Firestarter -Demolition Tapes の極私的解説(前編)
先日の配信ライブを観たのもあり、Firestarterについて書いてみようかな、と思って。
Firestarterの1998~2004年のデモを集めた(2000年のライブも1曲入っている)"Demolition Tapes"なるCDが出たので、これについて書いてみます。
今から書くことは、まずこれ買って聴いてないとわかんない話なのかもしれないんで、そこは許してね。
このCDにはMangrove Labelによる、ごく簡単なメモのような解説が付いている。あえて、このようなシンプルな解説にしていると思うので、これについてああだこうだ解説を加えるのは野暮ではあるんだけど、自分にとって非常に重要なバンドであるからして、そこも許してね。
まあ、このCDに挿入されている解説がなぜこんなにもシンプルなのか。音だけを聴いてくれ、みたいなクールな理由もあると思うんだけど、もうひとつは、あまりに昔のことゆえ、関係している皆の記憶があいまいであり、それらの証言が合致して事実と認定できるようなことだけを書いたらここまでそぎ落とされた、ということも言えるのではないか笑。
僕のところにも2回ほど確認が来た。いちどはJimboくんからリリースの時系列の話。2度目はTCO氏から、デモにどんな曲が入っていたか、いつ頃手にしたか、みたいな話だった。
いろいろと情報が錯綜し問題となったのは"DEC 30 1998"と"APR 5 1999"、"NOV 7 1999"の関連性である!おそらくFinkのレコーディング時のマスターに書いてあるメモで日付がハッキリしているんだろうから、それはOKなんだけど、どのような形でテープとして出回ったのか?これがいまいちわかんないんだよね。当時テープとして手にした人で持ってる人は自分のと照らし合わせてみればよいと思いますが、出回ったのが同一の曲目ではない、ということがなんとなくわかってる。こうやってCDの形で出た今、そんなのどうだっていいじゃん、と言えばそれまでだが。
今から思えば1995~1996年、Teengenerateの解散を経てのFirestarterの誕生はその後の日本のパンク・シーンにおける大きな事件であったと思うのだが、Fifi、Sammy、Jimboの3人によってスタートしたFirestarterに関しては、いったいなにをやろうとしているんだろうかというのを今一つ読み取れない感もあり、みんな遠巻きに見ていた。僕の見立てとしては、後期Teengenerateにせよ、クロロホルム期のRegistratorsにせよ、バンド自体は70sパンクを指向したものに変化していったものの、海外からの目線では大きく「ガレージパンク」という括りのままであり、アニキはそこんとこハッキリ「パンク」にしたかったのではないか、と思う。僕の当時の印象としてはFirestarterはまさしくハードパンクであった。たしか、Dogsの"Slash Your Face"などもレパートリーとしていたし、このデモに入っている中のハードめな曲はすでに原型ができていた。
この写真は、3人時代の初期Firestarter1997年頃の新宿ジャム。まあ、アニキだけをとらえた写真なので、何人時代かわかんないけどね笑。3人の時です。
しばらくして(1998年頃?)Finkが加入し、Firestarterの方向性がハッキリしてきたと思う。ようするに、パンクもパワーポップも全部入った僕にとっては最高のやつになっていくわけだ。と前後してTweezersが終息に向かっていく(のちに復活するけどね)
で、デモ・テープの話なんですが、今回伝聞したことを総合すると、バンドの周りに配るというよりは、各地にライブに行った際にその土地の友人に渡す、などの行為により広がっていたということじゃないかと思う。この時点でこれだけのオリジナル曲がこのクオリティで存在していて、しかもライブにも掛けてないいわゆる没曲もあるというのが、このバンドが目指していたところのレベルの高さを感じさせるところだろう。Finkに聞いたことがあるのだが、バンドに曲をもっていくと、兄弟お互いにジャッジが入って、採用にならない曲もあるという。ようするに、デモ録音までに至らなかった没曲もいっぱいあったということだ。あと、ここで言えることは、Teengenerateの曲"1979"、Raydios用の曲"My Baby's Back""Don't MInd"、Tweezersの曲"Trashy Dreams"をFirestarterヴァージョンで録音しなおしているということである。ようするに、Finkが加わった時点で、いままでの集大成的バンドにするという姿が見えていたのではないかと思う。
すごく記憶が薄いのだけど、自分でかつてファンジンに書いたことも併せて考えると、僕が手にしたのは、7インチを出す前提で編集されたテープであり、このCDでいうところのDEC. 30. 1998とAPR.5 1999の合わせ技みたいな内容であり、曲によっては数種のミックスが入っているものであった。7インチに収録した曲は先に出されたリマスター盤の1stアルバムにほぼ同じものが入っているので、このデモ集には入ってないということだろうけど、APR.5 1999の一部だと思われる。
僕は当時、Finkにもらったテープの中から4曲を選び、それを新たにDATでマスターとして預かった。で、もともとのカセットはバックアップのつもりでダビングしとこう、って思ってダブルデッキの右と左を間違えて、潰すつもりのテープの音源を重ねちゃったんだよね、、、笑。トム・ウェイツを上に被せちゃった笑
Firestarterのレコードリリースの順番は、時系列で言えばAd-Viceコンピの次に7インチということになるが、7インチはカッティングをやり直したということがあったので、本来だったら7インチの方が先に出ていたのかもしれない。そこで彼らが狙っていたのはTeengenerateの代名詞でもあったLo-Fiな録音からの脱却であったと思うのだが、残念ながらTarget Earthの7インチはその期待に応えることができなかった(ようするに音が粗いものに仕上がってしまった)しかしながら、Ad-Viceコンピとそこに入っているバンドたちの音源、そしてFirestarterの7インチは2000年に入っての新しい流れを創出したとは言えるだろう。ここで流れが変わったというのが誰もが感じたことであると思う。
NOV.7 1999デモの"Destroy All Radios"だが、時期的には上記2つのリリースが決まった前後に録音されたものだと思うが、解説にもあるとおり、この曲はこの後推敲が重ねられ、一時期日本語化したりもしながら、ここに収録されているのとはかなり変わった形としてレパートリーに定着した。
1999年頃のFirestarter。アサやん影になっちゃったけど、、、新宿JAMの楽屋にて。
長くなったんで、後半に続く、にします。