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グラフは作成者の色が出る

前回のトピックにした大きい数字の話。

こちらに出てきた統計局のグラフで気になるものがありました。

人口推計(令和4年(2022年)4月確定値、令和4年(2022年)9月概算値)(2022年9月20日公表)

人口推移のグラフです。
これを見た感想はいかがでしょうか?じんこう2019年以降すごく減ってきていて、最近2021年くらいからさらにと印象ではないでしょうか?


ちょっと変わるのですが、次の二つのグラフを見てください。

令和4年9月報 (令和4年4月確定値、令和4年9月概算値)(PDF:307KB)から作成

2つのグラフを見てどう感じたでしょうか?
並べられるとそうかと思った人もいるかもしれません。

どちらも同じデータのグラフです。最初にお見せしたグラフを少し期間が短くなったグラフです。
何が違うかというと、縦軸のスケールが違います。
①は1.24億から1.275億までの350万の幅
②は0から1.4億までの1.4億の幅があるグラフです。

この2つを比べて、どちらのグラフが正しいのかという議論は正しくありません。どちらも正しいグラフです。(数字を変えたりしているわけではないので。)
ちなみ折れ線グラフをExcelで作った場合、①のグラフがデフォルトで②は私が意図的に最小値を0に変更したものです。

折れ線グラフという性質上トレンドの変化をつかむことを目的に作成されることが大きいため①のようなグラフがデフォルトになりますが、全体から見るとそこまで大きな変化ではないようにも思えるグラフ②となります。

人口減少が問題ではないと言いたいのかという議論をしたいわけでもなく、10年で人口が400万人ほど減少していることの危機感は十分に感じています。今回もそういう議論をしたいわけではなく、グラフは作成者の意図が表現されたものだということが今回一番言いたいことです。

また次のグラフを見てください。

①のグラフと②のグラフどちらの方が減っている感出るでしょうか?
②の方が傾きが急になります。もちろんどちらも同じデータで作成されたグラフです。

たとえば①②のグラフに人口が2021年以降減少が加速していると書かれている資料を見た場合どちらの方が減少がやばいと思うでしょうか?

②の方がぱっと見減少しているように見えますかね。実は縦のスケール以外にも横幅を変えるだけで減少の傾きを調整する方法もあったりします。

このようなデータを見たときに、誤解をしないようにデータを見る力が必要だと考えています。

ちなみに簡単なチェックリストとしては
①縦軸が0から始まっているかどうか。
 0から始まっていない時には意図的に変化を大きく見せていると考える
②急にグラフの横幅が変わっていないか(グラフを横に二つ並べるなどの変化もあり)
 変化を強調しようとしている可能性がある 
③色を変えたり、〇や□で強調するケースもあります。

何度も言いますが、
これらはもともと、作成者(プレゼンター)が伝えたいメッセージを補強するためにグラフを利用しているので、間違いではありません。メッセージを鵜呑みにする前にグラフの特徴とメッセージ以外のデータをちゃんと理解したうえで、プレゼンターのメッセージを吟味する必要があるのでうす。

最後に自分は、調査会社の時に基本は縦棒グラフを使うように指示されていました。

いつも通り自分が作るとまずはこんなグラフ。分かりにくいよなぁと直すときもある

縦棒グラフは自動作成の場合0から始まることが多いことからわかるように全体のボリュームを表示するために利用されるグラフで誤解を生みにくいという理由からです。
自分が作る場合、あえて、2019年までは年ごとの数字なので意図的にここは他と違うとわかってもらうために色変えます。こちらの方が変化が大きくめるからです。

とはいえ、これはこれで見やすいかという問題はあります。
ほとんど変わってないから問題ないという意思決定をしてしまったときに長期的に取り返しのつかないところまで行ってしまうケースもあります。

例えば、今回の人口のように増加に転じさせるためには大きな時間がかかるもの(労働人口何て特にそうですね)の危機感を強めるためには減少幅が大きく見えるようなグラフにした方がメッセージが伝わりやすくなることもあります。

あえてもう一度言いますが、グラフは作成者の意図を反映したものである。

グラフはただ作ればよいものではなく、目的や意図に沿ったグラフを選択、スケールを決めることで、大きくイメージが変わるということを理解したうえでグラフをつくる必要があると作り手として、見るものとしてはこの考えはぶれないようにしています。

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