祖父と祖父
龍巳祖父は、画家だった。父方の祖父だ。
もう一人の祖父は、かつて、新聞記者だった。それが、母方の祖父。
将棋が、かなり、強かった。近所では、負けなしだったらしい。教えてもらい何度も打っていた。
小学生の頃、そこから、帰る時に、起こった出来事。かなり、長い踏切が、あった。警笛が、鳴り出したので、渡らずに止まった。母方の祖父が、駅まで送ってくれていた。音が、鳴り出して急いで渡って行った。
電車が、通り過ぎて、渡って行ったら、母方の祖父に平手打ちをされた。
何を怒っていたのか意味不明だった。
どうやら心配したらしかったが、子供に手をあげるのは、いかがなものか、と、思った。
帰ったら母親が、子供の時は、気に入らない事が、あると、暴力をふるわれた、と、言っていた。
親戚などから平手打ちをくらったのは、それが、最初で最後だった。
高校生の時、体育の授業中、前に呼び出されて平手打ちを受けた事が、あった。
何も言わずに元の場所に戻った。隣にいたクラスメイトが、その後、ちょっかいをかけてくる事は、なくなった。それ以後、顔を見ると、目を逸らし申し訳なさそうに距離をおいていた。
平手打ちをされた原因は、そのクラスメイトにあった。そいつが、しゃべりかけてきたのが、原因だった。間違えて前に呼び出されて平手打ちされるというバカバカしいというか、アホらしい事態だった。
それについては、その後、沈黙しかなかった。男は、黙って耐えるというのが、セオリーというか、習性になっていたからだ。
小学生になった頃は、よくしゃべっていた、と、思う。教師に対して質問などもしていた。たぶん、教師が、簡単に答えることのできない質問を。別に悪気は、なかった。困らせようとする気持ちは、なかった。ただ、純粋に知りたかっただけ。
図書館に色んな本が、ある。そこから、答えを得る事が、できるでしょう。それが、教師の答えだった。
そこから、本を読み出して、質問する事が、減った。クラスメイトの少女が、他の男子に、対して男は、しゃべらないのが、男で、しゃべったらダメなどと言っているのを聞いて、しゃべらなくなっていった。正しい男として生きるために。
さて、母方の実家へ、それから、年に数回は、家族共々行っていた。主に夏休みや冬休み。それ以後、祖父から平手打ちをうけたり暴力をふるわれたことは、なかった。成長期に入り身長や体重が、増えた事も関係あるのでは、と、思っている。小学生二年から六年にかけて剣道を、やり続けていた事も影響しているかもしれない。
母方の祖父とは、相変わらず、会うたびに将棋をしていた。
それは、中学生くらいまで続いた。
将棋に強いというのは、祖父にとってアイデンティティの一つであった。
サンタテを、くらわせた。
つまり、三連勝した。小学生から中学生になり、将棋の本を読み漁ったのが、要因だろう。
父親は、将棋に対して、思い入れもなく強くなかった。クラスメイトとも、打っていた。それが、練習になっただろうか?
それ以後、祖父と何度か打ったが、打てば打つほど、こちらが、強くなっていくのが、わかった。
一言で言えば、成長期。
越えるべき壁を、越えることが、出来て良かった、と、思う。勝ち逃げされていたら、今も、将棋をやり続けていたかもしれない。
将棋の腕は、その程度で、止まっている。
勝負とは、何かを、知る事が、出来た事に感謝。
女子供に対して、暴力をふるうヒト。その存在を、反面教師とし、正しい男として我は、生きてきた。そして、正しい男として死んでいくだろう。逝く前に、この世からヒトを滅ぼす。
全ての哺乳人間を、駆逐か家畜化し、少女達が、安心安全に暮らせる社会の実現。そのために生きるのが、男として正しいというのが、今まで生きてきた結論。
ヒトには、出来ない事。
空想上の生き物なら出来る事。
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