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「移住者・旅人が増えれば、町づくりが楽しくなる」 長野県辰野町の挑戦!

カテゴリーセッション:観光まちづくり 「コロナ後の地域・観光づくり」
(インバウンドサミット2021 2021年6月19日)
https://www.youtube.com/watch?v=sdnycZ20oRA&t=14s

観光まちづくり

松尾 崇:Airbnb Japan 広報部長
 米国大学院卒業 大手PR会社で企業の「課題解決型/啓発型」後方支援に強み
 2008年から2016年東京オリパラ招致委員会・国内広報担当責任者として東京都出向
野澤 隆生:辰野町 産業振興課 商工振興係長 兼 企業支援係長 兼 地籍調査係長
 2001年辰野町役場に入庁、観光や移住・定住に従事。辰野青年会議所統括副理事長、日本青年会議所長野ブロック協議会委員長
赤羽 孝太:◯と編集社 代表理事
 ワクワク系まちづくり会社として、企画とデザインと建築で「地域の今を再編集」
谷口 紀泰:Airbnb Japan ホームシェアリング事業統括本部 事業開発部 部長(パブリックセクター担当)兼 営業部 部長
 大手ECサイトの海外戦略担当を経て2020年エアビー入社。
 観光庁、地方自治体と各プロジェクトの有識者委員を歴任

【ホッシーのつぶやき】
少子高齢化や人口減少で苦しんでいる地方が多い中、「楽しい」と「人口減少」はそれほど関係がない」「町に関わる人が増えれば、楽しく思える」と野澤さんは喝破されます。
「辰野から行ける範囲は辰野町」と行政の壁を越えた活動も、「2021年住みたい田舎ランキング」3位につながっているのでしょう。
最近のエアビーでは、日付指定のない宿泊検索が活発化しているといい、長期滞在が増え、人の繋がりを求める旅が増えるといいます。コロナ後の新しい観光需要を感じます。宿泊施設を提供するエアビーが地域とタッグを組めば、新しい地方創生が起こりそうです。

松尾:ポストコロナの観光をどうしていくのか、その時のために「今やっておけることは何だろう」を皆さんとお話ししたいと思います。今後の「観光」は、普通の街の魅力を感じてもらうことであり、そのために、どのようにコミュニティを作っていくべきなのかという問題提起をいただいております。
本日のアジェンダです。
1、 コロナ禍のエアビーの取り組み
2、 辰野町の「まちづくりの考え方」について
3、 新しい時代の観光需要の創出について
4、 コロナ後を見据えたこれからの「地域・観光づくり」

エアビーの取り組みについて簡単にご紹介いたします。エアビーは2008年創業で「誰もがどこにでも居場所を感じることができる世界を作る」をミッションとし、空き家、空き部屋をプラットフォームに掲載しています。現在、220の国と地域、10万の都市で、560万の宿泊施設(リスティング)を持ち、空き家、空き部屋を持つホストと宿泊場所を探すゲストをオンライン上でマッチングさせています。体験も重要視しており、1000の都市で数万件のユニークなアクティビティを提供しており、コロナ禍では、オンライン体験も人気です。

谷口:「コロナ禍のエアビーの取り組み」を紹介させていただきます。コロナ禍では「近場の国内」「3密を避ける」「長期滞在型ワーケーション」に取り組み、一棟貸切施設が長期滞在や女子会に活用されています。今は、日付指定のない検索が活発化しており、コロナ後の需要急増を感じています。旅行範囲が広がっており、長期滞在が増えており、「28日以上の予約」が、2019年は14%だったものが2021年の第一四半期では24%に上がったのもトレンドです。これらを考慮して、これまで日付選択してから宿泊を検索するのが主流でしたが、柔軟に選べるように機能改善にも取り組んでいます。

松尾:長野県辰野町の「まちづくりの考え方」についてお話を進めてまいります。辰野町は非常にユニークな取り組みをされているので、お話をお伺いしたいと思います。

野澤:辰野町の紹介をさせていただきます。日本の地理的中心に位置し、首都圏や中京圏にアクセスが良く、自然が豊かで、今、1万匹を越すゲンジボタルが飛んでいます。毎年約70人の移住があり、「2021年住みたい田舎ランキング」3位になりました。

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辰野町の特徴は「ローカルofローカル」です。地方は人口減少、少子高齢化、空き家が増えており、辰野町も同じですが、私たちはこれを宝だと思っています。地価や物件が安く、空き家バンクの成約率も85%と高いです。空き家・空き店舗のDIY改修に協力する体制も作っています。
辰野町は「ありのままでいれる、生きやすさ」が特徴で、「ありのまま」をキーワードに、面白い人が面白い人を呼んできているので、町の役割としては、ヒト・コト・モノをワンストップでつなぎ、どちらかがお願いする関係ではなく、お互いにワクワクする「共創関係」を目指しています。

まちづくり

赤羽:辰野町で“まちづくり会社”をやっています。移住・定住がメインだったりしますが、エアビーの宿を通して旅人との接点もありますので、まち歩きやガイドサイクリングツアーなどもやっており、旅人との出会いも街の面白さに変えていけたらと思っております。また、移住者の中にはゲストハウスをやりたいと言われる方もおられるので、皆でDIY作業をして作ったりもしています。
「そんな多様性のある町は、住む人も、旅人も、きっと面白いと思う」がキーワードです。

旅人との接点

松尾:ここから皆さんとディスカッションをしたいと思います。野澤さんからは、「様々なやりたいことを持った人が、各々に活動する中から多様性が生まれる」とのお話があり、赤羽さんからは「普通のリアリティある生活を見てもらうことが求められている」と言われました。しかしなぜ辰野町は、このような文化があり、楽しくて、誰でも受け入れられる多様性があり、旅行者も気持ちよくなれるのでしょうか?

野澤:多分「心が裸」だからです。社会で生きていると息苦しさを感じられることもあると思います。それが辰野町には無くて、心を裸にして、家族のような付き合いが始まるからだと思います。我々も本当に良いものしか紹介しませんし、自分が感動しているから良いのだと思います。

松尾:なるほど… 野澤さんも赤羽さんもたくさんの役割を持っておられるから、国内外から色々な方が訪れるのですね。

野澤:人口は1万9千人を切っていますので、人口減少は辰野町でも起こっていますが、楽しいのと人口減少はそれほど関係がないと思っています。町に関わる人が増えれば、自分の居場所がある町になり、楽しく思えるのだと思います。そして旅行者からも「辰野町は良かったよ」と言ってもらえれば、訪れる人も増え、辰野町を好きになってくれる人も増えると考えています。

松尾:チャットに「国内外の旅行者にとって、辰野町に行く目的は何でしょう?」とのコメントが寄せられていますのでお答えいただきたいと思います。

野澤:旅行者は「リアルな生活の姿」を案内すると喜ばれます。特別なことはせず、一緒に遊ぶだけなのですが、その自然体のところが良い評価につながり、リピーターも増えているのだと思います。

赤羽:海外から来られる方は、1時間くらいの移動は大した距離じゃないと思っておられます。また長期滞在する方は、1時間、2時間離れた所に遊びに行かれます。距離に対する感覚が大きく違っているようです。だから「辰野から行ける範囲は辰野町」という感覚で見ています。

松尾:別の方のコメントですが、「辰野町の住民の方は、旅行者に対して需要的なのでしょうか? リアリティを感じる生活を見られることに抵抗はないのでしょうか?」

野澤:「私は見せられない」という方も当然おられます。面白い人が面白い人を呼び込んでくるので、面白いことを歓迎する方も多くおられます。縁側でおじいちゃん、おばあちゃんが、旅人と一緒にお茶を飲んでいたりします。こういうことが意外と楽しかったりするのです。

松尾:次に「新しい時代の観光需要の創出」について考えたいと思います。これは「関係人口」をどのように作っていくかになりますが、エアビーのホストさんも、そのホストさんを何回も訪れるゲストさんとの関係が、いろいろな地域で生まれているのですが、野澤さんや赤羽さんのような地域のコミュニティとの交流が進めている点がポイントだと思っています。

谷口:コロナ後を見据えて、今後、強まる旅のニーズは「人とのつながりの旅」が一番大きくなると見ています。先ほどの質問にあった「なぜ、辰野に来るのですか?」も、辰野を訪れ、何もせずにゆっくりする、それを地元の方につなぐコミュニティがしっかり作られているから感じることができ、リピーターも増えているのだと思います。
このデータはコロナにより、「人との繋がりが強まったか、弱まったか」を聞いたものですが、「やや弱まった」35%、「非常に弱まった」20%と、55%方が、繋がりが弱まったと感じられており、その反動で、人との繋がりを求める方が増えると見ています。

人との繋がりが   弱まった55%

また、「コロナが収束したら、どこへいきたいですか」を聞いた所、「自然に近い場所」40%、「居住地から近い、車で行ける距離」32%となっており、長野県はこの条件に合っているのだと思います。

コロナ後の旅行

これまでの観光は「目的地を求めて、非日常を味わい、多くの体験をしたい」が多く、これからも多いと思われますが、これからの観光、特に若い方は「SNSでクチコミを見て目的地を探し、日常の体験や共感が強いコンテンツを求め、地元の方との交流により生まれる体験」に価値を感じる方が増えてくると見ています。

クチコミ・共感・質

ここからは、何度も訪れたくなる「行きつけの田舎」というコミュニティを作るゲストハウス「古民家ゆいまーる」(矢ヶ崎浩一郎・芳恵さんご夫妻)の事例を、ビディオでご紹介します。
「このまちの日常へ」「ふと、立ち寄ったまちの普段の暮らし、誰かの日常、みたいな旅もいい」「元気な時は遊びに出かけて、疲れたら少し立ち止まる。旅の中の中休み」(ビディオの中のキャッチコピーも素敵です)
こちらのゲストハウスにはリピータで何度も訪れている横田さんファミリーもおられるといい、ホストさんとゲストさんの関係性が近い点も挙げられます。
「古民家ゆいまーる」には、世界中からインバウンドが訪れています。これはコロナ前の写真ですが、どちらがホストで、どちらがゲストかわからないので気に入っています。こうしてクチコミが広がり、辰野町を目指す方が増えるのだと思います。

インバウンド

長い期間、ゆっくり日本を旅するお客さんにとって、日常の体験をしっかり味わっていただくのは、とても有効だと思います。
ホストとして意識されていることをお聞きしますと、①旅マエにゲストの要望をヒアリングして、②ウェルカムな雰囲気を作り、③ゲストを地域の人やお店に紹介するが挙げられていました。特に旅マエのヒアリングに力を入れられており、来られる前に関係性が構築されるので、来られた時、「はじめまして」より「ようやく会えましたね」との会話になるといいます。またレストランに行く時も「うちに止まられているゲストさんなのですよ」と紹介されることで、お店さんも喜ばれるし、ゲストも喜ぶという関係にも気を配られています。

松尾:最後に「コロナ後を見据えたこれからの地域・観光づくり」についてのセッションに移らせていただきます。

野澤:辰野町が目指すことは、①辰野から行ける範囲は「すべて辰野の魅力」として、辰野以外の地域も魅力的なコンテンツは、広域でシェアするとの考え方でご紹介しています。②ダイバシティは地域観光の成功のキーワードとして、来る方も多様性であれば、受け入れる方も多様性として、来られた方に一番合った方をご紹介しています。そうすると、その日のうちに友達以上の関係が生まれたりします。③これまでも「関係人口」に取り組んできましたが、この「関係人口」を越えて、同じ方向を目指す仲間とワクワクする「共創人口」を目指しており、これが「持続可能な観光」を作るのだと考えています。

赤羽:弊社でもレンタサイクル事業を行なっており、ガイドが案内する地域ツアーを開催し、辰野町を超えて案内しております。これからは行政区域を越えた活動が重要になると思っています。また、ワクワクすることって未来のことで、未来は分からないですが、今より楽しいことにして、日々が、少しずつ刺激があることだと考えていますので、面白い日常になるのだと思います。

松尾:お二人だけでなくいろいろな方とお会いしますが、移住したり、お仕事を始められたりされている方が何人もいて、皆さんワクワクしているという言葉が飛び出してきます。

谷口:エアビーが目指すこと、ポストパンデミックは、①人とのつながりが重要になってくるので、素敵なホストさんとともに新しい観光需要を作っていきたい。②オンラインのお客様は選択肢がないと旅がしづらいので、選択肢を増やす。③地方経済への寄与として、関係人口を増やしていけるように考えています。また現在サポート対象言語は11言語ですが、42言語に増やす計画です。

松尾:最後に本日のまとめとしてパネラーの皆さんに語ってもらいたいと思います。

野澤:地域ごとに違う色があってそれで良いと思っています。そして、ありのままの地域をリアルに伝えるだけで魅力あるものになると思っています。

赤羽:このインバウンドサミットに参加して感じたことは、単価を上げていくという話もありましたが、新しい商品を作っていくという話もあり、これが私の心に響きました。地方の小さな日常体験もそうですが、商品化していければ、無理なく新しい商品が作れるのかなあと思いました。そして観光の先にまちづくりがあるのかなあと思いました。

谷口:今回、辰野町のまちづくりの方とお話しさせていただいて、旅行と移住の間の需要が増えており、観光だけでなく、地域おこしの方やまちづくりの方とタッグを組んで取り組む必要があると感じました。

松尾:今日は、観光まちづくりセッションとして「コロナ後の地域・観光づくり」のお話ができて良かったと思っております。インバウンドも国内旅行のお客様も、「人に会いに行く」旅行はずっと必要なテーマだと思っており、そのためには魅力ある地域づくりや観光づくりが必要なのだと改めて感じました。
本日はありがとうございました。

ZOOM写真


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