DXは手段?目的?
<日本の現状>
スイスのビジネススクールIMDがまとめた『世界デジタル競争力ランキング2021年』で、日本の総合順位は64カ国地域中28位です。個別指標では、デジタル技術的スキルは62位、企業の俊敏性は64位と最下位です。
Amazonの日本法人は、アジア7カ国の管理職2100人を対象としたデジタル技術の調査結果をまとめました。日本はデジタル技術を習得するための人材育成を実施した企業の割合が18%で、7カ国平均の29%に対し最低の結果でした。
デジタル技術の習得に自信がない従業員の割合は39歳以下では60%だったのに対し、40〜54歳は75%、55歳以上は83%で年齢が上がるほど上昇しました。
日本政策投資銀行と東大の研究室は日本の DX に関するレポートをまとめました。 DX の先進企業7社の1人当たりEBITDAは980万で、旧東証一部上場企業平均の565万に比べ、従業員一人当たりの利益が7割多いことが分かりました。
<市場の見通し>
グローバルインフォメーションによると、DX関連の市場規模は年平均約2割のペースで拡大し2026年に世界で1兆2000億ドルに達する見通しです。
2021年度版の情報通信白書は、DXが企業に与える影響を試算しました。製造業の売上高は約23兆円、非製造業で約45兆円押し上げる効果があります。
国交省が3月に公表したテレワーク人口実態調査では、テレワークをする人の84%がコロナ収束後も継続する意向を示しました。
経産省は2022/4/22、2050年の業種、産業別の労働需要推計を公表しました。DXなどの変化を受け、正確性が求められる事務職や販売従事者の需要は2020年比で30〜42%減少、一方、予測能力が必要なエンジニア職、医療、教育従事者の需要は20〜30%増加する可能性があると推計しました。
<懸念事項>
Microsoftは3月、デジタルオーバーロードのリスクがあるとして警鐘を鳴らしました。2020年9月にまとめた調査では、日本の働き手の23%が燃え尽き症候群を感じていると答えました。
チームズの世界の利用動向を見ると、2020年3月に比べ一人当たりのオンライン会議数は2.5倍、チャット件数は1.3倍となりました。
NTTデータ経営研究所の2021年調査によると、上司から就業時間外に緊急性のない電話やメールがあり、週一回以上対応している人は22.5%と2019年から7.6ポイント増えました。同僚や顧客が相手のケースも増加傾向です。就業時間外の連絡に対応する人の約7割は、『気になることは早く終わらせたい』事を理由に挙げます。
チャットやメールを受信すると、脳内で神経伝達物質のドーパミンの量が増え、確認したいという強い欲求を感じると指摘しました。その繰り返しがスマホ依存など深刻な影響を生みます。テキサス大の研究者らは、スマホが近くにあるだけで認知能力が下がると報告します。集中力や記憶力にマイナスに作用しかねません。
海外ではデジタル機器の適切な利用を通じて、心身の健康を確保するデジタルウェルビーイングが重視されます。就業時間外の業務連絡を拒む『つながらない権利』が関心を集めます。フランスが2017年に労働法に規定し、ヨーロッパを中心に導入が広がります。
<DもXも手段、目的は幸せな人生>
デジタル化を契機に業務のあり方を変革し、従業員の活力や生産性の向上につなげること<X=トランスフォーメーション>がDXの真髄なのに、デジタル化自体<D=デジタル化>が目的になっています。
私個人としては、DもXも手段です。最終的な目的は場所、時間に縛られず自分のやりたいことをやりたい時間にできる状況を作り出す『時間の最適化』で、自分が幸せな人生を送れることがDXをやる意味だと思っております。
通勤がなくなったのは非常にありがたい変化です。ウェブで誰とでもいつでも会議ができるようになったのもウェルカムです。でも常時勤務状況は頂けません。長時間労働もNoです。メールも嫌になったらしばらく無視します。スマホも自分から遠ざける時間を作ります。
Dを駆使していつでもどこでも働ける環境を作り、生産性を上げた<=X>上で、あえて自分でいつ仕事をして、いつしないのかをしっかり区分する。あくまで目的は『自分が人生を幸せに生きること』、その達成手段として『時間の最適化』があり、その1つの方法がDXという軸をブラさなければ、DXに振り回されることもなくなると思っています。
私自身は上記目的を達成するために、自分の仕事をDXする必要があると思っておりますが、人によっては不要な人もいると思います。DXという言葉に踊らされず、自分にとってDXが必要なのか、どの部分で必要なのかを考えた上で、何を取り入れていくべきなのかを検討してからDXに取り組んだ方が、結果として自分の人生にプラスになるのではないでしょうか?