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日本1の生カキ生産の秘密
錦秋の北海道紀行 (その3) ( 釧路から最北の根室迄の旅-特に厚岸湖の日本1の生カキ生成促進要因とは)
2023.12.28 記 石河正夫
釧路駅は根室本線と釧路本線とが交差する要衝となっており、釧路市内では宿泊したのみであった。駅の建物もサビがあり、近辺は意外に静かであった。
というのは、釧路は北海道で最大の漁港という記憶が頭の隅にあったからだ。とはいえ静かすぎるではないか?
釧路の漁獲高を調べてみると、やはり4年連続全国第2位であった。
昨年は17万2426トン(NHK News Web 調べ)。
ちなみに、第1位は千葉県の銚子で23万6155トンであった。
まあ、ちょっと考えてみれば、漁業関係者は鉄道を利用することは皆無であるからかもしれない。でも見学者などはいないのだろうか?小生などはちょっとでも漁港を見学したいものだと思った。(後で調べてみると、JR釧路駅から徒歩15分の距離にあるとのこと)
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JR釧路前の朝の風景
さて、朝食をビュッフェスタイルでとり、われわれ数十人が貸し切りの列車に乗り込むと、この「ひとめぐり号」は根室の方向に向かった。
後日談になるが、この旅行後11月に、買い物に妻と出かけた際、近くのスーパーで、偶然「北海道のいわし 味噌煮」と毛筆で書いたような缶詰を見つけたのである。
製造所は北海道釧路市の会社で海運3丁目と明記されているではないか。
早速買って家族と味見をしてみたところホントにおいしかった。
さて、
根室本線の釧路-根室間(約135キロ)からの車窓の風景は、北太平洋の海とそれに陸地につながっている原生林や湿原が続いた。
前回約10数年前だったかバス旅行で札幌、小樽、層雲峡などに出かけた際には、バスの揺れのため、車窓からは全く写真を撮れなかった。
今回は貸し切り列車でレールの上を走っているせいか、揺れはあってもシャッターを切ることは何とか可能であった。
シャッター速度を速くしておいたので予想以上に良く撮れたものもあった。
しかし、北海道でしか味わえない、本州、四国、九州では眺められない風景が飛び去って行くので、気はせくもののなかなかカメラでキャッチするのが難しかった。
気に入った風景は広大な緑地である。
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後で良く調べてみるとこれは、ただの牧草地でなく、自信はないがそばの畑ではないか?
そばの栽培には夏場の北海道の気候が冷涼な地域が適しており、国産品の北海道が占める割合は通常約40%である。
今夏は酷暑と気候不順のため国内品も減産となっている。
しかし、輸入品(主として中国から)の価格上昇も相まって、今や国産シフトの動きが強まっているようだ。
従って,北海道の玄そばの需要は総じて高まっており広い土地を放牧に使うのは勿体ないではないか?
このような緑の大地はそばの栽培に向いていることは間違いない。
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釧路と厚岸との中間地で、そばに似た植物が一瞬目に入ったが、そばの栽培に熟知している読者から教示して頂ければ有り難い。
手前の海岸に浮かんでいるのは生きたカキを養うための網のようなものと推察する
ひとめぐり号はよくも海岸すれすれに走行しているものだと思ったが、津波が来ても、それを機会に線路を更新したり堤防を築いたりするのかなとおもった。
現在、北陸新幹線を札幌まで延伸する事業を数年かけてやっているところであり、致し方ないのだろう。
そうこうするうちにすぐ厚岸駅に着いた。
厚岸はアッケシイと発音する。どこの駅の名も北海道ではアイヌ語がベースになっているようだ。調べてみると厚岸とは「カキのいるところ」という意味でした。
この厚岸では豊かな自然環境に恵まれており、1年中、海の生食用のカキがたべられるとのこと。
生カキの生成が盛んな厚岸湖
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海岸すれすれにに列車が走り走り間もなく厚岸駅へ
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今回の旅行はJRとJALが共同して企画したもので主な駅にはマスコット、キャラクターなどがプラットフォームで待ち受け、乗客を歓待して和やかな雰囲気を醸し出していた。
ひとめぐり号は厚岸駅を出発し根室方面へ向かった。
北海道最北端に近い太平洋を車窓から望む
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北海道最東端の湿地帯。太平洋をバックに車窓から撮影。
厚岸湖と厚岸湾の地図
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厚岸湾と厚岸湖との関係と厚岸湖潮汐三角州の発達
―なぜ厚岸湖において1年中おいしい生カキが産出されているのか?―
アジア地域には大河川が形成するメガデルタが多く、デルタの形成には、河川の作用、波浪と潮汐(海水の干満など)の力学的作用が研究されているようだ。ここでは、簡単に、
厚岸湖中心とした河床の堆積物とも密接関連する潮汐三角州の発達に伴い、厚岸湖内で形成されたカキ礁の産出問題に迫ってみよう。
平成5年6月厚岸湖とそれに流入する地域の湿原の一部(7.58ha)が鳥獣保護区域に指定されラムサール条約に登録された。これは間接的にカキの養殖問題にプラスになっていると推察している。
現在、本州や四国、九州等の低地湿原は次第に消滅しているところ、北海道には広大な湿原が残されていることを今回の旅行で知ることとなった。
厚岸湖は厚岸湾と地図上で比較してみると小さく見えるが、周囲30キロメートルもあることを確認した。
厚岸湖は調べてみると水深2メートル程度である。
隣の厚岸湾は水深10メートルもあり地溝場の形状を示す潮流になるそうだ。
厚岸湖は湖内西部の広い範囲内で海水の流入による上げ潮により三角州が発達し、その上部には干潮時に露出する生ガキが2,30年前には点在していたらしい。
幸運なことに、厚岸湖の陸棚勾配が緩やかで潮位差が2メート以下であることから、
砕屑物の供給が豊富になるプラス要因になっているらしい。
以上の如きことから良質の生カキが生産されてくる秘密がわかったような気がした。
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根室に近い浜中町近辺の湿地帯
以上から根室半島の豊かな自然は、名産物を作り出すことが理解されたと思う。例えば淡水と海水が混ざり合って山から流れてきた養分と海の豊かなプランクトンが集まることによって高品質のカキが生産されることになるとのパンフレットの分かり易い説明を聞きなるほどと思った。
すぐ根室駅に到着した.。
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ひとめぐり号の到着を歓迎する地元の人達(中央の婦人は筆者の妻)
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根室の町は意外と静かな雰囲気であった。
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根室から厚岸に戻って阿寒湖へバス旅行に出かける予定である。アッケシはカキなどで稼いでいるからか町の様子に活気があるようにみえた。
上段は厚岸湖で二度目になるが、午前中に見た景色とちょっと違う雰囲気に見えた。
本日午前中釧路を出発し根室に向かい、根室から厚岸に戻った。
厚岸駅からバスにて阿寒湖に向かう予定。(続く)
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釧路駅から根室駅までの花咲線の地図
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