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夏合宿
「気合を見せろ、気合を!!」
新チームになってあっという間に3週間。
毎日繰り替えしのボール回し。ここまで毎日続けていると不思議と滞りなく、ミスもなく連続して送球を全員が続けることができるようになっていた。
驚くことに、ここに至るまで一切練習試合がなかったのだ。1試合も対外試合がない中、自分たち1年生にとっては初めての合宿を迎えることになった。
1つ心配だったこと。それは、対外試合がなかったので先輩たちが試合をしたいストレスが溜まり続けているので、変にピりついた雰囲気をまとっていることだ。
合宿場所は、学校内にある2階建ての建物だった。1階には学生食堂があるので普段から足をはこんでいたが、まさか上の階に合宿スペースが存在していたなんて。
大浴場が完備され、大広間が2部屋あり、皆でここで雑魚寝をしながら7日間の共同生活が行われた。
普段から顔を合わせている面々であるのに、朝から晩まで一緒にいるというのは変な気分になった。なんとも言葉には出しにくいが、今だから感じることは誰よりも同じ時間を共有していたのは、間違いなく野球部の動機であったことは間違いない。
合宿中の各役割と、掃除当番を上級生2名、下級生2名で割り振られたグループ毎に振り分けた。いわゆる雑用だ。そんな中一番思い出に残っているのは、食後の片づけだ。
同じグループの同級生と、何の打ち合わせもしていないが暗黙の了解として、先輩に
「自分たちが片付けやるので、ゆっくり休んでください」
と伝えて、2人で食後の片づけを行った。
片づけは残飯の処理と、食器の洗い物。
食器の洗い物は食洗器がなかったので、全部手洗いだった。
食器の洗い物が終われば
「はーい、お疲れ」
の号令が2人の号令になったのだ。
この時間が一番思い出に残っている理由として、同級生だけでの作業で気遣わなくて済んだこと、食堂のおばちゃんと仲良くなったこと、あとはリラックスできるタイミングだったからだ。
集団生活だから、無意識に気を張り続けていたのだろう。だからホッとできるこの時間が居心地がよかったのだ。
合宿生活は、
起床→朝練→朝食→午前練習→昼食→午後練習→夕食→夜練習→自主練習
この繰り返しの中、午後練習と夕食の間に「宿題」の時間が設けられていたのだ。
理由?簡単です。先輩方が勉強嫌いだった。そのため、学業の成績が振るわないので、連帯責任という名の勉強会となったのです。
そんな濃い内容の合宿もいよいよ最終日。
恒例?行事となっていた「飛びノック」
ノックは、自分のポジションについて飛んできたボールを取って投げる。
「飛びノック」は、「飛ぶ」がメイン。ボールが取れるまでとにかく飛びつく。
手が届くところでなくても飛んで、飛んで、飛びまくる。
正確には飛びつく。
ユニホームも、自分自身もすべてが泥だらけ。
そんな中聞こえてくるのが・・
「おいおいおい、そんなんでいいのかー!」
「気合をみせろ、気合を!!」
根性と、開き直りを学ぶことができた練習だったかなと今では思い返せるようになった。