Firestarter -Demolition Tapes の極私的解説(後編)
前編はこちらを読んでください
前回は1999年のデモの話で終わりましたが、このCDではそのあと2004年までデモ制作は期間が空く。あたりまえの話なんだけど、2000年に1stアルバムがあり、その後シングルやセカンドのリリースもあったということで、デモではなくどんどんリリースしていく流れとなっていくからであると言えるだろう。
このアルバムより前の話、いつだったか、僕は当時笹塚に住んでいたアニキの部屋に遊びに行ったことがあった。どっち派ってことではないんだけど、僕はわりとFinkの部屋に遊びに行ったりライブ後帰れなくて泊めてもらったりしてたことが多いんだけど、このときになんでアニキのとこに遊びに行ったのか、あんまり覚えていない。なんか用があったんだっけ。7インチのテストプレスを聴いてもらうために行ったんだっけ?ほんと記憶があいまい。この時期は、ある事情により、いまぷあかうにあるような大量のレコードは別の場所に置いてあったのでちょっとのレコードしかなかったと思う。僕はFinkのとこ行ってもアニキのとこ行っても、いろんなレコード聴かせてもらう、ってのを常としていたんだけど、このときアニキがカセットを掛けたんだよね。ちょっと聴いて、って感じで。それがスタジオの練習テープだったんだけど、”Love Collector"だった。最初、なんかのカヴァーかと思って(ご存じの通り、彼らはいいカヴァー曲持ってくる最高のセンスあるから)、そう訊いたら、「新しい曲」って言われて、うわー、超絶な完成度の曲だな、って頭の中がふっとんだのだけはハッキリ覚えている。いま思えばアニキとしても自信のある曲ができたから、早出しで聴かせてくれたのかもしれない。
この文はデモの話なんで、セカンドあたりまでの話はさっと飛ばしますが、僕としてはこの時期はホントにFirestarterのライブにはほぼ顔を出し、ツアーにも何度か同行させてもらっていた。
もう一個だけ、私的なエピソードとしてはこれはツアーの車の中の話で、ツアーになるとだいたいFinkやアニキが作ったテープが車の中で掛かるので、それも僕の楽しみの一つであった。「これ誰?」なんて言って曲目見せてもらったりして。そんなとき、この前録ったやつ、って掛けてくれたのがBADGEの中村昭二のバックをつとめた”ふたりのフォトグラフ”であった。この曲自体、好きな曲であったが、完全に良い形でアップデートされてるじゃんか!ってびっくりした。これはヴォーカルと別々に録ったということで本当にこの形でのライブが実現するのはずいぶんあとのことになる。
話それたが、"DEC 11. 2004"デモの話になる。これはライナーによると惜しくも制作されなかった3rdアルバム用のデモ、ということである。なぜ3rdは出なかったのか、これも複数のあいまいな記憶証言があるので、自分なりに少し時系列の裏付け調査をしたんですが、単純な話、この時期にFinkがバンドを脱退しているんですよね(ここに収録されている楽曲には参加している)。なんでFinkが脱退したのか?本人からもうっすら聞いたことがあるが、彼自身もソングライターであるので、曲のストックがたくさんあり、自分の曲をやるバンドをやりたかったわけだが、Firestarterにおいては"Don't Mind""My Baby's Back"を演るのが定番となっていた。個人的には他の曲もやっていけばいいのにな、と思っていたのだけど、バンドとしてのポリシーみたいなものがあったんだろう。結果としてFinkはFirestarterを脱退し、Raydiosを再スタートさせることとなる。なので、Firestarterは3人体制にて建て直しとなり、日本語詞など試行錯誤もありつつ次のギタリスト宮鍋が加入するまでには少し間が空くこととなる。宮鍋込みの録音も存在するという話もあるが、それはこのCDには含まれていない。
この2004のデモではBruce Springsteenの1stに入ってる"Growin' Up"をカヴァーしている。おもえば、僕らはよくスプリングティーンの話をしていたかもしれない。Finkや、あと友人の皆川くんらと"The River"あたりの話をすることがよくあった。この"Growin' Up"はオリジナルはフォーク・ロック的でもあるのだが、歌詞や歌、曲そのものに力があるので、パンクにアレンジされたFirestarterのヴァージョンをライブで初めて聴いたときグッと来まくった記憶がある。そして、"Bay City Rollers"だ。これはその名のとおりBCR賛歌であると思うが、思い出すことは上に書いた皆川くんの住んでいたアパートに集まって開催されていた「夕べ」という集まりのことだ。最初は「Artful Dodgerの夕べ」と題し、Artful Dodgerの1st~4thまでを飲みながらぶっ通しでみんなで聴いて、おーっていうだけの集まりだった(個人的にはこれがのちのぷあかうの存在につながったと思ってますが笑)。で、テーマにそってレコードを持ち寄って聴いて、聴きながら1枚のMDに録っていくというあつまりになっていったんだけど、その一つのテーマとして「ベイシティ・ローラーズ」的なるものという時があった。ティーニー・バップとかジャンク・ショップ・グラムみたいなものも混じってくると思うんだけど、そういうものをみんなで持ち寄って聴いたときがあった。いい大人が集まってどうか、と思う部分も無くはないが(笑)われわれは、いい曲だよねー、というのと、それがどんな環境だったり、どんな気持ちで作られたんだろうとかそういうことにまで思いを馳せるのが好きだった。それがこの曲の元になったのかな?となんとなく思っている。その後"Junk Shop"というワードを元にした曲もできたりホリーの企画の名前にもなったと思うけど。
Firestarterの良いところとして、すごく珍しい、知らないバンドを教えてくれるというのもあるけど、すごく有名なバンドの良さみたいなものを再度気づかせてくれるようなところもあった。それはこのようなカヴァーや賛歌に表れていると思っている。
最後に"Crazy Kids"のカヴァーが入ってるね。遅い早いとかいうのもダサいけど、2000年でこの曲を演ってた、という意味がなんとなくあるんだよね、自分的には。タイミングの話かな。Firestarterはライブでいろんなカヴァーやってて、それも楽しみの一つであった。ライブを録ってる人は多かったから、集めればライブ・カヴァー集とかできそうだけどね。
なんのオチもないけど、基本このCDの話なので、Firestarterのその他のエピソードはまた別の機会に書きたいと思います。
また彼らのライブを生で観ることができる日がくるのを願って。