佐川真佐夫が如何に天才なのかを世間に伝えるためのnote 第11話~天才に敵はいない~
俺は珍しくスーツ姿で五反田の某ビルから出てきた。新しいバイト先の面接のために訪れていたのだ。派遣会社に登録してると定期のフリーターと違い面接の頻度は多いかと思う。
今日の面接も上手くいっただろう・・・流石、天才だ・・・
しかしめったにスーツを着ないから窮屈でしょうが無い。ネクタイなんて何のためにあるのか分らない。そもそも正装がスーツって誰が決めたんだ?日本人たる者、正装は紋付袴だろう。
そんな事を思いつつ原付バイクに跨がり走り出した。
第二京浜を走っていると様々なモノが目に飛び込んでくる。歩く人たちはもちろんのこと、乗用車から大型トラックを含む種類豊富な事業車まで多くの車が飛び込んでくる。中には行儀の悪い車も走っている。俺は天才なのでルールはしっかり守り丁寧に原付を走らせる。二段階右折をさせたらプロ級だ。
前方に某有名タクシーが止まっていてお客を降ろしていた。
俺は徐行しつつタクシーの右側から追い越そうとした。
すると、タクシー、たいした確認もせず走り出した。
「あぶねぇ!!」俺は大声を上げた。
運転手に聞こえたのか?タクシーは急ブレーキをした。
俺は腹が立ったため、運転席の横に原付を寄せ罵声を浴びせた。
「殺す気か!ボケぇ!俺が死んだら世界的に大損失なんだぞ!!」
運転手は俺の罵声にカチンときたのか言い返してきた。
「ちょろちょろ走ってるからだろうが!!」
勿論、俺も言い返す。
「てめぇ、ちょっと降りて来い!!」
そこから俺たちの言い合いが始まった。客商売の癖に舐めた口を利いてくる。『馬鹿』だの『免許書』出せなど言ってくる。
俺はいい加減頭にきてとっておきの台詞を吐いた。
「舐めた口をきいてんなよ!俺はお前の会社の株主じゃ!!」
勿論、嘘。ハッタリだ。
当たり前だが運転手も信じない。
俺は、言霊に信憑性を持たせるために、すかさず付け加えた。
「てめぇ名を名乗れ!!解雇にしてやる!!佐川真佐夫を知らんのか!!お前のとこの上司なら誰でも知ってるわ!!若いからって舐めて見んなよ!!お前の所との取引はやめじゃぁぁぁぁぁぁ!!!直ぐに上司と連絡とれ!!」
流石の運転手も本当の事かと疑いだした。
「黙って、名前だけ言え。俺が連絡するから」
俺は静かにそう言い、スーツの内ポケットからスマホを取り出した。
「すみません!!」
運転手は謝りだした。
俺は心の中で大笑いした。
「すみません!!何も知らなくて・・・」
「いいから名前を言え」
運転手は謝りっぱなしだ。
「この御時世、仕事が無くなったらどうなるか解かってるだろ。もっと真面目に仕事しろ!!」
「・・・はい」
勝った・・・
俺の勝ちだ。
優し過ぎる俺様は運転手を許してやり、その場を後にした。
これが私服の時ならまず使えなかった技だろう・・・
今日という日はスーツに感謝した。
つづく・・・第12話へ
『佐川真佐夫が如何に天才なのかを世間に伝えるためのnote』
○第1話 ~概要~
○第2話 ~はじめに~
○第3話~蛙と俺~
○第4話~こんにちわ新聞屋さん~
○第5話~天才はやっぱりモテる~
○第6話~愛しのポン太~
○第7話~静電気と宇宙人~
○第8話~芥川賞を受賞した時のための記者会見の練習~
○第9話~カンニングという名の完全犯罪~
○第10話~横浜純情物語~