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フレデリック・ショパン/ヨハン・セバスティアン・バッハ
フレデリック・ショパン(1810−1849)/スケルツォ第2番変ロ短調0p。31
『スケルツォ』は元々『冗談』の意。音楽的には、ベートーベンがメヌエットに代えて交響曲やソナタの楽章に用いたことで広まった。既成ののさまざまな形態に新境地を開拓したショパンはこれを単独の楽曲として成立させ、全部で4曲の『スケルツォ』を残した。これらは、3拍子、3部形式、鋭いリズムなどスケルツォ本来の特徴を生かしながらも、情熱や華やぎ、憂愁や怒りその他種々の感情を盛り込んだ、自由な音楽として再生されている 第2番は、4曲中最も有名な作品。パリに移って7年目の1837年、マリア・ヴォジンスカという女性に失恋した時期に作曲された。曲はプレスト。挑発的な3連符と力強い和音の印象な的な応答(問いと答え』とも説かれる)=第1主題で始まり、優美な第2主題を得て3部分から成る甘美で変化に富んだ中間部へ。ここが反復され、技巧的な展開部、主部の再現の後、輝かしいコーダへと至る。親しみやすく旋律美に溢れたこの曲を、シューマンは『甘美さ、大胆さ、愛らし、激しさに充ち、バイロンの詩と比べ得る』と評した。
ヨハン・セバスティアン・バッハ(1685−1750)/、平均律クラヴィーア曲集第1巻より
バッハの鍵盤楽曲中つとに名高い『平均律クラヴィーア曲集』は、第1巻がケーテン時代の1722年 、第2巻がライプツィヒ時代の1744年にまとめられている(異説あり)。元々は長男のために書いた『ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハのためのクラヴィーア小曲集』を母体とする教育用の作品。両卷共に、、ハ長調、ハ短調,嬰ハ長調、嬰ハ短調,、、、、と半音ずつ上昇しながら24の全ての調を網羅すべく構成され、各調は『前奏曲』と『フーガ』がセットになっている。『平均律』とは、限られた調性を美しく響かせるそれまでの調律法に代わって、全ての調を均等に響かせることを可能にした調律法のこと。 ただし、現在のピアノと同じ『等分平均律』は、当時にまだ考案されておらず、原題の正確な意味は『上手く調律されたクラヴィ–ア』ある。しかしながら、バッハの音楽自体の深遠な内容とアイデアの豊富さは、ショパン『24の前奏曲』はじめ多くの同系作品を生むことになり、19世紀の大指揮者ハンス・フォン・ビューローによって、ピアノ音楽の『旧約聖書』(新約聖書はベートーヴェンのソナタ)にも例えられた。 本作では,第1巻から、第1、2、3曲の『前奏曲』と『フーガ』、および第4曲『フーガ』は、が演奏されている。 第1曲 ハ長調 BWV846『前奏曲』は、アルぺッジョ(分散和音)のみで構成。ぶ後にフランスの作曲家グノーが旋律を付して、『アヴェ・マリア』に仕立てたことでも有名だ。『フーガ』は凝縮された4声の楽曲。 第2曲 ハ短調 BWV847:「前奏曲』は16分音符がつらなる動的な音楽。後半はプレスト,アダージョ,アレグロと激変する『フーガ』は動き自体は躍動的ながらも落ち着きを感じさせる3声のフーガ。 第3曲 嬰ハ長調 BWV848:従来の調律法では正しく響かせ得なかった調ゆえに、同曲が『世界初の嬰ハ長調作品』ともいわれる。『前奏曲』は、やはり16分音符を主体とした明るく煌めいた音楽。『フーガ』は、3声で間奏部を持つ大規模な1曲。 第4曲 嬰ハ短調BWV849「フーガ」のみ収録。3つの主題から成るどう堂々とした5声のフーガは、荘重かつ崇高な趣をもつ。 フランシス・プーランク(1899−1963)/プレスト ラヴェルなどを継ぐ近代フランス”6人組”の一人プーランクは、自身ピアニストとして活動したことと相まって、ピアノ音楽を創作の大きな柱とし、エスプリに溢れる佳曲を多数生み出した。同曲は、1934年に単独で 書かれ、往年の大家ウラジミール・ホロヴィッツに献呈された作品。『急速に』を意味するタイトル通り、細かい動きが絡み合いながら駆け巡る,技巧的なピースである。
柴田克彦(音楽ライター)