ECBのユーロ高への反応

ドル円現在106.18〜106.19
レンジ予想105.70〜106.60
ゲスト野村証券 後藤裕二朗さん

NY市場では為替市場全般的に小動きとなった。米国株が反発した事に加えて、米国金利が上昇した事もあり、ドル円相場は106円台回復して堅調に推移している。本日は欧州時間にECB会合が控えている。アジア時間には目立ったイベントが予定されてない為、ドル円相場もECB会合待ちといった形で小動きとなりそうだ。

ECBは、6月の会合で追加緩和を決定している為、今日の会合で政策変更の可能性は低いと思う。しかし、夏場にかけてユーロ上昇の勢いが詰まった事から為替市場ではECBがユーロ高を牽制するまではといった警戒感が高まっている。この警戒感の高まりは、ここ1〜2週間、対ユーロ中心にドルが全般的に買い戻しされる背景にもなっている。ECBの対応は、ドル相場全般にも影響を及ぼしそうだ。

キャ)過去にはどの様な対応があったのか?

例えば、2018年3月や4月の会合では、総裁が記者会見冒頭で為替の動向を注視すると言及した。当時のユーロドル1.2台上回っていた為、現在の水準よりもユーロ高ドル安だった。ただ、ドル以外での主要通貨に対する値動きの総合した名目実効相場で見ると、足元ではユーロは当時より高い水準で上昇している。この点、ECBがユーロ高への警戒感を示す可能性は否定出来ない状況だ。

キャ)ECBが出来る具体的な策はあるか?

実は、政策手段は限られていると思っている。マイナス金利を深掘りすればユーロ安効果は大きくなりそうだが、金融機関への悪影響懸念からそのハードルは非常に高そうだ。仮に量的緩和の拡大となると、イタリアなど周辺国の国債のスプレッド縮小や、欧州の株高により逆にユーロ高になってしまう可能性もある。その為、ユーロ高警戒発言があったとしても、市場はその効果に懐疑的になりそうだ。ユーロ高警戒発言はユーロ上昇のスピード調整に繋がる可能性はあるが、仮にあったとしてもトレンドの転換には至らなさそうだ。当面でユーロドルは1.18前後を維持して年末に向けては再度1.20を試す展開になりそうだ。