Japan As No1を復活させるためのデジタル投資方法
<世界デジタル競争ランキングは低下の一途>
スイスのビジネススクールIMDが2022/9/28に発表した2022年の世界デジタル競争ランキングで、日本は63の国・地域のうち29位、前年から1つ下がり2017年の調査開始以降で最低となりました。人材不足やビジネスのスピード感の欠如が原因です。首位はデンマーク、2位は米国、以下スウェーデン、シンガポール、スイス、オランダ、フィンランド、韓国となります。
ランキングは毎年、各国の統計データや経営者・管理職への聞き取り調査を通じて公表されます。全体順位は『知識』『技術』『将来の準備』の各順位を総合して決定されます。日本の低下が顕著だった項目は『知識』です。前年から3つ順位を落とし28位で、原因は人材不足、デジタルスキル、国際経験の少なさです。IT人材の7割がIT企業に偏在するという問題もあります。『将来の準備』の評価項目でも日本は前年から1つ順位を落とし28位です。ビジネスのアジリティが低いためです。
<DX人材は不足>
経産省によるとAI人材の不足は2030年に12.4万人と2025年より4割増えます。AI開発のエクサウィザーズが4700人を対象にデータサイエンスのスキル、数学への理解や好奇心などを数値化して調査した結果、DX推進部署以外でも5人に1人、企画部門の3人に1人、営業で4人に1人が素養が高いことが判明しました。
情報処理推進機構(IPA)がまとめた2021年度『DX白書』によると、DX人材不足と答えた企業は全体の76%に達し、アメリカの43%を大きく上回ります。DXに取り組む企業の人材獲得手段を聞いたところ、9割が『採用』となっており、自社人材の活用は27%にとどまりました。
NTTデータは企業のDXを支援する社内人材の育成法を開発しました。性格や興味を分析して、『起業型』『適応型』『SI(システムインテグレーター)管理型』『SI分析型』の4タイプに分類し、資質に応じた育成計画を作り、職務経験を積ませます。『起業型』には若いうちから新規事業を担当させます。『適応型』は育成方法次第で起業型に育つ可能性が高まります。事業開発の資質を伸ばせるように若い時にコンサルティングを経験させます。
<サイバー防衛も後手>
2022年度の防衛白書は各国のサイバー領域の戦力を分析しました。中国は17.5万人規模のサイバー戦部隊を有し、3万人規模の攻撃部隊を含んでいます。北朝鮮も日本のサイバー部隊の10倍に当たる6800人を抱え、通貨獲得の手段としています。北朝鮮は金融機関や暗号資産取引所への攻撃により、2019年から2020年までに計3.1億ドル相当を摂取しました。日本は自衛隊が2022年3月にサイバー防衛隊を組織し、540人体制で陸海空の部隊運用を一元管理する情報通信ネットワークを防衛しますが、重要インフラなど民間施設の防護は対象となっていません。
米セキュリティ会社のコーブウェアは、ランサムウェアの被害企業の身代金の支払額の中央値が2022年4月から6月、前四半期の51%減の約3.6万ドルだったとする調査結果を発表しました。ランサムウェア集団が小規模な企業を狙いに移していることが背景にあります。
<AI活用が必須>
日本IBMは世界中の企業経営者ら7500人にAIの導入状況に関する調査結果を公表しました。『ビジネスにAIを活用している』と回答した世界の企業は35%、地域別では中国が58%、インドが57%です。『AIの展開を加速させている』と回答した企業も中国が84%と最も高かったです。『AIを検討中』とした企業も42%です。 業界別では自動車業界が67%、金融サービスが54%で関心が高かったです。
AI導入の推進力となっている要因について聞いたところ、『AIの進歩によりAIがより身近になったこと』が43%、『コスト削減と主要プロセスの自動化の必要性』が42%と上位を占めました。今後1年間の投資計画に関しては『研究開発』が44%で首位でした。サステナビリティの目標達成に向けてAIの適用を計画している企業も66%ありました。
<デジタル決済は拡大>
世界銀行は2022/6/29、新興国でデジタル決済を使う人の割合が2021年時点で成人全体の57%になったと発表しました。人との接触を避けるコロナも影響し2014年の35%から大幅に増えました。インドではコロナを受けて初めてデジタル決済で商業取引をした成人が8000万人以上、中国でも加盟店でデジタル決済を使う人が1億人以上となりました。
<デジタル分野はパラレルワールド>
デジタル分野は今後メタバースが普及するに伴い、現実世界とのパラレルワールドとなる可能性が高いです。デジタル分野における人材の不足、経験値、ノウハウ不足はパラレルワールドにおける経済格差に直結します。日本がデジタル分野は不得意だと言ってられる場合ではないのです。早急に世界トップ水準に追いつく必要があると考えます。
<PPP(パクってパクってパクリまくる)しよう!>
トップ集団に追いつくために日本独自の解決策を考える必要はありません。いつも通りまずは先進国のやり方をPPPするところから始めるべきだと思います。今回のランキング上位であるデンマーク、米国、スウェーデン、スイス、シンガポール、韓国に人を派遣するところから始めます。韓国を入れたのは日本と近い文化を有しており、かつ日本の人口の半分ぐらいがいるためです。当然各国も利害がありますので、そのまま受け入れてくれるわけではありません。ここでギブアンドテイクの交渉をします。
<各国とWin-win の関係を築く>
デンマーク、スウェーデン、スイスはロシアのウクライナ侵攻に伴い、冬のエネルギー供給に懸念を持っています。そこで日本が確保しているガス、LNGの一部を融通することを条件に、デジタル政府の勉強をさせてもらいます。
韓国はユン大統領が日本との関係改善を望んでいます。そこで岸田首相とユン大統領のトップ面談を実施し、日韓国交正常化のプログラムの一つとして、デジタル政府の官民交流を提案します。
米国、シンガポール及び韓国はアメリカが提唱するIPEFの参加国です。交渉分野に『貿易』があり、デジタル経済が項目として並んでいます。そこでデジタル経済の拡大を目指すという名目のもと、米国、シンガポールに人を派遣させてもらいます。
日本は世界から『信用がおける国』という点で、中国とは異なる評価を受けています。今まで培ってきた信頼を武器に、日本の国益を取りに行きます。当然 win-win の関係が必要です。Takeするだけでは信頼は失墜してしまいます。ただ中国のようなしたたかさも必要だと思います。『何のためにこの経済枠組みを作るのか』という目標をしっかりと決めて、参加することが重要です。
<Japan As No1を復活させるためのデジタル投資方法>
日本にはお金がありません。ただしデジタル分野への投資はしなければなりません。無駄な投資はできません。この状況から、まずは各国をPPPした上で、日本としての方向性を決めてから、ソフト、ハード共に必要な分野に集中して投資します。PPPする最大の理由は、無駄な投資を省き、必要な投資を限定するためです。そして単年度ではなく10年のスパンを持って継続的に投資します。29位という順位はそう簡単には上位には上がれません。継続して投資することが必須です。
JAPAN AS No1を復活させるためにデジタル分野で世界上位に入ることは必須の課題です。PPPで選択と集中を実施した上で、10年かけてソフト、ハードに投資するのが最善の方法と考えます。