Écriture No.3 調性
西洋古典音楽理論の基本中の基本はなんといっても調性です。
調性の前身は旋法(mode)と呼ばれるもので、中世には8種類ありました。
それぞれ第一旋法から第八旋法と名付けられています。
教科書によっては、第一旋法をドリア旋法、第二旋法をヒポドリア旋法と読んだり、第一旋法を正格ドリア旋法、第二旋法を変格ドリア旋法と呼ぶ場合がありますが、同じことです。また、軸音は私の造語で、教科書によっては属音と書かれていることがあります。しかし、通常の和声でいう属音とは少し違うので注意が必要です。
私たちには慣れないと聞き分けるのが大変ですが、それぞれの旋法はすべて違う雰囲気を持っています。奇数の旋法(正格旋法)はどちらかというとダイナミックで堂々としていて、偶数の旋法(変格旋法)は穏やかな感じがあります。また、第一から第四旋法までは少し陰りがあり、第五から第八旋法は明るさを感じます。
時代が進むと、正格旋法と変格旋法の違いが薄れてきて、8つの旋法が4つの旋法とみなされるようになってきますが、一方で、さらに二つの旋法が登場します。
教科書によっては、イオニア旋法をUtの旋法、ドリア旋法をRéの旋法、フリギア旋法をMiの旋法・・・等と呼ぶことがあります。イオニア旋法はDoの旋法と呼ばれることもあります。UtはDoを表す昔の言い方で、歌いづらいという理由で後にDoにとってかわられました。
さて、ルネッサンス以降の音楽ではフリギア旋法を除き、終止する際に音階の第七音目は第一音目と半音関係を作る、というルールになってきます。イオニア旋法とリディア旋法はすでに半音(イオニア旋法ではSiとDo、リディア旋法ではMiとFa)ですが他の旋法では半音上げる必要が出てきます。
すると、ミクソリディア旋法はイオニア旋法と同じ旋法になってしまいこれを長旋法と呼び、ドリア旋法とエオリア旋法の折衷案のような感じで短旋法というものができました。
これが現在の調性音楽における長調と短調の発生になります。
この旋法において、各音に名称がつけられています。
Do Ré Mi Fa Sol La Siそれぞれに第一音、第二音、第三音、・・・と名前を付けることもありますが、次のような言い方をする場合も多く、これは覚えておく必要があります。
第一音 主音
第二音 上主音
第三音 中音
第四音 下属音
第五音 属音
第六音 下中音(上属音という場合もあり)
第七音 導音(下主音という場合もあり)
第二音の上主音は、主音の上の音、という意味です。
第三音の中音は、主音と属音のちょうど真ん中の音、という意味です。
第四音の下属音は、属音の下という意味です。
第五音の属音はドミナントの日本語訳で、歴史的には軸音が変化したものです。
第六音の下中音は中音が主音の3度上だったのに対し、3度下になるのが下中音という意味です。上属音というと属音の上の音という意味になり、私はこちらのほうが機能的にもうまく説明できていると思うのですが、日本の教科書でこの言い方が採用されているのは稀だと思います。
第七音の導音、これが調性音楽でもっとも重要な音になります。導音は和音の機能の意味も含んでいる音ですので、機能を考えない場合には下主音といいます。
まとめるとこのようになります。
機能とは何か・・・という話はまた後述したいと思います。
さきほどさらっと書きましたが、導音がもっとも重要な音であるということをあらためて強調して今回の話は終わりにします。
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