。
脇山:LINEで「凄いライバルとセッションしているんだね」と言われたのですけど、国内市場ではライバルになるかもしれないけど、インバウンド領域ではライバルでは無いですよね。
渡邊:オールジャパンで、東京全体で、磁力を高めていかなければならないですね。
脇山:国内市場では敵でも訪日市場ではワンチームという考えのもと、ナレッジをシェアさせていただき、明日からでも実践できることをお伝えしてきましたので、少しでも役に立てると嬉しです。
残り時間が3分となりましたので、1人1分でメッセージをお願いします。
馬場:今日は勉強させていただきました。アートという切り口では羽田空港はこれからですが、インバウンドや羽田空港からの送客についてはお役に立てますので、街の活性化も含めてご一緒できればと思いました。
酒井:街同士の連携も大事になると思うので、モビリティをつなぐとか、アートイベントを一緒にやるとか、連携しながら盛り上げることが大事だと思いました。
寺山修司の「書を捨てよ、町に出よう」に「そうやって腰掛けて待ってたって何も始まらないよ」というセリフがありますが、書を捨てなくてもいいので「街へ旅をしよう」というメッセージを出していきたいです。
渡邊:私がお伝えしたいのは「アーティストとぜひ組んでみてください」です。アーティストと向かい合うのは大変なことありますが、相当の気づきが得られると思うので、是非、挑戦しいただきたいと思います。